【不定期更新!】文芸コンテストニュース2024/8/23版
文学賞発表情報
第14回アガサ・クリスティー賞
鴻巣友季子、杉江松恋、法月綸太郎、清水直樹「ミステリマガジン」編集長の4氏により選考が行なわれ、下記のとおり受賞作が決定しました。
受賞作
『マリアを運べ』睦月準也
詳細はこちら(https://www.hayakawa-online.co.jp/new/2024-08-08-114136.html)
公募ガイド談
あらすじ 十七歳の運び屋の風子に、ある荷物を翌日午前五時までに諏訪に運んでほしいという依頼が持ち込まれた。一度走った道をすべて記憶している風子は、持ち前の運転技術を活かして目的地を目指す。ヤクザや新興宗教、某国のスパイが荷物を狙うなか、彼女は依頼を完遂できるのか――
著者略歴 睦月準也 1984年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。
第2回創元ミステリ短編賞
大倉崇裕、北村薫、辻堂ゆめの3氏の選考により、下記のとおり受賞作が決定しました。
応募総数は496編でした。
入選作
「桜越しに空を撮る」歳内沙都
詳細はこちら (https://www.tsogen.co.jp/award/sogenmystery/)
公募ガイド談
著者略歴 歳内沙都 1993年、京都府生まれ。龍谷大学卒業。現在は会社員。
Koubo小説研究室
スティーヴン・キング『小説作法』セレクト10選
今月は、「koubo小説研究室」第2弾として、スティーヴン・キング『小説作法』から、知っておきたい小説のテクニック10選をお送りします。 下手な解説はしないでおきます。ご自分で解釈し、テクニックを使うこなすことが大事。初心者には使いこなせない技術もあるかもしれません。
その1
正確を期して詳細にこだわると説明がくどくなりすぎて、文章の味を損なう。「テーブルの上に縦三フィート六インチ、横二フィート、高さ一四インチの檻がある」と書くならば、これはもはや散文ではない。ただの説明書きである。
その2
文章を書く上で心して避けなくてはならないのは、語彙の乏しさ恥じて、やたらに言葉を飾ることである。これは飼い猫や犬にイヴニングドレスを着せるようなもので、当のペットも迷惑だし、計算ずくの可愛らしさを押しつけたい飼い主は、それ以上にみっともない。(中略)
要は平明、簡素を心懸けることである。語彙に関しては、適切で生きがいいと思える限り、真っ先に浮かんだ言葉を使うという鉄則を忘れてはならない。
その3
私は自分の作品で、人物の外見に言葉を費やす必要をめったに感じたことがない。顔つきや体格、着ているものは読者の想像に任せる主義である。キャリー・ホワイトはクラスの除け者で、顔色が悪く、身なりもおよそぱっとしない、とだけ言えば、あとは読者が好きに埋めるはずではないか。
その4
私の見るところ、巧みな描写はいずれの場合も、選ばれた細部が言葉少なに多くを語っている。そしてその細部はたいていが真っ先に作者の頭に浮かんだ事柄である。
その5
禅問答かと思うような譬え話は、唯一、危険な落とし穴である。それよりも、よくある間違いは常套句、あるいは言い古された比喩の濫用で、総じて読書量の足りない書き手がこれで躓いている。彼は「気違いのように走った」彼女は「夏の日のように美しかった」彼は「引っぱり凧の人気者だった」ボブは「猛虎のように闘った」……。助けてくれだ。こういう黴臭い文句で人の時間を無駄にするものではない。
その6
副詞について言えば、総じてこれは、自分の表現が曖昧で、言いたいことがよく伝わらないのではないか、と恐れる作家の迷いである。
例えば「彼はドアをぱたんと閉めた」。(中略)感動的かどうかは知らず、そこに至るまでの経緯があって、「彼はドアをぱたんと閉めた」のだ。つまりは心理描写である。それまでの文章で、十分にその感情が説明されているとすれば「ぱたんと」は余計だろう。冗長とはこれを言う。
その7
中身を読むまでもなく、手に取った本が読みやすいか、読みにくいか、一目でわかるはずである。読みやすい本はパラグラフが短く、白く空いているところが多い。
その8
説明的な文章の場合、パラグラフは無駄なくすっきりとまとまった形を取り得るし、それが本来の筋である。段取りのいいパラグラフは、冒頭に主題を提示する一文、トピックセンテンスがあって、続く文章がそれを説明し、展開する組立てになっている。
その9
私の場合、短編であれ、長編であれ、小説の要素は三つである。話をA地点からB地点、そして大団円のZ地点へと運ぶ叙述。読者に実感を与える描写、登場人物を血の通った存在にする会話。この三つで小説は成り立っている。
その10
構想に重きを置かない理由は二つある。第一に、人の一生が筋書きのないドラマである。あれこれ知恵を巡らせて将来に備え、周到に計画を立てたところで、そのとおりに行くものではない。第二に、構想を練ることと、作品の流れを自然に任せることはとうてい両立しない。ここはよくよく念を押しておきたい。作品は自律的に成長するというのが私の基本的考えである。
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