一人の行動が世界を変える。差別に毅然と立ち向かった黒人女性の話(『書経』堯典)
今回取り上げるのは『書経』堯典からの言葉。
人々がみな自身の徳を明らかにできれば、天下の国々は心を合わせて仲良くできる、という意味。
「昭和」という元号は、この言葉から取られました。
つまり、世界をより良くしていくには、自分の心と行動を磨いていかなければならない、ということですね。
世の中には、トップダウン式の方法とボトムアップ式の方法があります。
どちらもメリットとデメリットがありますが、『書経』においてはボトムアップ式をおすすめしています。
なぜなら、天下に徳を広めるには、一人一人の意識改革が必要だと考えているからです。
『書経』は以下のように論理を展開します。
自身の良心を磨き、その身を修めて徳を明らかにすることで、一族全体を親しくさせることができる、という意味。
「俊徳」とは、天から授かった良心のことです。
この良心を磨くことで、心のあり方と自身の行動が立派なものとなり、次第にその姿勢が周囲の親族に伝わっていく、ということですね。
一人の行動が周囲の人々の意識を変えていくのです。
そして、この動きは天下全体にまで広がっていきます。
一族全体が仲良くなると、今度は彼らを通じて、天下の人々に徳を明らかにすることができる、という意味。
「平章」とは、広く明らかにするということ。
とある家族が徳を明らかにすると、次はご近所さんに徳が広がります。
そのご近所さんが徳を明らかにすると、今度はご近所さんの仕事先に徳が広がり・・・、というようにして、やがて国民全体に徳が広まっていく、という考え方ですね。
一人の行動が世界全体を変えることに繋がる、というわけです。
さて、皆様はモンゴメリー・バス・ボイコット事件をご存知でしょうか?
これは、1955年に一人の黒人女性の行動から始まった、アメリカでの人種差別への抗議運動のことです。
時は1955年12月1日のアメリカ合衆国アラバマ州モンゴメリー。
このモンゴメリーでは、公共交通機関での人種隔離政策が実施されていました。
公共交通機関には黒人用の席が用意されており、黒人はそちらに座らなければならない、というものです。
そのため、市営バスに乗車したローザ・パークスさんは、黒人優先席の最前列に座りました。
しかし、次第に乗車してくる白人が増えてくると、バスの運転手は黒人優先席を白人用の席に変更し、座っていたローザ・パークスさんたちに席を空けるように指示します。
一緒に座っていた黒人たちが席を離れる中、ローザ・パークスさんは一言「No」と答えます。
その結果、「運転手の指示に従わなかった」という罪でローザ・パークスさんは逮捕されてしまったのです。
この事件は、その後の歴史を大きく動かすことになります。
ローザ・パークスさんの逮捕を知ったキング牧師が、市営バスへの乗車ボイコットを呼びかけたのです。
この呼びかけに黒人・白人を問わず、多くの市民が応じたため、市のバス事業は大きな打撃を受けることになりました。
そして、ローザ・パークスさんの逮捕から約1年後の1956年11月13日。
連邦最高裁判所は、一連の人種差別政策に対して違憲判決を下します。
一人の女性の抗議がアメリカ全体を変えるきっかけとなったのです。
のちに、ローザ・パークスさんは、「No」と答えた時の心境を以下のように述べています。
私はこの運動も『書経』の考え方に近いように感じています。
ローザ・パークスさんのように、世の理不尽に屈することなく、自分の良心に従って「No」と言う。
キング牧師や乗車ボイコットに参加した人々のように、「良くない」と思ったことには一人一人が行動で示す。
周囲が受け入れていることに毅然と反対するのは、難しいものです。
大きな不安や恐怖ももちろんあったことでしょう。
しかし、ローザ・パークスさんたち一人一人の信念と行動が、次第に大きなうねりとなり、アメリカという大きな国家をより良い方向へ変えることになったのです。
私たち一人一人の行動には、身の回りの環境を変える力があります。
自分の良心に従って、「これは違うな」「何かおかしいな」と思うことがあれば、勇気を持って行動してみましょう。
大きな行動でなくても大丈夫です。
ローザ・パークスさんが勇気を出して「No」と告げたように、ほんの小さな行動が大きなきっかけになるかもしれないのですから。
今回は、世界をより良くしていくには、自分の心と行動を磨いていかなければならない、といった意味の言葉をご紹介しました。
自分の良心を大切にし、その良心に従って行動を続けていけば、やがて大きなうねりを生み出すことができます。
まずは自分の心に耳を傾け、勇気を持って行動してみましょう。
すべてはそこから始まります。
それでは今回はここまで。
また次の記事でお会いしましょう👋
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