苦しい時こそ、自暴自棄にならずに冷静さを意識しよう(『論語』衛霊公篇)
今回取り上げるのは『論語』衛霊公篇からの言葉。
君子であっても困窮することはある。しかし、小人は困窮するとやけくそになるものだ、という意味。
どんな人にも苦しい時期というものがあります。
大事なのは、苦しいときにどのような行動を取るのか、ということ。
つまり、困窮したときこそ、自暴自棄にならずに冷静に行動しなさい、ということですね。
前492年ごろのこと。
祖国から亡命して旅を続けていた孔子たちは、隣国の陳国を訪れました。
2年ほど陳国で暮らしていた孔子一行でしたが、前489年に大事件が起こります。
当時勢いをつけてきていた呉国が、陳国に攻め込んできたのです。
戦争の発生で物流が滞り、現地は大混乱。
陳国を食糧難が襲います。
これは、外国からの旅行者である孔子たちにとっても一大事でした。
陳国の国民であれば公的な補給も期待できますが、孔子たちは異国の人間です。
当然、孔子たちも深刻な食料不足に陥ります。
陳国において食料の補給が絶たれた。
従者は病気になり、立ち上がる元気もない。
という意味です。
孔子一行の窮乏している様子がひしひしと伝わってきます。
この時、弟子の子路(しろ)が憤然として孔子に質問しました。
「君子であってもこのように窮乏することがあるのでしょうか!」
孔子は次のように答えます。
「君子であっても困窮することはある。しかし、小人は困窮するとやけくそになるものだ」と。
孔子も、状況が逼迫していることは十分に理解していました。
しかし、孔子たちがいるのは戦争中の国。
迂闊に行動すると命を落とすことになりかねません。
だからこそ、ここでやけくそになって浅慮な行動を起こさないように、弟子を諭したのです。
幸いなことに、陳国と同盟していた楚国から援軍が到着したことで状況は好転します。
孔子一行は楚国に客人として招かれ、窮地を脱することができました。
結果的に、やけくそな行動を起こさなかったことで、九死に一生を得ることができたのです。
生きていると、誰もが一度や二度、苦しい状況に追い込まれたことがあると思います。
私も仕事関連でひどく追い詰められ、出社途中の駅で自暴自棄になりかけたことがありました。
今思い返すと、とても良くない思考だったと思うのですが、あのときは追い込まれていたので判断能力が鈍っていたんですよね……。
強烈なストレスにさらされたり、絶望的な状況に追い込まれると、人は正常な判断能力を失ってしまうもの。
これを「脳疲労」と呼びます。
医学的には、大脳新皮質と大脳辺縁系、間脳のバランスが崩れた状態。
大脳新皮質は知覚や運動、大脳辺縁系は記憶や情動、間脳は自律神経や内分泌に関わっているので、脳疲労が起こると判断力や記憶力が低下してしまうのです。
脳疲労の状態では、正常な判断を下すことはできません。
焦って決断すると、大きな後悔につながってしまいます。
こういう時に大事なのは、やけくそにならないことです。
脳疲労を回復させるには、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの摂取が重要。
上に貼ったリンク先にも記載されていますが、セロトニンは以下のような手段で生成を促すことができます。
朝日を浴びる
定期的に運動する(散歩や軽いウォーキングなど)
リラックスする(ストレッチや入浴など)
家族や友人と会話する
大豆やカツオ、ナッツを摂取する
どれもそんなにハードルは高くないと思いますので、「あー、なんか疲れているなぁ」と感じている方は、ぜひセロトニンの生成を意識してみてください。
十分なセロトニンが生成されれば、脳疲労も回復し、落ち着いて決断を下すことができるようになるでしょう。
いざという時に自暴自棄にならないよう、日頃から健康管理に気をつけていきたいですね。
今回は、困窮したときこそ、自暴自棄にならずに冷静に行動しなさい、という言葉をご紹介しました。
孔子一行は絶望的な状況に置かれながらも、冷静な行動を心がけたことで、九死に一生を得ることができました。
焦って行動しても良いことはありません。
苦しい時こそ冷静さが大事です。
冷静な判断をするためにも、自分の健康には一層気をつけていきたいですね。
それでは今回はここまで。
また次の記事でお会いしましょう👋
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