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14歳からの夢を叶えに、ストックホルムへ
北欧に一人旅に行って来た。
この場所への縁を作ってくれたのは、14歳の頃に出会ったYUIの「Your Heaven」というストックホルムで生まれた一つの曲。
当時の自分は部活には励んでいたけれど、勉強には興味を持てなくてテストの点数も良くなく、でもそれもさほど気にしていない、特にやりたいこともない中学生だった。
それが、ひとつの出会いで変わった。この音楽と、彼女がガムラスタンを歩くドキュメンタリーの映像を通して、「こんな美しい場所がこの世界にあるんだ」と強く衝撃を受けた。
Your Heaven以前、以後、と人生を分けても良いくらい、自分とっては大きい出来事だった。
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気持ちの行き場を求めて、英語の先生に、「スウェーデンに行きたいんですけど、どんな国なんですか?」と聞いたら「良いですね。行ったことがないけれど、素敵な国だと思うよ。みんなとても背が高いんだ。」と楽しそうに言われてそうか〜行きたいな〜と思ったのを覚えている。
この国に行くには、住むにはどうすればいいんだろう。と考えた僕は、選択肢を増やすためにまずは勉強を頑張ろうと思い励んだ。周りの友人や家族は何があったの?と驚くようなエネルギーの湧き方だった。
その思いは色褪せず、北欧食器や家具に憧れてショップに通ったり、北欧関連の情報を自然と集めたり、進学の際も「スウェーデンに行く」というのを一つの指針としていた。
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だけど、大学の頃留学も検討しながら、ボランティアに熱中しているうちに大学を卒業し、コロナ禍になり、病気になり、行く機会を逃し続けてた。いつかいつか、と言いながら実現出来ていないことが歯痒かった。
したいことを我慢していると、その事実を見つめたくなくて、叶えている人を否定したい気持ちにもなってくる。
北欧に旅をしていたり、住んでいる方に対して嫉妬の気持ちが湧いてきた。
これはダメだ、自分が嫌いになってしまう。「来年には絶対に行こう。」そう心に決めた初夏の頃。突然一週間の夏季休暇をもらえることになった。そして思いがけず賞与をいただいた。
もう少し準備が整ってからと思っていたけれど、いつ何があるか分からないことは身をもって知っている。今、行くことを決めた。
それからサボっていた英会話を再開。ひたすら北欧関連の本を読んで、旅程を立てる日々が始まった。
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休みは全部で8日間、移動もあるため6日間という限られた日程の中で、どのような旅程を組むか。悩みながらも、たのしい。
具体的な先のたのしみな予定は、日々の彩りを豊かにしてくれる。
散々頭を悩ませ、国際的な情勢やさまざまな状況を鑑みて、今回は「はじめましての旅」として、行きたかった3カ国にご挨拶をするような旅にすることにした。
そうしてやってきた当日。
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行きで利用したのはタイ国際航空。成田空港→スワンナプーム空港→ストックホルム・アーランダ空港とトランジットを含めて約20時間ほどの経験したことのないほどのロングフライト。
ネックピローと、エコノミー症候群対策のフットスタンドのようなものを買った。
時差があるので夕方日本を出発し、翌朝7時にストックホルムに着くような旅程。
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トランジットに利用したスワンナプーム空港は、タイ特有の匂いに満ちていた。僕にとってタイは自分で初めて行った海外なので、この匂いを嗅ぐと一気に気持ちが旅人モードになる。
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飛行機の中では、Netflixで星野源と若林の「Light House」を観た。
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朝7時頃、ストックホルム・アーランダ国際空港に到着。
対策していただけあって身体は痛くない。いい感じだ。
まだ実感がないまま、シャトルバスでストックホルム中央駅へ。
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中央駅に到着。いい天気だ。
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ガムラスタンの街が見えてきた。
「ストックホルムに来た。」という事実を、ついに身体が認識する。
なんともいえない高揚感に包まれ、20時間のフライトをしたとは思えないほど、身体が軽い。
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ひとまず荷物を置きたいのでまっすぐ宿へ。
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滞在先はHotel Hornsgatan。
今回は短い旅、身体を休めるのが重要なためホテル探しにはとても時間をかけた。こちらはロケーションと広い個室が魅力で選んだ宿。
到着すると、なんとまだ午前中にもかかわらずお部屋に入れてくれた。
とってもありがたい
思った通りの広くて快適そうなお部屋。シャワーを浴びて荷物を置いて、さらに軽くなった身体で、飛ぶように街へ。
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光が綺麗。目に映るものどれもが新鮮で、ワクワクする。
シャツ一枚で過ごせる爽やかな気温。宿の方がおっしゃるには2週間前までは冬のように曇天が続いていたらしい。なんてラッキーなんだろう。
寄り道したい気持ちもありながら、とにかく見たい景色があり、まっすぐストックホルム市庁舎へ。
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何度も、何度も写真を見てきて、期待が膨らんでいた。
その期待をゆうに超えるような、美しい景色が眼前に広がる。
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何もかもがキラキラしていて、ぼうっとしてしまうよう。
もうこの時点で、最高の旅だと思った。来て良かった。
しばらくこの景色を眺めた後はランチへ。
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市庁舎の1階にある「Ragnars Skafferi」へ。
ランチビュッフェを楽しんだ。パンや惣菜、どれも美味しかった。あまり見たことのないような料理はなく、海外という感じはしないほどだった。
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ここでは日本にいるときからやりとりしていた、ストックホルム在住の日本人の方とご一緒し、国のこと、観光情報、暮らしのことをお話いただいた。街との距離がさらに縮む。
お店を出てまたしばらく水辺を眺めてから、旧市街、ガムラスタンへ。
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Gamlastam
13世紀に形成された歴史的な旧市街。古く美しい街並み。時間の経過を感じさせる、建物のカラフルな優しい色。迷ってしまいそうな、曲がりくねった石畳の道。
この街を歩くYUIの姿を見て、僕はストックホルムに惹かれた。
その場所を今、僕は歩いている。
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歩いているのが楽しく、道に迷いながら長い時間を過ごした。夜も歩きに来よう。
コーヒーショップや、スーパーや土産物屋などに立ち寄りながら次の目的地へ。クラシックな街並みだが、洗練されていて、都会的で、東京で過ごしているのと大差ないような快適さだ。
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この街で働く自分を想像する。
日本で言えば東京にあたるストックホルム。仕事を終えて街に出た時、こんなに美しい街並みや、穏やかな水辺が日常にあるというのはどんな感覚なのだろう。
そんなもう一つの人生を考えながら、見たかった景色を求め丘へ。
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Skinnarviksberget
大きな岩のようなここは、ストックホルム一帯を眺めることが出来る景勝地。
ドキュメンタリーのロケ地にもなっていて、ここで音楽への想いを話す姿をよく覚えていた。風の通る場所。少し不安になるくらい足元が悪いが、みなさん思い思いにリラックスして過ごしている。
手頃な岩に腰掛け、「Your Heaven」を聴いて。しばらく物思いに耽った。
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今は夏の終わり頃、日の入りは19時30分頃。
早朝のフライトで着いたのでたっぷり観光の時間があって嬉しい。
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宿に戻りシャワーを浴び、宿の前の路面にあったバーのテラスでHainekenを飲んだ。異国の地で飲むビールの美味しさよ。自由な気分だ。
ストックホルムの街にはテラス席と、そこで過ごす人たちに溢れていて、みんな貴重な太陽の光を浴びれる季節を目一杯たのしんでいた。
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のんびりしていると夕方に、宿からもほど近い丘の上の景勝地に向かう。
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Monteliusvägen
川沿いの丘にある、細長い公園。こちらも対岸にある街並みや川が一望できる。夕焼けがとても綺麗だった。
明日の朝も、この場所に来ようと決めた。
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空と街の美しさに見惚れ、陽が落ちたあと、再びガムラスタンへ。
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幻想的な街の景色。
ここに住む猫になったような気分で、あちらこちら気になった道をひたすら歩いた。石畳の上にも関わらず、疲れは感じなかった。
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その後も街中をたっぷり歩いてから、寝るのが惜しい気持ちもありながら、早めに就寝。朝日に照らされるストックホルムの街並みが見たかった。
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目覚めて窓の外をみると、街が黄金の陽に照らされている。これは素敵な景色が待っているに違いないとはやる気持ちのまま、街へ。
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少し冷たく、空気が澄んでいて気持ちがいい。
今日も間違いなくいい日になる。
そんな予感に満ちた気持ちで、丘を登った。
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「この街に歓迎されている。」そう思った。
左手には、霧に包まれたやさしい光に包まれる街。
右手を見ると朝陽に照らされるガムラスタン。
僕が滞在出来るのは、この1泊のみだった。
そんな中で、こんな景色に出逢えるなんて。なんて幸運なだろう。
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来て本当に良かった。思う存分、朝のキラキラした街を歩く。
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今日は船に乗りたいと思い、ガムラスタンからフェリーでシェップスホルメン島へ向かうことに。
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ストックホルムは鉄道もバスもフェリーも同じ会社が運営しており、SLチケットというひとつのチケットでどれも乗ることが出来て便利だった。
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Skeppsholmen
緑がとても美しい場所。
日本の5月のような、心地よい陽気もあって気分がいい。
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美術館が集まったこの島。爽やかないい空気感だった。もっと長くいたかったけれど、時間に余裕がなく、少し散歩して後に。
次に来た時は、この島でゆっくり過ごそう。帰ってくる理由が出来たなと、船の上から街を眺めながら思う。
多分僕はまた、ここに来るだろう。
そう思ったので、この街を離れる寂しさはあまりなかった。
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宿に戻り、バスでBromma Stockholm Airportへ。
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ここからヘルシンキまでは2時間弱、小さなプロペラ機での低空フライト。
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ストックホルムの、赤い屋根の続く街を眺めがらこの旅を振り返る。
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2年前の今頃は抗がん剤治療の1クール目が始まった頃。
先のことなんて何もわからなかった。
お金も自信もなかった。「いつか北欧に行きたい。」その気持ちは変わらずとも、いつ実現出来るのか具体的に考えることは出来なかった。
そんな状況から、病気を治し、体力をつけ、仕事を何度もはじめて、辞めて、素敵な職場に出会って。意欲を育て、お金を貯めた。
そうして今、行きたい場所に、日本から8000km以上離れたこんなにも遠い街に、自分の足で来ることが出来た。夢で終わらせなかった。
そして、こんな言葉が心の内側から出てきた。
「僕は自分の人生を、誇りに思う。」
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自信をなくしている期間が長かった僕にとっては、想像もつかなった言葉。でも、確かにそう思った。力強い実感のある言葉だった。
来ない理由なら、いくらでも作ることが出来た。
でも、憧れの街にちゃんと来ることを選べた。そんな自分を誇りたいと思った。
人から見たら、ただの海外へのひとり旅。
でも僕の人生にとっては、とても大きい出来事。
この街に憧れ続けたひとつの人生が終わり、あたらしい章がはじまっていく。
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ひとつの曲が生んでくれた、この旅。
昔からの夢、大事に抱えるだけでなく実現して本当に良かった。
ここからはじまるあたらしい日々が、心から楽しみだ。
遠い場所で
触れた奇跡
赤い屋根の続く街は
海のそばで子供達の
夢にあふれ輝いていた
アタシの声
風になれ
もう言葉ならいらないから
la la lala
聴こえてくるでしょ?
あなたの歌 思い出せば
辛い夜も 超えていける
同じ今を 生きたことを
忘れないわ
来て良かった
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