夏のお隣さん
歳を重ねるごと穏やかで慎ましく
ゆかしいけれどお茶目な女性になれたらと願ううちに
今年もどうにかひとつだけ歳は重ねたけれども
難易度は高めのよう。
誰にも気づかれなかった気持ちを
隠しきれたと誇らしげに思っていても
お箸が転がるだけでおかしくて
ご飯が欲しくなくてもお腹はくぅって鳴ってくれる。
夏は苦手だと突き放してみたけれど
とうとい光をさんさんと放ってくれる。
今、わたしがいるところのお隣さんは
そんなことを気づかせてくれるように、何でも
お見通しなのだろうか。
わかることといえばそんなことくらいだけれど。
けれど、どうやら秋のはじまりは
夜にひっそりやってくることを知った。
じゃあ、夏のおわりは夜にひっそり去ってゆくのかな。
そっとしておこうと思った。
夏たちも秋たちもなんだか隠密行動みたいだから。
秋虫の音が聴こえてくる。
ひとつひとつの音に耳を傾けると不揃いであるがゆえに
愛おしさがあり愛しさがある、祈りのような音が
夜を渡っている。
じゃあ、また。 またね。
夏に別れを告げる、最愛の贈ることばを残して。
それから
さあ、ゆこう。 ゆこうか。
敵でも味方でもないわたしをよく知る
お隣さんのいるところへ。
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