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母の献身と凶のおみくじ
うちの母はとても頑張り屋だった。
家事を頑張って、子育て頑張って、家族のために尽くすような人。
そんな母なのだが、おみくじは高確率で凶だった。
子供の頃家族で神社に行っても、「また凶が当たるから引きたくない」と、ひとりおみくじには手を出さない。
それでも何度かは引いていたが、その数回でも何度か凶だった記憶がある。
母はとても頑張り屋だった。
自分のことは後回しで家族のために動いた。
あまり仲が良かったとはいえない、祖母の介護もちゃんとした。
でも、「結局感謝してもらうのは、面倒みてるわたしじゃなくて、たまに優しくするあなたたちだ」と、こぼしていた事がある。
なにも返せなかったけれど、確かにそうなっちゃうよなあと、妙に納得してしまったのを覚えている。
仲の悪い、嫌味を言ってくる祖母の面倒を、上機嫌で見ろというのも酷な話だし、
面倒見てくれているがいつもぶりぶり怒っている娘に、ありがとうを言いづらい祖母の気持ちもわかる。
酷い話なのだが、一度、家族みんなが母の誕生日を忘れた事がある。流石に母も怒った。
それ以来、誰も母の誕生日を忘れない。
酷い話なのだが、怒って正解だったと思う。
もう誰も母の誕生日を忘れないし、ぞんざいにもしない。
一度、母の誕生日に、父がお寿司に行こうかと誘った事がある。
母は「わたしお寿司きらいだって言ってるのに酷い」と嘆いた。
家族は誰も、母がお寿司が嫌いだと知らなかった。びっくりである。わたしもそんなこと言われた記憶が全くない。
尽くしても尽くしても、母のおみくじは凶だった。
自分を大事にするんだよ、とか、
思ってることを相手が察してくれないのは当たり前、とか
伝えなきゃ伝わらない、とか
やりたくないならやらなくていい、とか
サボることとか、任せることとか、
何もしてないのにごめんって言わないこととか
大人になってからは、
わたし自身も心のことに興味があったので、そう言った本を読んでは、影響を受けた話を何度も母とした。
いくつもの思い込みをお互い解いて、生き方を変えてきた。
そして年月はながれ。
わたしも変わったし、母も変わった。
昨日、母からLINEが来た。
どうやら肩の健が切れかけているらしい。
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あの母から、「人任せに楽チンして頑張る!」
と返ってきたことに、感動してしまった。
家には父と弟の男二人。
頼られて嬉しくないわけがないのだから。
正月にあった時も、弟もだいぶ頼り甲斐のある感じになっていたことを思い出す。
頼れるようになったことも素晴らしいと思ったし、頼れる環境と関係に変えてきた母も素晴らしいと思った。
母はいつのまにか、自分に優しい環境を、整えてきていたのだ。時間をかけて。母自身が変わることで。
きっともう、おみくじを引いても凶は出ないだろう。
いや、もしかすると凶を引き寄せる体質なのかもしれないけど、きっと笑って結び場に置いてくるだろう。
母がますます楽に幸せになっていくのが、わたしはとても嬉しい。