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【詩】ネコメンタリー「陽だまりのなか」
10月26日放送 NHK Eテレ「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」にて、私の母である児童文学作家・岡田貴久子と実家の8匹の猫たち(番組史上最多の猫たちとのこと!)が紹介されました。
母の書き下ろしたエッセイを朗読してくださったのが女優・のんさん。
さらに、わたしが書いた詩「陽だまりのなか」も番組内で朗読してくださいました。
ひゅっと吹いた風に
あなたのまなざしがはためく
ひと時の陽だまりを永遠にわけ合うため
はるばるちいさな毛皮の姿で
ひとが消えるときにしか思い出せないことを
生涯あなたはおぼえていて
言葉を振りかざすわたしたちを横目に
まなざしでしずかに頷きつづけた
ひゅっと風が吹いて
あなたは帰っていった
秋の四辺形をくぐり
あまねく地平にしんしんと降る
すべてのよいものとなって
あなたの名前を
声に出さずそっと呼ぶ
すべての名前を
陽だまりのなか
陽だまりのなか
消えないちいさな陽だまりのなか
かつて我が家には、ハナという猫がいました。
怪我をして母猫に見守られていたところを母が保護。
生涯、下半身付随でオムツをつけながら一日二回の圧迫排尿が欠かせませんでしたが、18年間幸せに生きてくれました。
ハナと出会った10歳の頃から、わたしはハナを、ハナはわたしを、互いに「親友」だと思っていました(たぶんね)。
毎朝わたしが起きてきて着替えをする時は、どこにいても前足だけで駆けてきて寄り添っていてくれたハナ。
就職活動が思うようにいかなかった時は、花のような縞模様のついたハナのせまい額を濡らしたことも。
もう一度、ハナに会いたい。
姿が違っても、言葉を持たなくても、あんなに深く思い合うことができる相手は、生涯を通じてハナだけだと思います。
ですが、そういったかけがえのない相手に巡り会うことができただけでも、幸福な人生と言えるのではないでしょうか。
もしかすると、生まれる前、お互い猫とも人ともまだ定まっていない魂の頃にわたしたちは出会っていて、何か約束をしたのではないか、と思うのです。
約束はきっと、わたしがまた生きていた間の姿を返す時にしか思い出すことはできないけれど、ハナはおそらくずっとおぼえていたのだと。
そんな気持ちで書いた詩です。
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再放送は11月1日(火)午後2:30~午後2:55。
今回見逃した方も、ぜひご覧いただけたらうれしいです。