桜蔭2024算数ー続きー
多忙なため遅れていたのと、大問2で滅入ってしまったこともあり、遅れていますが、始めちゃった以上途中放棄はよろしくないと考え、今回は大問3を見てみたいと思います。
正直言って、この問題にも出題者の懈怠を感じずにはいられません。
無理数の概念と三平方の定理を押さえていれば辺の長さが決まった正三角形の面積を求めることができます。しかし、その前提が整っていないのでSと表現したものと思われます。この中学を受けるレベルの受験生なら、△ABCが回転移動して掃く領域の面積の求め方は承知しているでしょう。緑色、黄色、緑色(合同なので同じ色で塗りました)、オレンジ色で塗りつぶしたパターンが4回繰り返されるだけのことです。回転に伴って掃く部分の面積を求めていくことの方が普通かもしれませんが、結局はもとの位置に戻って来て左端のオレンジ色の枠で示した正方形の部分が完成するので、ダブルカウントしないように、緑色の扇形から右端の正方形までを一つのパターンとしています。△ABCが隣の辺に移動するときの掃過部分は非常に複雑になりますが、まとめて正方形として求積すれば簡単です。
ただ、真面目に△ABCの動きを追った受験生はちょっと苦戦したのではないかと思われます。コンパスの持ち込みの可否について募集要項を参照しましたが明示されていませんでした。コンパス持ち込み不可であった場合、図がきれいに描けるというそもそも算数・数学の力とは関係ないものがないと間違えてしますという下らないことになります。
また、ここではπの近似値は小数表示ではなく分数表示にしないと計算がヤバいことになります。無限小数になってしまいますから。そうなることを察知して分数表現にするということを要求しているのでしょうか。思いっきり主観を交えて申しますが、6.09 + 4Sという解答も認めるべきだと思います。円周率も 3.14 と丸めて近似しているわけですからね。正三角形の面積に文字Sを使うのであれば、例えば半径が1cm の円の面積もTとしておけばよかったのではないでしょうか。その場合の解答は、4S + (2T/3) + 4 となりますが、問題ないでしょう。
この問題を通して、いったいどんな資質を見ようとしているのか、はっきりさせてもらいたいですね。発想力を見たいのなら円の面積をTとする私の提案を採り入れればいいだけですし、計算力も見たいのなら正三角形の面積をSなどとせずに近似値0.433を与えて存分にさせればいい。
つまり、中途半端なのです。
大問3を続けましたが、まず問題文が無駄に長いですね。この辺りも問題を洗練するという作業に抜かりがあることをよく表していると思います。(1)との絡みで気をつけなければならないことは、この問題では△ABCの掃く領域の面積ではなく、頂点Cの軌跡で囲まれた図形の面積です。(1)と(2)に何か関連性があるか、私が気付けていないだけかもしれませんが、関連性など見出せなくてもこの問題を解決できます。
問題が求積させている部分は、図中の水色とピンク色の部分を合わせた部分となりますが、求積しなくてもオレンジ色の部分に合同な図形がありますので、青水色とオレンジ色の部分を合わせた図形、つまり正方形9個と円1個の面積を合わせたものとなります。あまりにも呆気なかったので、小数表示にしましたが、ここは 607/50 と分数で答えても(1)との一貫性という意味では正解になるでしょう。正方形の辺と正三角形の回転の問題は開成中学の問題での既視感がありますが、洗練という点でいえば雲泥の差があるように思います。
なんだか話を難しくさせようという意図が感じられますが、算数・数学的な資質を測るという観点からすると、「なんだこれ~」という感じで脱力してしまいます。
私はネガティブなことを言うのは嫌いなタチですが、女子中学の最難関校というポジションに相応しい問題であって欲しいという願いから、敢えて厳しいことを言わせていただいております。