万葉集翻案詩:『黄昏の二上山』
うつそみの
人なる我や
明日よりは
二上山を
弟と我が見む
(「万葉集」巻②・165)
大伯皇女
(おほくのひめみこ)
『黄昏の二上山』
遠い世界へと旅立ち
この世では姿形が見えなくなった
愛しい弟よ
私は何を見て そなたを偲ぼうか
このうつつの世界で
まだ姿形がある私の視線は今
君が祀られている
黄昏の二上山へ
明日からは
あの二上山の姿を
そなたと思って日々を過ごそう
紫と橙が溶け合う空の色を
心の中に取り込んで
無常を悟りつつも日々を生きて行こう
【メモ】
大伯皇女が、謀反の罪を着せられて処刑された弟の大津皇子が葬られている奈良県の二上山を眺め詠んだ歌です。
大津皇子は、鵜野讃良皇女(後の持統天皇)が息子の草壁皇子を皇位を付けたいがために無実の罪を着せられたという説があります。