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コントロール欲と向き合う:『Let Them』詩と心の持ち方|英語で考える


生活の中で、コントロールできることとできないことに対して、しがみついてしまうことはありませんか?コントロールへの欲望は、時に私たちを理想の状態へと導きますが、一方で、自身を負の感情のループへと追い込むこともあります。

《Let Them》という詩

先日、YouTubeで偶然6分間の動画を見つけました。動画の中では、一人のおばあさんが英詩を朗読しており、その詩はCassie Phillipsによる《Let Them》という作品でした。この詩の各行は短いフレーズで構成されており、複雑な修辞や冗長な描写はありません。代わりに「Let them…(彼らに…させて)」というフレーズが繰り返され、読者に穏やかに囁きかけるように語りかけます。

If they want to choose something or someone over you, LET THEM.
(中略)
If they act like they can live without you, LET THEM.
If they want to walk out of your life and leave, hold the door open, AND LET THEM.
Let them lose you.

詩の前半部分では、誰もが人間関係で感じるであろう痛みが描かれています。これらの状況は胸を締め付けますが、詩人はあえてその苦しみを受け入れるよう、読者に促します。外的な行動やコントロールできない事象を変えようとするのではなく、受け入れることを選択すべきだと。

Let them show you who they truly are, not tell you.
Let them prove how worthy they are of your time.
(中略)
Let them have a safe place in you.
Let them see the heart in you that didn’t harden.
Let them love you.

後半では、「Let them」というフレーズが、読者を心の闇から救い出す手助けをするように、穏やかな口調で繰り返されます。

このシンプルな構成と反復は、まるで自己暗示のように、私たちの心に何度も響き渡り、コントロール欲望に対する挑戦として「彼らに任せる」という選択肢を繰り返し強調します。その結果、苦しんでいた心が次第に解放されていくのです。

“Let Them Theory”

「Let them…」というフレーズに共感し、その深い意味を感じ取った私は、Mel Robbinsが「Let Them Theory」について語るポッドキャストを見つけた時、自然と再生ボタンに手が伸びました。

このポッドキャストで、Mel Robbinsは「Let Them Theory」の方法と実践について詳細に説明しています。「Let Them Theory」は、私たちがコントロール欲を手放し、心の安らぎに焦点を当てるための思考と生活のアプローチです。彼女は、自身がコントロール欲に直面した際の経験を交えつつ、なぜ人々が他者をコントロールしようとするのか、その心理的背景や不安の原因についても具体的な事例を通じて解説しています。

彼女は、コントロール行動は多くの場合、私たちの内なる不安や不確実性に対する恐れから生じるが、その行動は他者を本当に変えることはなく、むしろ私たち自身のストレスや不安を増大させると強調しています。Melの分析は非常に的確で、コントロール欲を和らげ、不安を軽減し、心の平静を取り戻すための具体的な方法も提示しています。以下に、特に心に残った部分を紹介します。

自分を見つめるよりも、他人に焦点を当てる方が楽

Why we are also controlling because it’s easier to focus on other people.
(なぜ私たちもコントロールしたがるのか。それは、自分を反省するよりも他人に集中する方が簡単だからです。)

この部分では、Melが親子関係や親密な関係において、なぜ私たちが他者をコントロールしようとするのかについて語っています。その一つの理由として「他人に焦点を当てる方が、自分を反省するよりも簡単だ」という指摘は、私にとって目から鱗が落ちるような気づきでした。この問題が自分ではなく他者に起因するとは思ってもみなかったからです。他者をコントロールすることは「簡単で楽な」ことだというのは確かにその通りで、私たちが他者をコントロールしようとするとき、自分が何かを掌握しているような感覚が生まれ、その結果として内なる不安が軽減されるのです。

人を失敗させること

You got to let people fail and you've got to give people the room to grow the room to learn and the room to take personal responsibility for something in their life.
(人に失敗させることが必要です。そして、彼らが成長するための空間、学ぶための空間、そして自分の人生において何かに対して個人的な責任を取るための空間を与えることも必要です。)

「人に失敗させる」という考え方は一見過酷に聞こえますが、実際には相手に対する深い信頼と尊重の現れです。コントロール欲が強くなるほど、私たちはその欲望に縛られ、自分の期待に応えようとする相手の小さな失敗を許さなくなります。「Let them fail」は単に手放すだけでなく、他者の能力を尊重し、信頼することでもあります。

あなたは、相手の「未来の可能性」と付き合っていませんか?

You’re always dating the potential that you're always in a friendship that you hope will improve you'll realize that you're not even present with the person as they are.
(あなたは常に相手の可能性と付き合っています。常に友人関係が良くなることを期待し、その可能性にばかり目を向けているうちに、目の前にいる「今」の相手を見失っていませんか?)

Melはこの一節で、私たちが理想の関係を求めるあまり、相手の現在の姿を見失っていることに警鐘を鳴らしています。「potential(可能性)」という言葉の選び方が非常に的確で、「理想(ideal)」という言葉よりも、現代の人間関係における期待の投影をより正確に表現しています。「ideal」は静的で理想化されたイメージであり、私たちの心の中で相手が達成すべき完璧な基準を指しますが、「potential」はより動的で、未来に対する期待に基づく可能性を表しています。私たちが相手の「potential」に焦点を当てるとき、私たちは相手の現在の実在する自我とつながっているのではなく、彼らが成り得るかもしれない「未来のバージョン」とつながっているのです。Melのこの問いかけは、再びリスナーに深い反省を促します。私たちは相手の「未来の可能性」に焦点を当てることで、今ここにいる相手と向き合うことができなくなってしまうのです。

愛における最も偉大な寛大さは、他者を感じ取ること

One of the greatest generosity in love that a human being can give to another human being is to just listen to what somebody’s story is. To witness somebody’s feelings about something and validate it.
(ある人が別の人に与えることのできる愛の中で最も偉大な寛大さの一つは、ただその人の物語を聞くことです。その人の感情を見届け、それを認めることです。)

この言葉は、シンプルながらも深い意味を持っています。「witness(見届ける)」という言葉が「聴く」という行為に深みを与え、「validate(認める)」という行為が他者への理解を超えて、感情の承認と支援にまで及ぶことを示しています。愛とは、派手なジェスチャーではなく、静かでありながら深い共感と理解を示すことなのです。

関連英語表現

ここでは、Mel RobbinsのPodcastで使用されていた英語表現から、特にテーマに関連する「不安」「コントロール」「自己」に関する表現を選びました。

不安

Whip yourself into a frenzy
「Whip yourself into a frenzy」は、感情や思考を過度に煽り立て、自己を極度の興奮や不安な状態に追い込むことを表現します。この表現は、心理的または感情的に自らを刺激し、ある考えや心配が次第に強まっていくことで、冷静さや理性を失う状態を指します。「whip」は激しく推し進めることを意味し、「frenzy」は狂乱や極度の興奮、制御不能の状態を表します。

例:She whipped herself into a frenzy by reading too much into a casual comment her friend made.
(彼女は友人の何気ない一言を過剰に解釈し、感情の嵐に巻き込まれてしまった。)

Griping about something
「Griping about something」は、何かについて不満を述べる、または愚痴を言うことを意味します。カジュアルな表現であり、「complain」に比べてやや口語的で軽いニュアンスを持っています。

例:I found myself griping about behaviors I didn’t like, instead of addressing them directly.
(私は嫌いな行動について不満を漏らすばかりで、それに直接向き合うことができませんでした。)

Knickers are in a pinch
「Knickers are in a pinch」は、誰かが不安や苛立ちを感じていることを表す口語的な表現です。「knicker」は下着を意味し、「in a pinch」は困難な状況や窮屈な状態を指します。この表現は、心の中で不快感や緊張感が高まっていることを比喩的に示しています。

例:No need to get your knickers in a pinch, everything will be fine.
(そんなに焦らなくても大丈夫、すべてうまくいくよ。)

コントロール

Micromanage
「Micromanage」は、非常に細かい部分に至るまで過剰に管理しようとすることを意味します。「micro-」は「小さい」という意味で、「manage(管理する)」と組み合わせることで、細かすぎる管理やコントロールを指します。

例:She micromanages how everyone does their chores, constantly checking and correcting their work.
(彼女は皆が家事をどのように行うかについて細かく指示を出し、絶えずチェックして修正を加えています。)

Ramping up the control
「Ramping up the control」は、コントロールの強度を徐々に高めていくことを意味します。「increase(増加)」と同様の意味ですが、「ramping up」は段階的かつ計画的な増加を示し、プロセスに重きを置いています。

例:As the deadline approached, they started ramping up their coffee intake—by the end of the week, they were practically running on caffeine.
(締め切りが近づくにつれて、彼らはコーヒーの摂取量を増やし始め、週末にはカフェインで動いている状態でした。)

Obsessive thoughts
「Obsessive thoughts」は、頭から離れない強迫的な思考や考えを指します。これらの思考はしばしば無意識に繰り返され、制御が難しいことが特徴です。

例:She couldn't stop her obsessive thoughts about making a mistake at work, even though she knew she had done everything correctly.
(彼女はすべて正しく行ったと分かっていながら、仕事でのミスに対する強迫的な考えを止めることができませんでした。)

Drop the oars
Oarsはボートを漕ぐためのオールのことで、何かをコントロールしたり、事を推し進めようとする努力をやめることを意味します。この表現は、ボートを漕ぐ場面から来ており、オールを放すことで、もはや船の進行方向や航路をコントロールしないということを象徴しています。

例:After trying to plan every detail of the trip, she finally dropped the oars and said, 'Let's just hope the universe has a decent GPS.
(旅行のすべての詳細を計画しようとした後、彼女はついにオールを放し、『宇宙に任せるしかないね』と言いました。)

自己

Hold your boundary
「Hold your boundary」は、自分の境界線を守ることを意味します。「boundary(境界線)」は、自分の限界や価値観、個人的な空間を示し、これを「hold(守る)」ことで、自分の立場を確固たるものにします。この表現は、他者がその境界を「cross(越える)」ことを防ぐための行動を意味します。対して、誰かがその境界を越えたときには、「cross your boundary」という表現が使われます。自分を守るためには、時にこの境界線をしっかりと保つことが求められます。

例:When he started giving unsolicited advice about her life choices, she smiled and said, 'If I have to keep listening to all this life advice, I should definitely start charging for it.'
(彼が彼女の人生選択について余計なアドバイスをし始めたとき、彼女は微笑みながら『これだけのアドバイスを聞き続けるなら、間違いなく料金を取り始めないとね』と言いました。)

Tap into emotional peace
「Tap into emotional peace」は、内なる平静を得る、あるいはその状態にアクセスすることを意味します。「tap into」は、何かにアクセスしたり、活用したりすることを指します。

例:He taps into emotional peace by telling himself that his boss’s emails are just modern-day haikus.
(彼は上司のメールを現代の俳句だと思い込むことで、心の平静を保っています。)

Detach yourself from the emotional and mental struggle
「Detach yourself from the emotional and mental struggle」は、感情的や精神的な葛藤から自分を切り離し、そこから距離を置くことを意味します。「detach yourself from something」というフレーズは、特定の物事や状況から意識的に距離を置く行為を示します。感情や思考に囚われ過ぎているとき、そこから自分を切り離すことは、内面的な平和を取り戻すために重要なステップです。

例:She detached from her phone—no workout trend is making her exercise anyway.
(彼女は携帯電話から距離を置きました——どうせどんなフィットネストレンドがあっても、彼女は運動しないのだから。)

結び

《Let Them》の詩、「Let Them Theory」、そして関連する英語表現について話し合いましたが、このコンセプトはシンプルに見えるかもしれませんが、日常生活の中で実践するのはそう簡単ではありません。再びコントロールや不安のループに陥ったとき、「Let them… Let them...」という言葉を思い出し、時の流れに身を任せ、周囲の人々や自分自身を解放し、物事が自然に進むのを見守りましょう。


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