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【介護エッセイ】 一致不団結
とある介護エッセイコンテストに応募して、賞を頂いた作品です。
コンテストのテーマは以下の内容で、2,800文字以内という応募規定がありました。
「介護生活の実際や、ケアラー(家族介護者)の喜び・悩み・本音などについて、具体的なエピソードを交えたエッセイを募集します。」
介護で悩みを抱える同世代へ向けて、気づきや共感になればという想いで、実体験をもとに作品にしました。※2023年の作品です。
ぼく(45)は現在、母親(75)とふたりで暮らしています。
ふたつ上の兄はいますが実家を出て遠く県外にいるので、母の介護でキーパーソンとなるのはぼくです。
まだ実際に介護が始まったわけではないですが「介護が始まるきっかけ」になるエピソードをもとに、家族の不一致を描いた作品です。
実はエッセイの公募に応募するのはこの作品がはじめてで、書き上げるのに何度も推敲を重ねました。
作品のあとに、あとがきとして作品づくりの気づき・制作過程も紹介しています。公募に挑戦する方の参考になれば幸いです。
著作権の関係で全文そのままを掲載するわけにはいきませんが、大まかな構成は変えずに加筆したものを掲載しています。
一致不団結
相手を大切に想うがあまり責任感が強くなり感情的になると、いつしか相手の視点を見失ってしまう。相手に自分の想いを押し付けてしまう。
そんなこと、介護ではよくあることかも知れない。
ぼくと母は、病院の診察室で医師の説明を受けていた。
「心臓にはね、心房という血液を出し入れしている所があります。心房細動はその心房がね、ブルブルと小刻みに震えて起こる不整脈なんです」
「心房細動になるとその心房にね、血栓という血の塊ができやすくなっちゃうんですよ。もしその血栓が血液の流れに乗って脳に行ってしまったら、脳の血管が詰まっちゃいます。要するに心房細動はね、脳梗塞の危険があるんですね」と、医師はゆるやかな心地よいフレーズで耳を背けたくなる言葉たちを並べ立てた。
表紙に「心房細動の患者さんへ」と書かれた小冊子を手に、ぼくと母は医師からの説明を食い入るように聞いていた。
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介護は大変。介護職はキツイ。そんなネガティブなイメージを覆したいと思っています。介護職は人間的成長ができるクリエイティブで素晴らしい仕事です。家族介護者の方も支援していけるように、この活動を応援してください!よろしくお願いいたします。