マガジンのカバー画像

ことばとき

22
読み手の解釈に委ね、 梳かれた言葉ごとに読み取る詞。 捻り捩じった羅列・流れの一音、 どれだけの意味が込められるか。 心に浸透するような詩でも 世界が思い描ける小説とも遠い、…
運営しているクリエイター

#掌編小説

わたくしはそこよりうえにある

 夢から夢に架けて羽ばたくときに、ちょっとの壁と扉をなくした出口は褪黄色の海が、いや世界が、フチだけ 描いてある光景で、今いるものがみちで届かない場所とすれば、水域はすこし背丈が高く、ここから下ってくところもないのに、もう半分 浸っています。  わたくしはそこより上にある光に気づきました  透き通った素肌は饐えたヌメりをでっぷりとふくませ、急に重くなった躰とふっと立ち消えた灯りが、あの夜へ返してみせます。サンダル片手に砂浜で彷徨うときのことです。光はすぐ底まで来ていて 飲

しょうねん

 指を詰めた姿勢の錆びついた原石から われた舌を置いてきた。廟にかわいたのよ 刃文。漏れ出した女の後れ毛から鋏が、万年筆と交尾している。 赤のボールペンと旋回した灰が新品にうず高く積まれた部屋には、烟。同じにもならないのにレイプされていくのを、足して引いても 紙と鉛筆を肌を擦り付けて持ってまた、苦くて濃い甜茶を、裏紙にしいていく作業におもいました。  ガジガジにしなったスケイルとか、を兎角ヘリックスの銀のアンテナたちが、いまと白熱球とひとつ切れかかってはチカチカ。ストックし

みずおとなりて

 おりがみひとつこうてきて、みたばかりなのです  折りきれずに 未だに、数え切れず融解した無心が拵えております  一つの家を 月夜が ガラス戸を突き破り、みるみる響かせる波音を、一枚のフィルムで溺れいたのだと、未来から、遥か謂れ。翡翠の園、実は 眦だけの美少年がひとかじり、微笑を添えて、ぎこちなくうつろいゆく歪みを魅せたのである  耳を傾けるのだ。暗号も伝奇も ほんのはした  ぬくみとかおり、ほんのりとした 酔いも匂う 艶めかしく  果てしない大空と湿原と雨に濡れ縋れる

推移と応えも衰萎の心得も糸を含まず

 何かを追い求めて逆想する、意味など持たずに、咲かのぼるだと識る  彼方同じものをみて、どこまでも噛み合わない光景にあり 更に時を経ても、すれ違うばかりの道で、ともに肩を抱いて、ソラ口笛を吹き、どこか摩擦で産み落とす、嵩は陰に陽に渇れた恵み、あれば春の啼泣、降り注ぐはどこか弑逆のよよ  影も未来の鋭利な鏃で、鼻歌を啄き出す、嘯いた腹を満たしている。いまさら窄まる血でなにを懐うか  夙くの落丁、お足元の悪い中、雨露を駕いでいる。状況は一定字の首を捻る。なおもって上の空に溺

愁傷。

 ディスクに収められたライター、濡れた前髪の質量を尋ねる、何者も強風の水禽の頭蓋「手伝ってよ。」抑え込まれた惑星間とやり取りする、にやりと飾る口蓋のそこに 今日の台紙には磔の青い鳥、散々恥を腫らして 窓辺で垂れている。    チロチロと狐火すげなくは仄かに『よるはあらわれる。』郷里に或るてるてる坊主の幽霊屋敷に嵌め込まれた《そのひ》は現場のひかりと注ぎ込まれ[家族]構成とされる。    黒縁の外的に違いなく。情熱的な夜、災いして、愁傷  証拠ない四つ切のいつだって薄暑。あやふ

IF

 もしもクレバー。青白く立ちすくんだ空、虚木を左道に見て  ショーウインドウにはたくさんの人が、入り込んでいるわ。  まずは星の子と押し付けて、破顔してこちらに向かわせる卵生よ、  それとも扉の向こう側から覗いている気分はどう?  月夜の雰囲気に一筋、君の赤毛でも内装に、十字の波がある  お姉ちゃんは昨日マネキンになってしまった 「……それでね、今日からはあたらしいお家にかえってわたし、ひとりになったの。大きな屋敷だって言うから、それで、ね。メイトのひとりがつまみ食いして、

夤 おそれつつしむ

 よこたえたからだ、しんじるものは、とろとろのなまくびから、外れた瞑りを探している。  なおざり、枯渇した口癖から点と線が逃げ出した。 「有象無象の~直射日光に~お気をつけくださいませ~」  間延びした終電を乗り過ごし見晴らしの良い港内まで、麝香猫の足跡を、仕方ねぇのとふてぶてしくなぞる。  芸術として封じ込めた、アクリルは天使題。と詳細に騙る白いリコリスの苑。祭壇へ。贄と献花を、それで薬包紙には土塊を。  下々生息するパラサイトの求愛行動は、だれしもそう秋の空で、マシュ

曰く。そぼ降る

 石造りの遊苑、方望の芝生は蒼青と風に揺れ、  そっと靴を脱ぎ花々と戯れる蝶々を焼き付けて。  すべて片方のしびれを齎す。ちいさく切り出された史の地面をのそのそと這うように、撫でるような慈雨と咳き込むような春の嵐もただ、辟易にへたり込む。きっとその夜の延滞に別途、はなひらに耳を傾ける。  例えるならば許嫁と作曲家と涙ぐましい蛍光脆弱を見るのも烏滸がましいもの。  だがこの五線譜を引かれた漆喰の黴を飲み込み、木漏れ日が唾を吐きここへ落花する、聞こえるだろうか鍵束の錆色が、

そのかさをとじる

 期待外れにも所持している体躯は永久に若々しく、蛤の殻を積み上げて、浜辺に打ち上げられた。ほんのささいなオケージョナル・ドレス、銀杏の季節の後ろ姿ばかりを見送っている。運悪く雨に心つくし、幸いにのまれるなら。境に圧する銀糸のあちこちを、滑らかに吹くことを憶える。  晴れ間に沈んだ色調に熟れ弾かれたように起き上がり、踵を返す黒い点がいるが。細やかな折り目節目のあたたかな存在を楽に置かず、御覧、数を減らした荷車に乗りやがる。 拾い物の坂を懐かしがる。  肌は露出しては震えてい

知恵の輪

 流れ着いたのだ。  鼻をつまむように朧月夜は繁殖して。  鄙びた下駄の音をつまみに、ひとりみにクダをまくように。躾けられたのだ! 反物の裾は永く見る影もなく。  私に着せられた装束ではないのか、これは  なまっちろい肌に血潮を浮かせた、陽炎に妬かれた、  あなたではないのか。  この言葉の海に溺れる私たち人類にとって、の秋色の病原菌はそこら中に花をまき散らすわがままは、少しづつ処理されて今に残るのは色褪せた糞と灰色の爪の垢ぐらいです。保護色に暗んだ浮遊感によろめく蜉蝣

そノかげハ天使とナリ

魔法のランプのサインを一切れ 汐のとき 伽羅の砂時計に、口の端にのせておけば、箇条書きに草は群がり栄え華々しく執行されるかもしれない……自慢話に興じるこっくりさんに従い、虫が巣食う材木を組み立てる 唇を、やはり舌先で舐める海上を照らし出す一輪のフラワーと、灰燼をかき集めた『冬』へ招待される。 踏切を映す鏡→火花散る雪→珊瑚の骨  →金縛りの半熟卵となり町に原点回帰する 、心の像。 綺羅を飾る少女漫画。      夢心地のマーメイドがするりと浮かぶ 蛍光灯から試験管まで夥し

古傷が痛むことはないでしょう

 希少性のあら捜しに仕立てさせる魅惑 やわらかに富めば、このかいな いいほうで、熱烈に繁殖した黒砂糖の鎖を断ち切る一指、こころなしか、ほのかな香りに包まれ、ほとびるは着の身着のまま。  美女と野獣の肢体、無防備な空間の情念と掴まえる、その影響は目ざといかな未詳 とにかく ほそながいサブカルチャーが 思わぬ結果ですがフィルターにあった隻腕の処遇とする。 電子烟草 無償透明 空色、天体観測  これはおおどかな砂山を与え向日葵と華やぐ手元にあり、ほど弛んだ敷物の粗戦と気軽に泣か

しあわせでありました

「弥が上にも」と蠢く弾力と渡ってうたって、ふっくらとした真綿の断層は息を切らした、奔放に惹起し、鮮烈に粋る。消え入るようなコンパスは錯覚を刻んだ犠牲者、途を記し伝わってくる、ただ頭が足りないと数字盤の目眩いを抱き蜃気楼を覗く、あじわいに石畳を漂うそよ風と響く庭へ、歩行障害の水兵は万物に春霞と昏れ 静まり返る うすい彫刻とステンドガラスの構図を取る、聡明な少年と向かっては遥か氷雨とさやぐ、てばなしの扇の儚さと護るやわらかな芽吹きであれ うまそうな獣としての幼さ、明かりが灯ったよ

住めば気狂い花の都

 たのしいおもいでも、つらいきおくも、ほろにがく反芻する。むさくるしく空虚な嘘の中心に足を運ぶ なんども。ざわつかせる世界もこの胸も、白い目で見る明けの明星の強さに趣を見つけるには。  目障りな目的地を退去させよ ただ当たり前に等しい月出したその陽よ反逆せよ。  ここは住めば都 どんな街でも、現場は水嵩近く美術館にあり、賑わいを魅せるドブ川の繁華街を吹き抜ける いわゆる寄る辺なさとして雑魚寝している。空き地における楓の二重人格の処分は ロケーションも完璧なくせに誰も振り向