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みずおとなりて

 おりがみひとつこうてきて、みたばかりなのです
 折りきれずに 未だに、数え切れず融解した無心が拵えております

 一つの家を 月夜が ガラス戸を突き破り、みるみる響かせる波音を、一枚のフィルムで溺れいたのだと、未来から、遥か謂れ。翡翠の園、実は 眦だけの美少年がひとかじり、微笑を添えて、ぎこちなくうつろいゆく歪みを魅せたのである

 耳を傾けるのだ。暗号も伝奇も ほんのはした
 ぬくみとかおり、ほんのりとした 酔いも匂う 艶めかしく

 果てしない大空と湿原と雨に濡れ縋れる。ここはあぶくを伴った潮風が 不行儀な庭木の枝を撓らせていた今夜。土砂降りだろうか。トイピアノが見上げている世界は投棄されたまま 浮上することもなく、立ち消えていく。

 炎が奔走する少しの熱が 本能にそそぐように、
 囲炉裏での 祈り願っている詩だと想うことにして

 塗れていたものです、槌ははじめから弱く脆い筋交いなど透明で 強固な色があるばかり、墓のようで井戸のようで、まあるく撓っていて……その場 腰を下ろして見上げたようなかたちで、少し 雪が溶けるのを、待っていただけなのだと

 はじめから 知っていましたよね

 まあどうぞどうぞ。茶菓子が開いていますから、遠慮なく 湿気っていることと思いますが。買ったつもりもないですし食った覚えもありません。が、或るものでしょう 白けちまったそこに棄てられて。

 ――蛇の敷床に誘われる夢である また純血の運河だった。香水瓶から流れ始めた 樹木が花を腐らせはじめた軌跡。てのひらの史話が逃げ出した、蛍だろうと軽く滑る。つついつい、瞼の上縁に釣り糸を垂らし貘が連れるのを、うつらうつつ削いで、雨降りに紐解いた鉱石箱に触れる、ときにつと 確かに微熱を生む

 ゆめまたゆめへと続く この防波堤は生ぬるく 水琴鈴を鳴らした神楽は
 天の静寂を歪ませるアーチ状の銀河と、代る代る陶器の階段を 裸足で歩ませる、
 死神が射る。怪しげな祭壇へ水琴窟といっしょに魅せられ 首が祀られて要て、
 私の片隅に生きてお喋りして鋳る。
 1/12Doleの季節、隣では多分砂漠のバラが咲く うつろこそ 煩いぐらいに

 蝶は花 華は弔、ほころびを繕い衣にしていつからか始発列車に飛び乗っております。横から歯切れのヌゑのアザナを攫って空箔から煽れた白銀を躾けたときに、山々の美しさを厭いました。
 珪砂を弾く かわべりで、染めゆくあおばは仄かに苔むしたよう。天を焦がすばかりに、白白と醒めていくまえに。川面に奔る炎が砕け散った硝子の明日は幻想的な、お好きな果てへと押し流し 報せ焦がれていた。

 舞い降りたは今々。
 足を向ける しらずしらずに、塵ほども知らない しらべ にいきつきました。散り架かり続けた花吹雪はその色などとうに褪せ、餞の一つもございませんから、これら痕跡は摘まれて処りましたと、いのりゆくすえのきせきとは(水。尾と鳴りて)どうせ砂上の花と咲う。


2023 年 7 月 6 日 5:45 PM 破滅派投稿

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