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ことばとき

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読み手の解釈に委ね、 梳かれた言葉ごとに読み取る詞。 捻り捩じった羅列・流れの一音、 どれだけの意味が込められるか。 心に浸透するような詩でも 世界が思い描ける小説とも遠い、…
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羽根

 脇道から逸れ和やかな場所へふと帰り着く。  ああそれでとわのなかにもあり、重ね合わせた平行線をアヤのように包み込んでは。この場にて、胸をなでおろしたものだ。夢も歴史もないその時をぼんやりと凌いでいる。降ってわいたものを努めては押し殺す。黙認した空が遠くあり嘲笑うように散る。  そんな、ひとたびのこと。  泣いているのだろうな。  階段の踊り場でふと思い出した、(なんてこともないのですよ。)駆け込んでシートに座り暗転を待つ、明け暮れないロードショーは片手間を濡らしただけ。映像

わたくしはそこよりうえにある

 夢から夢に架けて羽ばたくときに、ちょっとの壁と扉をなくした出口は褪黄色の海が、いや世界が、フチだけ 描いてある光景で、今いるものがみちで届かない場所とすれば、水域はすこし背丈が高く、ここから下ってくところもないのに、もう半分 浸っています。  わたくしはそこより上にある光に気づきました  透き通った素肌は饐えたヌメりをでっぷりとふくませ、急に重くなった躰とふっと立ち消えた灯りが、あの夜へ返してみせます。サンダル片手に砂浜で彷徨うときのことです。光はすぐ底まで来ていて 飲

しょうねん

 指を詰めた姿勢の錆びついた原石から われた舌を置いてきた。廟にかわいたのよ 刃文。漏れ出した女の後れ毛から鋏が、万年筆と交尾している。 赤のボールペンと旋回した灰が新品にうず高く積まれた部屋には、烟。同じにもならないのにレイプされていくのを、足して引いても 紙と鉛筆を肌を擦り付けて持ってまた、苦くて濃い甜茶を、裏紙にしいていく作業におもいました。  ガジガジにしなったスケイルとか、を兎角ヘリックスの銀のアンテナたちが、いまと白熱球とひとつ切れかかってはチカチカ。ストックし

みずおとなりて

 おりがみひとつこうてきて、みたばかりなのです  折りきれずに 未だに、数え切れず融解した無心が拵えております  一つの家を 月夜が ガラス戸を突き破り、みるみる響かせる波音を、一枚のフィルムで溺れいたのだと、未来から、遥か謂れ。翡翠の園、実は 眦だけの美少年がひとかじり、微笑を添えて、ぎこちなくうつろいゆく歪みを魅せたのである  耳を傾けるのだ。暗号も伝奇も ほんのはした  ぬくみとかおり、ほんのりとした 酔いも匂う 艶めかしく  果てしない大空と湿原と雨に濡れ縋れる

推移と応えも衰萎の心得も糸を含まず

 何かを追い求めて逆想する、意味など持たずに、咲かのぼるだと識る  彼方同じものをみて、どこまでも噛み合わない光景にあり 更に時を経ても、すれ違うばかりの道で、ともに肩を抱いて、ソラ口笛を吹き、どこか摩擦で産み落とす、嵩は陰に陽に渇れた恵み、あれば春の啼泣、降り注ぐはどこか弑逆のよよ  影も未来の鋭利な鏃で、鼻歌を啄き出す、嘯いた腹を満たしている。いまさら窄まる血でなにを懐うか  夙くの落丁、お足元の悪い中、雨露を駕いでいる。状況は一定字の首を捻る。なおもって上の空に溺

異相の縁

   卵の焦点を朝食に口を挟む 吸血鬼の乳牙を 屋根裏に降らす老執事はにこやかだ。今際には庭園。再演の一つを銀蝋の皿に移し 差し上げなくては成らない生涯がある。こそと抜け出した狐火が未だ帰ってきません。喚きはじめた銀の鸚鵡の あの幼女の、死が黒猫に擬態したものに近く 雨漏りを眺める。  あの一等星は天使か妖精か。  季節外れの花火かもしれないなあ、  紫陽花はいつだって それこそつららのような藤だとしてさ、そちらがわにある目覚まし時計はなんというか。なぁ 見開いた夜の森 瞳

ステロタイプ

これはなにごとでもない 、忘れていた。「椅子を壊した。」 雷鳴、)喉から、背景が/表情がひゅっと逃げ出したようだ。高らかであれエンジン音、乳白色の泥の中で、耕された砂地をたどる類語辞典 夜想曲とキャンバスに指揮をした、生き物はひとり泣いていたから。熟められたばかりの掲示板の空調が釘と茎を輪切りにして、あれはふところのおっかなびっくり。偶然を先回りに 見透かすは悶々とした空である。きまりの悪い思いごとほどさまよい歩く、ほんの水際を 歩調を緩めずに、息をしている風が体感する、パ

ただたどしい

その嘴で、食らいついた、濡れ光る 光と影、  その偶然が 拍動に 例えられるなら まもなく声を失うあるあるの迷宮。アナタ方はまだサトウキビ畑で草を編んでいるのの。昆虫標本の街でも考えながら、代々木公園を降車するる。天国の弾みは黄金率を、鮮明にぶら下がる水曜日の事と、タクシーは音もなく喫茶店を指名してって。骸の彫工が薫ずる旋盤に続く推敲、温室育ちの水草の目的地を象り、血痕と心臓の馴染むとこに泣き出しそな土塊と生まれていますでしょ。 ダサいデザインの御国とアナイサレル。波が紫

愁傷。

 ディスクに収められたライター、濡れた前髪の質量を尋ねる、何者も強風の水禽の頭蓋「手伝ってよ。」抑え込まれた惑星間とやり取りする、にやりと飾る口蓋のそこに 今日の台紙には磔の青い鳥、散々恥を腫らして 窓辺で垂れている。    チロチロと狐火すげなくは仄かに『よるはあらわれる。』郷里に或るてるてる坊主の幽霊屋敷に嵌め込まれた《そのひ》は現場のひかりと注ぎ込まれ[家族]構成とされる。    黒縁の外的に違いなく。情熱的な夜、災いして、愁傷  証拠ない四つ切のいつだって薄暑。あやふ

IF

 もしもクレバー。青白く立ちすくんだ空、虚木を左道に見て  ショーウインドウにはたくさんの人が、入り込んでいるわ。  まずは星の子と押し付けて、破顔してこちらに向かわせる卵生よ、  それとも扉の向こう側から覗いている気分はどう?  月夜の雰囲気に一筋、君の赤毛でも内装に、十字の波がある  お姉ちゃんは昨日マネキンになってしまった 「……それでね、今日からはあたらしいお家にかえってわたし、ひとりになったの。大きな屋敷だって言うから、それで、ね。メイトのひとりがつまみ食いして、

夤 おそれつつしむ

 よこたえたからだ、しんじるものは、とろとろのなまくびから、外れた瞑りを探している。  なおざり、枯渇した口癖から点と線が逃げ出した。 「有象無象の~直射日光に~お気をつけくださいませ~」  間延びした終電を乗り過ごし見晴らしの良い港内まで、麝香猫の足跡を、仕方ねぇのとふてぶてしくなぞる。  芸術として封じ込めた、アクリルは天使題。と詳細に騙る白いリコリスの苑。祭壇へ。贄と献花を、それで薬包紙には土塊を。  下々生息するパラサイトの求愛行動は、だれしもそう秋の空で、マシュ

曰く。そぼ降る

 石造りの遊苑、方望の芝生は蒼青と風に揺れ、  そっと靴を脱ぎ花々と戯れる蝶々を焼き付けて。  すべて片方のしびれを齎す。ちいさく切り出された史の地面をのそのそと這うように、撫でるような慈雨と咳き込むような春の嵐もただ、辟易にへたり込む。きっとその夜の延滞に別途、はなひらに耳を傾ける。  例えるならば許嫁と作曲家と涙ぐましい蛍光脆弱を見るのも烏滸がましいもの。  だがこの五線譜を引かれた漆喰の黴を飲み込み、木漏れ日が唾を吐きここへ落花する、聞こえるだろうか鍵束の錆色が、

そのかさをとじる

 期待外れにも所持している体躯は永久に若々しく、蛤の殻を積み上げて、浜辺に打ち上げられた。ほんのささいなオケージョナル・ドレス、銀杏の季節の後ろ姿ばかりを見送っている。運悪く雨に心つくし、幸いにのまれるなら。境に圧する銀糸のあちこちを、滑らかに吹くことを憶える。  晴れ間に沈んだ色調に熟れ弾かれたように起き上がり、踵を返す黒い点がいるが。細やかな折り目節目のあたたかな存在を楽に置かず、御覧、数を減らした荷車に乗りやがる。 拾い物の坂を懐かしがる。  肌は露出しては震えてい

知恵の輪

 流れ着いたのだ。  鼻をつまむように朧月夜は繁殖して。  鄙びた下駄の音をつまみに、ひとりみにクダをまくように。躾けられたのだ! 反物の裾は永く見る影もなく。  私に着せられた装束ではないのか、これは  なまっちろい肌に血潮を浮かせた、陽炎に妬かれた、  あなたではないのか。  この言葉の海に溺れる私たち人類にとって、の秋色の病原菌はそこら中に花をまき散らすわがままは、少しづつ処理されて今に残るのは色褪せた糞と灰色の爪の垢ぐらいです。保護色に暗んだ浮遊感によろめく蜉蝣