或る言葉の記録vol.1 セットリスト.詩の全文
最初に
5月31日(日)14:00〜行われる、
詩人・久世孝臣、人生初の配信ソロライブ
「或る言葉の記録」のセットリスト。
「詩の全文」をライブに先駆けて公開。
これが今回読もうと思っている全て。
配信URL
(生放送終了後も見ることができます)
ライブ前に詩の全文を公開することで、僕がやっていることをより具体的に直感的に知覚してもらいたいから無料公開します。
それにあなたの中の言葉が僕の中の同じ言葉とどう違うか、
僕がどうやってこの言葉たちに肉をつけていくのかについて興味深い体験をしてほしいと思う。
あなたとわたしは少し違うかなり違う全部同じ。
もちろん終わってから読んでくれてもOK。
一度読んでしまえば何も知らず言葉の海に身を委ねることはできなくなるのだから。
言葉の世界へようこそ。
或る言葉の記録とは…
現代音楽家・市川ロ数、ダンサー加賀谷香、ダンス劇作家熊谷拓明、バンドネオン奏者・仁詩など、数々のアーティストと朗読でコラボしてきた詩人・演出家の久世孝臣が自分の言葉を各地に伝えて廻る朗読プロジェクト。
ひとつの言葉のような一日。
3月に予定していた東京公演、5月に予定していた福岡・東京公演がコロナ禍で中止となり、配信投げ銭LIVEよりこのプロジェクトをスタートさせる。
第一弾の今回は「自画像」をテーマに、舞台で使用した詩、詩集「自分の水を探し出す魚」に収録した詩、幻想連作短編詩・謎夜の中から厳選した作品を朗読します。
衝撃の言語体験。
混じりけのない言葉の原液。
言葉で描く、詩人の自画像。
こういう状況になって、完全に以前に戻ることはできないでしょう。
全員大変。
だからこそ、初期衝動に誠実でいたい。
僕は描くことと読むことで楽しんでもらいたい。
他にはあまり望んでいない。
スタンスがはっきりした。僕の初期衝動。
今回のLIVEは無料で観ることができます。
ただ、気に入って頂いた方、応援したいという気持ちになってくれた方には、noteを使ってこの記事を買っていただいたり、YOUTUBEの機能、PAYPALを使って投げ銭でサポートいただいています。
投げ銭方法はこちらの動画概要に記載してあります。
今回、中止したライブはドリンク代込みで3000円でした。
いくらでもお気持ちをいただけたらとても励みになります。
また、みんな一様に苦しいこの状況、金額面のサポートじゃなくても、このnoteをシェアしたり、配信URLを拡散していただいたりもほんとにありがたいです。
ご検討よろしくお願いいたします。
自画像
神様は僕たちが思ってるようなことはできないかもしれない
出来るけどしないかもしれない。
僕たちはずっと 生まれて 死ぬ だけをしている。
ここを生き残っても いつかの次の場所で。死ぬまで だけを生きてる。
向かい側に 人が座った
どうやら 僕の言葉を聞きたいらしい。
読みますよ。あなたが僕の言葉を望むなら。
読むと無くなる儚いそれが宙を舞うさまが見たいなら。
長い間 僕は好んでこういう言い方をしてきた。
この文章も前の僕ならこう描いていたと思う。
「随分と」長い間僕はこういう言い方をしてきた「と思う」
僕の言葉を聞きたい「らしい」。長い間僕はこういう言い方をしてきた「と思う」
誰からも断定してほしくない
断定するより 人の数だけ必要な真実を人の数だけつくりたい。
自分の信じたいものを信じて生きていくために。楽に息を吸うために。
「らしい」「と思う」の間にあるものが僕のとる正しい態度だと思って生きてきた。
言葉にたっぷりと余韻を含ませて、
いかようにでも解釈できる言葉を使って、
それで現実の形が少しでも変わればいい。
現実の形を変えて 都合のよい解釈で 自分の過去を変えて。
卑怯だ。僕は卑怯だ。そう思う。
僕は今まで卑怯なことをたくさんしてきた。
言葉で色んなことを見えないようにしながら。
現実は言葉を変えるとすぐに変わる。
ここにいたくないのなら 言葉を使って現実の違う階層に いけばいい。
それが悪いとは思わなかった。とても僕らしい。
現実を物語にして生きてたかった。僕らしいけど卑怯だ。
僕は人一倍言葉が好きだった。それもある。
言葉が好きだったし、言葉で僕を好きになってほしかった。
創った言葉と僕は同じもの。そういいながら
どれだけの言葉でごまかして 自分を分かりにくくして
でもその中にいる自分のことを分かってほしい。
そういう気持ちもあった。 自分で誤魔化しておいて厚かましい。
言葉でどこか別のここじゃないどこかに。
誰の言葉の中にも逃げ込めないならせめて
自分の言葉の中に。
それはもうやりたくない これからの僕はもうそれはやりたくない。
一人で生きるのは嫌になった
最近。素直なことが言いたい。そう思う。
素直で力強いことが言いたい。
選ぶ言葉は変わらなくても。
気構えとして素直で力強い言葉を使いたい。
言葉が僕の現実を 現実が僕の言葉をつくってくとして。
逃げ込む言葉ではなく重たいものを持って何かを創る言葉を。
前のようにここと少しずれた世界の話を描いても、
自分を隠すための言葉ではなく 身体の場所を知らせる言葉を。
ぼくのほんとのなまえはどこにあるかな
ぼくのほんとのからだはどこにあるかな
画用紙があれば一日中、絵を描いていた子供のように、
僕も言葉のことをたくさん考えていた。
どんなふうに言葉を置くとどんな風に見えるのか。
どんなふうに言葉を繋げるとどんなふうに感じるのか。
たくさんたくさん言葉のことを考えてきた。
ことばをたくさんたくさん描いてきた。
ぼくのほんとのなまえはそのなかにある
ぼくのほんとのからだはそのなかにある
卑怯な言葉だと今思うむかし創った言葉にも
今から創る素直な言葉の中にでも
ぼくのほんとのなまえとからだはそこにある
僕は言葉が好きだったし、言葉で僕を好きになってほしかった。
それに言葉に関することは、自分のものだという確信があった。
そのことは忘れていない。言葉に関することは僕のものだ。
詩というのは血です。これは僕の血です。
ファンタジーではない。きちんと僕は生きている。
ここに居て 身体がある 37年同じ身体を使っている
ぼくのほんとのなまえはこのなかにある
ぼくのほんとのからだもこのなかにある
神様は僕たちが思ってるようなことはできないかもしれない
出来るけどしないかもしれない。
僕たちは何をやっても生まれてきて死ぬだけです。
向かい側に 人が座った
僕の言葉を聞きたいという意思表示だ。
僕はいつかの自分の身体がとらえた自分の言葉を読み始める
頭を真っ白にして。
僕の言葉が僕と人にどのように染み込んでいくかを知っていく
僕がいつかに描いた僕の言葉が僕の口から出るのを聞きたい人がいてくれる。
卑怯だったころの僕と同じように この世界は本当にある世界だと言う。
同じ言葉でも心構えが違うから
今日は僕が言葉を読む日。
僕の向かい側に 座った人は 僕の言葉を聞きたい人だ
用意した言葉が口から出ていく
僕は言葉を描いている 僕は言葉を描いている 僕は言葉を描いている
たくさんたくさん描いているよ 今日は声で描いている 言葉で世界を。
聴いている人も 座った人も。
ぼくのほんとのなまえはそのなかにある
ぼくのほんとのからだはそのなかにある
この言葉は救われたくて描いているんじゃない
でも結果 僕のどこかは救われてしまう
それはとてもずるいこと。描くということのほんとうのこと。
一枚一枚自分の身体を剥がしていこう。あなたが生きてきたことを知っている
あなたが生きてきたことを知っている
人間には業がありますね。やめようと思っててもやめられないこととか
やりたくてもできないこととか。それを全部自覚するのは難しいですね。
僕は これから 読みますね 届きますかね
ずっと読んでいるから 体一つで来ておくれね。
読みますよ。僕が言葉を望むから。
聞いてもらって言葉を本物にしたいから。
それ以上に僕とあなたを本物にしたいから。
読むと無くなる儚いそれが宙を舞うさまを二人で見たいから
ここにあるものは物語じゃない
あなたとわたしには血が流れている
向かい側に 人が座った
僕の言葉を聞きたいと思ってるから座ってくれた。
読みますよ。あなたが僕の言葉を望むなら。
僕も誰かに僕の言葉を望んでいる。
読むと無くなる儚いそれがあなたの中に残るように。消えないように。
これからはこういう言い方をしていこう。
何をしても僕はけもののままなんだ
現実を物語にして生きていきたかった。
今でもそれは悪いとは思わない。ずるい物語ばかりじゃない。
きちんと重さを感じられる物語なら。
物語の仕方に注意を払って。足の裏に感じた地面を忘れずに。
嘘をつかずに 相手に伝える
物語は生きている世界にちゃんとあると思っている。目に見えなくても。触れなくても。
感情だけが追いかけてくる
この細い体を ずっと ずっと もう 思考じゃなくて
感情だけが ずっと ずっと 鳴りやまない
過去のことは覚えていられない。人間が論理的な構造物だとしても
論理じゃ世界は回っていない
この言葉はなるべく美化せずに描いた。
でも人に見せる前提で描いている自画像だ。
か み さ ま の な ま え は だ れ も 知 ら な い
こ れ か ら ほ ん と の こ と い う ね
ぜっ た い だ れ に も わ か ん な い
ま ほ う の こ と ば を お し え て あ げ る
ぼ く の ほ ん と の な ま え は こ の な か に あ る
ぼ く の ほ ん と の か ら だ も こ の な か に あ る
毎日
毎日毎日…毎日
謎夜 一回
一回、目を瞑ってあけると夜だった。
一回、目を瞑ってあけると朝だった
一回、目を瞑ってあけると夜だった。
それを瞬きと呼ぶんだと。
(謎夜 5804夜目より抜粋)
謎夜 間
こことここの間にここの間があってここの間とここの間に
ここの間があって
この間とこの間のところにこの間だ!があって
(謎夜 4809夜目より抜粋)
謎夜 一日
一回だけしてみる。
一回だけ息。
一回だけ歩く。
一回だけごはん。
一回だけ黄色。
一回だけ、夜。一回だけ私。
( 謎夜 7251夜目より抜粋)
謎夜 ちょっとうれしそうにする
誰かと思って振り向いたら誰もいなかった、誰かいた
振り向いたら誰もいなかった、誰かいた、誰もいなかった
誰かいた、誰もいなかった、誰かいたのに。
ちょっとうれしそうにする
誰かと思って振り向いたら誰もいなかった、誰かいた
(謎夜 2937夜目より抜粋)
僕の好き
人を好きになる時
息をするのと同じくらい
食事をするのと同じくらい
眠るのと同じくらい好きになる
ただそこにある好き
朝起きる、好き、ご飯を食べる、好き
仕事行く、好き、出かける、好き
仕事する、好き
音楽を聞く、お風呂入る、あなた好き
笑う、いらつく、座る、好き好き
話す、頷く、好き好き好き
好き好き
日常のあらゆる行為の間に好きが入ります
ご飯を食べるのと同じくらい好きだということは物凄いレベルです
日常に
新しく取り込んで違和感のない
日常なんて
あなたを好きだってことくらいしかない
行為
死ぬって事は夜寝るってことと、殺されるってことと、眼を瞑るってことと、殺すかもしれないってことと、黒と、他人と、壁と、叫び声と、そのうめき声と、空と、価値と、大きな黒い羽と何かの始まりを告げる鐘と、一人で居るってことと、あの角を曲がって、奥にある大きな家の庭に居る小さな子供と、側溝に潜んでいる愉快な愛想笑いと嬌声と、その声の中にあるものと、あったものと、壁の向こう側と、手の中に入るものの価値と、昨日会った友人に今日も会ったってことと、今日会った友人に明日も会うってことと、その次の日も、次の次の日もあうって事と、その次の次の次の日も会うって事と生きるってことと、朝起きるってことと、眼を凝らすってことと殺されるかもしれないってことと、遠くを見るって事と、呑むってことと、他人や知人と大勢で居るってこと、水と、慟哭と、膂力(リョリョク)と、期待と、どこへでも行ける道の先にあるものと、その道から枝分かれしていてどこかで終わる道と、いつも同じ夢を見るってことと、歩くって事と、ご飯をたくさん食べる、しなやかに走るってこととあまりちがわない
しゃなな
彼は音楽が好きだった
音楽が大好きだったな
彼はお酒も好きで煙草も好きだった
本当に楽しそうに居酒屋の机を叩きながら笑うんだ
どれだけ楽しそうに笑っているときでも
みんなが笑っているかチェックする
優しい癖が僕は怖かった
次に会ったら何をしよう。
彼はお酒が好きだった
お酒が大好きだったな
彼は煙草も好きで音楽も好きだった
煙草の煙でその場をうまく包んだり
煙草の煙で距離をあやふやにしたり
色んな吸い方をしたもんだ。
彼は煙草が好きだった
煙草が大好きだったな
彼は音楽が好きでお酒も好きだった。
いつも自分のことを後回し。
ずっと人を楽しませることを考えていた。
彼が作った作品や彼が作った音楽は彼が作ったおもてなし。
それはそれはとても居心地がよく、あたたかく。
人が大好きな彼のこと
僕も大好きだった
次会ったときに何をしよう。
これは聞いておきたいな。
あっちとこっちどっちが楽しい?
あっちのルールは知らないけれど
こっちよりも自由な感じがしている。
色も匂いも感情もきちんと全部あるのかしら?
この世界はあなたのものになりました
あなたはもう海や風や石ころです
誰かによってどうとでも捉えてしまえる存在です。
まだ世界を僕のものにしていない僕は。
怖くもありうらやましくもあるその世界を想うときあなたも思い出すことを
とても心地よく思います。
有難う。
「世の中の女性全員にお返しをするために
3月14日に生まれたんじゃないですか?」
っていったときのうれしそうな顔が昨日からぐるぐる回ってる。
賭けは僕の勝ちでしょう。
そっちで良い人見つけてるのかもしれないけど。
ではまた今度、飲みましょう。
リズム
とんとんとんとん。
とん とん とん とん とん とん
ちゃ ちゃ ちゃ ちゃ ちゃ
とーん とーん とーん とーん とーん
ちゃ ちゃ ちゃ ちゃ ちゃ ちゃ ちゃ ちゃーーん
とんちんとんとんちんとんとんちんとんとんちんとん
く く く
ばん。ドン、ダ トトツ・ツッテット
だだ 駄々 度度
どど だだ 打々
ガーン 癌 ガーーーン
がーん 眼 バーーーーン
音楽が無い世界の話
世界に音楽が無かったら、
世界はもっとつまらない/と思う。
魔法使いが現れて、
音楽という概念を世界から消してしまったら、
もしくは僕らの文明が滅んだあと/の/次の人類が、音楽という発明をし損ねたとしたら、
平均律の発明もロックの興奮も何も無かったら、
今よりも随分毎日くたびれてしまうと思う。
それに世界に音楽がなかったら、
僕の言葉ももっとつまらない/かもしれない
どしたの?
なんもないよ(優しく語尾上げ)
なに考えてるの?
でももし、世界に音楽という概念がなくても、
毎日は偶然の音楽で
人間の自然な姿として
世界のあり方として。
音楽って概念がなくてもみんな音を奏でて歌ってる気がする
音は世界の状況で、つまりは僕の日常で。
歌詞も世界の状況で、つまりは僕らの日常で。
毎日音の中で歌って暮らしてる。今も。たぶん…。
世界が音楽だとしたら、人の声はもう歌。
生きることは歌うこと。
音楽に言葉を預けて飛ばしてみる。
毎日を死ぬまで繰り返すように。
この歌はどこまで届くのか
世界は翻訳する必要がない。
音楽がそのまま心に響くように。
あるものをあるがまま受け入れる。
毎日を死ぬまで繰り返しながら。
何考えてるの?
何もないよ
幸せだから歌うんじゃなくて、歌うから幸せで
歌も音楽も世界と身体でできている
ソムリエのナンパ
お姉さんはフルボディですか?
あぁ だったら僕とよく合うと思います
テイスティングしてもいいですか?
胡麻とほうれん草の倦怠期
ねぇ。・・・次はいつ和えるの?
貴女とボク
貴女と僕との間にはどれだけもがこうが越えられない壁がある
お願いそれを解らないフリをしてほしい
自画像
その頃の僕は図画工作の「図」と言う字にどうしても納得いかずに
それを見るたびに目を回して保険室に運ばれていた。
漢字って、僕が思っているよりも遥かに多くの秘密を抱えているんだと思う。
自画像
背中を押されると自分は誰よりも大きな口を開ける
吸い込むわけではなく
飲み込むわけでもなく
何か入ってくるのを待つのではなく
そうすると気持ちが良い以外の理由はまだ分からない
自画像
現在まで云ってきたことをもしも僕が裏切ったなら
どうか あなたが裁かれたい方法で 僕を裁いてください
gyorogyoro廻廻
こそこそこそこそ。
かさこそかさこそ
かさかさかさかさ
こそかさかさこそ
そこここかさこそ
ここそここそこそ
ここどこがさごそ
ここそこがたごと
とことこいまどこ
ここここいまここ
そここここそそこ
かさがたどこごと
ごろごろとことこ
ごとひそどこひそ
そこかしこかさこそ
そろそろかささそ
アメフリヒソヒソ
トンプソンと街について
自分で自分の街の地図を描く。
大体このくらい。
両手で抱えられるくらいの大きさしかない。
人間がやってることは人間にしか理解出来ないし、
人間には人間の時間があるように、
猫には猫の時間とルールが、
鯨には鯨の時間とルールがそれぞれあるように、
僕たちダンサーの世界には僕たちにしか分からないルールがあって、
その中で僕たちの時間が流れている。
僕の地図。僕の描いた僕の住んでる街。僕の踊る街。
街の東には月があって、
ごつごつしたクレータの底で
地球を見ながら星と踊れるなかなかいい場所。
西には大きな壁があって
壁にはたくさん魚が住んでいて
楽しく躍れる結構いい場所
北には空に昇れる階段があって
重力なんか気にせずに雲で踊れて、
南にはブリキのおもちゃで出来た通りがあって、
音楽に溢れて賑やかに踊れる相当いい場所。
街の真ん中にはニューヨーク。
やっぱりそこにはたくさんのダンサーがいて、
どのダンサーに聞いてもトンプソンが一番だってことになってて。
そんな奴らと一緒に踊って、
今日の夜はトンプソンだったねなんて話をして。また踊る。
両手で抱えきれても、
一生じゃ踊りきれないんじゃないかなってくらいの大きさの
自分で描いた街。
その街でもうずっと踊ってる、みたいな感覚で生きてる。
たまに、自分の書いた地図から自分がはみ出る瞬間があるんだよな。
地図のどこにも載ってない場所で踊ってる。
世界の果て?真ん中?
世界も何もない。時間も何もない場所。そこで踊ってる。
そんな夜はトンプソンなんだな。
気付いたら「そこ」にいる。
…何回地図を書き直しても、地図には載せられない場所。
それもトンプソン。
そこに行くために踊ってる気もする。
トンプソンは伝説のダンサー、
トンプソンはダンスはそんなに上手くないけど
むちゃくちゃ可愛い一目ぼれした女の子
トンプソンはもう一人の自分、
トンプソンは上手く踊れた夜のこと。
トンプソンは何でもいい。
自分がもっと踊るための理由。
もっと踊りたい自分が踊るための全て。
僕とパンツとトンプソン。
僕は照れ屋で、恥ずかしがり屋。
それもいいけど素直にならないと手が届かない場所がある。
そんな気持ちもトンプソン。
できれば明日もトンプソン。
昨日は踊ってたっけ?
あれは一昨日だっけ?
さっきのことだっけ?
もう何年も何年もずっと踊ってる気がする。
何年も何年も。そんなに生きてないのに。
何がほんとのことだっけ?何で踊ってるんだっけ?
これって、もしかしたら、
ほんの短い時間のとても少しの間だけの話かもしれない。
今日は何を踊ろうか。
グリーンサラダのシンプルな素直さを踊る。
フランスパンが乾燥しないために踊る
太陽に毛布を掛けるような気遣いで踊る
太陽と同じスピードで自転車をこいだら昼間が終わらないんじゃないか説。
それでは聞いてください。太陽と同じ速さで踊る俺。
僕の残した踊りは、この後誰かが踊るのかなぁ?
無理だろうな。
だってこの瞬間は
雑音が全部消えてなくなるくらい
圧倒的に自分のものなんだ。
あとどれくらい踊れるんだろう。
何年?何カ月?
手の届かないことはある。
何年?何カ月?何日?今日で最後?
そしたら、泣けてくるけど。それもそれでトンプソン。
こうやってさ。身体もどんどん動かなくなっていく。
でも、そんな今もトンプソンなんだ。
いつでもトンプソン。
出来れば毎日トンプソン
だったなって思いたいんだ
ほとんどカツオ節
ほとんどカツオ節ですよ
ほとんどカツオ節ですよ
それがね バラの香りのする カツオ節だとしたら
ぺーちゃんの歌
ぺーちゃんは優しい
ぺーちゃんは嬉しい
ぺーちゃんは綺麗だ
ぺーちゃんは美しい
ぺーちゃんは ぺーちゃんは いつも体が弱いけど
ぺーちゃんはぺーちゃんはぺーちゃんが大好き。
或る晩に
魚の骨を食べました。
魚のほーねを食べました。
月夜の晩に魚の骨を たーべ たーべ 食べました
月夜の晩に みんなと一緒に 魚の骨を 食べました。
たーべ たーべ 食べました。
いつもの水を飲みました
いつものみーずを飲みました
眠りに落ちる 少し手前に のーみ のーみ 飲みました
不思議な晩の 素敵な月と いつもの水を飲みました
のーみ のーみ 飲みました
星の涙と人の言葉でねじれた気持ちを超えました
こーえこーえ 超えました。
存在の詩
涙 伝う 頬 心 揺れるよ。
言葉と 空と 人、朽ち、 土くれ
彷徨う夜に お前は 目覚める
我は 面影。 一人の面影
声が届かぬ 身体も動かぬ。
いつかの未知も 月の気遣いも
眠る時間と 触れる たどたどし
私は ここで 息吹き 舞い踊る。
足を止めぬというお前は、
傷つくことが 怖い小さな個
項垂れ、誇り、歩き、立ち止まる。
ここは人が住む、最果ての場所
味噌
味噌をかうんかい
味噌かい
味噌をかうんかい
味噌かい
愛想笑いでとかすんかい
(こっそりひっそり味噌な夜)
味噌をかうんかい
味噌で遊ぶんかい
味噌を塗るんかい
(ひっそりうっとり味噌姉妹)
味噌にぶつかりジョギングかい
(聖書は言う。最初に味噌はなまるき)
味噌を踏むんかい
(たった1ミリの味噌だとしても)
味噌を踏むんかい
(私たちは味噌を信じる)
味噌で想いを伝えんかい
(ポワンカレ味噌予想)
味噌を割るんかい
(みっそりみみみ☆味噌パレス)
味噌を味噌とも思わぬ輩
(今年最高の味噌除菌)
味噌で味噌を洗うんかい
(ぽっかり空いた味噌の穴)
味噌でいいんかい
(モッサモッサーの戦いにおける味噌の役割とは)
味噌でいいなら大事にしたらんかい
(モッサモッサーの戦いにおける味噌の役割とは2)
設置する音楽
月曜日はいのちをいただくことにする
火曜日はことばをいただくことにする
水曜日はおんどをいただくことにする
木曜日はかげをいただくことにする
金曜日はいみをいただくことにする
土曜日はじかんをいただくことにする
日曜日は全てを捧げることにする
【書かない長編シリーズ①】
「おばさんのハーパン」
そのおばさんのハーパンはかなりきつかった。
「ねぇ、おばさんハーパンやめなよ」
少年たちはおばさんをバカにした。
おばさんがハーパンしか履かない理由も知らずに。
引きこもりの中年おじさんが、引きこもりを辞めて語る真実とは。
空き地にある桜の大木と、埋め立てが進まない新藤池との関連とは。
まさかの感動、おばさんハーパン奇譚!ここに誕生。
鯨夢
彩
月
水
森
鳥
俺たちは月の中の森
俺たちは水の中の鳥
いま 鯨の夢を見ている
貝舐め
貝舐めをしたあとのノートは5月の葉っぱで始まった。
5月の香り、5月の光とツツジの腕章。
まだ早い紫陽花の鼓動。5月の木漏れ日。
貝舐めの前に買い出しにいかなくちゃという私を皆、
manannan mnnaaann nnnaaman
という目で見てくる。
とっておきの風を着込んで。幾何学模様に誘われて
夜空に鷹はもういない。
黄色い歩調で外に出る。
薄暗くなったあと7日も前の夢を拾う
tatoontesten totenstenoat tentosoatent
ってなってな。ってなってな。
夢はこれをつぶやいた。
tatoontesten totenstenoat tentosoatent
「貝舐めずりははしたないのですよ」
母に言われた言葉を思い出す
庭の土を掘り起こす 下味のついた音符たち 賑やかに
kyosutef tefsukyo suyoketef jijiji ijijiji poranntyos
[ 日々の ひび割れ 昏きもの ]
〔走るものは知るもの 強きもの〕
だんじゃり水後の湧き出た水は私にも歌うように言った。
少しもたつくと
「時間だって寂しいのよ。ほんとよ。」
声が聞こえた。
貝舐めまであと5日ある。
妖怪たちへ
ここには血と肉があります。
満足ですか?
ここは人間の言葉で日本と言います。
今はそう言います。
日本では毎年行方不明者が出ています。
おいしいですか?
そもそも妖怪は人間を食べるって前提が間違ってますか?
僕たちが知ってる妖怪はいい妖怪もいて悪い妖怪もいて
みんな悩んだりもしていて。
あっ。僕たちが妖怪を知ってるのはお話の中で描かれているからです。
お話の中で妖怪は大活躍してます。
知ってますか?
あれは人間が描いた妖怪なのかな?
妖怪が描いてる妖怪なのかな?
全然本当のことはわからないけれど、
いくつかは凄く良くできていてつくり話とは思えないんです。
僕たちは妖怪のことどれくらい知ってますか?
僕たちの知ってるどれが本当ですか?
名前だけですか?
名前も人間が付けただけですか?
出来ればちょっとでも本当のこと知ってから死にたいなと思います。
闇が好きなんですか?
好きとかって気持ちあります?
そもそもこの、妖怪は感情があって人間に興味を持っているモノもいるはずだという前提でのお手紙は煩わしいですか?
この考え方自体がとても人間らしいかもしれません。
分かりたいって欲求は人間だけのものでしょうか?
なんだ?僕も今日なんでこういうことを知りたいと思うのか分かりません。
いつもちょっと離れたところにあなたたちが居る気がしてるんです。
今日はその距離が、距離というか妖怪と僕との間にあるねじれが
少ないように思えるんです。
たまにそういう日があります。新月の晩とか。真っ暗に近いと。
でも、そういうときは怖くて心臓がどきどきしてるので
なかなか冷静に言葉が出てこないんです。
今日は暗くもないのになんかあなたたちに話しかけたいくらい
近くに感じています。
人間は限界なんか無いように色んなことをしていきます。
できないことなんてないように見えます。
でもただ人間に出来ることをたくさんやっているだけなんですよね。
どう思ってますか?
僕はあなたのことが知りたいです。
だからあなたの意見が知りたいです。
あっあなたでいいですか?
あなた方の方がいいですか?
さっきから何度も言ってるから今更かな?
人間がやってることどう思ってるかなぁ。
笑っちゃいますか?何も思いませんか?
こうやって言葉に残しておくと妖怪の中のインテリ?が
読んだりして、目の前に現れたりしてくれるといいな。
この国には妖怪が描いたとされる手紙がお寺に残っていたりします。
今はメールも打てるのかな?
僕だけ知らないだけでみんな妖怪と仲良くしてるのかな?
だとしたら僕だけ仲良い妖怪が居ないのはなんでなんだろう?
信じ方が足りないのかな?
人間だけの場所に居ると人間がよくわかりません。
だから、妖怪のあなたから見て人間がどう見えるのかお話を聞くことで
今までと違う人間のカタチが知りたいんだと思います。
僕は人を愛しています。今までと違う感覚で。
今までと違う感覚すぎてその人が人間かわかりません。
僕は人間らしくできてるかな?
こういうことは人間は思わないのでしょうか?
妖怪にこの話を聞いてほしかったです。
どう思ったのかなー。
素直にまっすぐ生きることができたらと思います。
そう素直に思えている今はやはり今までと違う今です。
僕も人間かわかりません。
でも人間かわからなくても人間かわからないものを愛していて
多分これは人間だけの感情じゃないと思うんだよなぁ。
だから妖怪に話しかけました。
深海の咬ませ犬と泥棒髭のアダージョ
その年は不思議な年だった。不思議なことが起こった年だった。
ここ百年のツケが回ってきたような気候変動による災害の多発、世界的政治情勢の不安。
みんながみんな望んでいるものとは少し以上ずれた生活を抱えて…みんなが少し疲れていた。疲れていることに気づかないほどに。
そういう時はまともにものを考えることができない。みんな不思議と言いたいことを我慢して、目の前の、まずみんなで協力して取り除くべきである問題を無視して、また明日も、それなりの日が続くだろう、それなりの日が続いていくうちに自分は朽ち果てるだろう。そう思っていた。
そう思い込もうとしていた。
このままではいけないと躍起になっているものももちろんいた。
でもその声は大きなうねりとならなかった。
みんながワンサイズ小さい下着を履いているみたいに、常に、気持ち悪さと居心地の悪さを感じていた年だった。
その年、世界の色んな場所で、大きなサメを背負った人間の姿が目撃された。最初の月から、最後の月まで、ひっきりなしに。
男の場合もあれば女の場合もあり、年老いている場合もあれば、ほんの子供の場合もあったし、一週間何もないこともあれば、1日に5か所現れることもあった。
サメは人がとても一人で持てる大きさではなくて。
8メートルだったり。10メートルだったりするのが常だった。
でも、それを一人で担いでる人間の姿が色んな場所で目撃される。
その土地で一番人目に付くところにつくと。サメを担いだ人間はサメを青い棒にさし、旗のように掲げその土地から去った。
サメは見た目から判断すると腐っていた。もうすぐで、崩れ落ちそうなほど。また不思議なことに、でも、全く匂いは無かった。
サメは現れた次の日きまって消えた。8メートルや10メートルのサメたちがすべて。
サメが消えたときのことは誰も覚えていない。正確にいうと、誰も見ていないのだ。
その場にたくさんの人がいたにもかかわらず。大きなサメは跡形もなく消えた。事実として。
全員の意識の盲点を突くような消え方で。信じられないかもしれないが、何百人の群衆が居て、何台のカメラがあったとして、みんな誰も、消える瞬間をとらえられなかった。だから、この年は不思議な年だった。
サメのうわさは年の始めにはもう世界中で広がっていた。
ただサメが飾られなかった地域の人間が騒ぎ立てるほどには、
実際に居た人間やその土地の人間にはパニックは無く。
「あれはあの日だけこの街に必要だった」
「それはそうでしょ。消えるものだもの。」
とみんなが思ったそうだ。そう思った理由を聞いても誰も説明はできなかったけれど。
サメを置いたニンゲンは各地にメッセージを残した。
あなたはそれを見た?これはほんとにあったこと。
我々は深海に潜った咬ませ犬。何も咬めない動けない。
あとは待つだけ、祈るだけ
でも我々は深海に潜った咬ませ犬
海には海の陸には陸の光を抱えて歌うだけ
そのサメは、誰も見たことが無いカタチをしていた。
サメのような恐竜のような四本足のようなものもあり動物のような形をして。
サメなのに身体から毛が生えて。角があって。
これはほんとにあったこと。あなたはそれを見た。
アダージョを歌うあなたをとがめない
あとは待つだけ、祈るだけ
でも誰かにこっそり盗まれぬよう あなたに見えない 楽しみを
泥棒髭を生やしましょう
深海の咬ませ犬と、泥棒髭のアダージョ。
サメが置かれた全ての場所にそう書かれていて。
観たものはなんとなく、その言葉の意味が分かった。
頭で理解するのではなく、体験として、そのサメと言葉の持つ意味が感情に近いカタチで身体に入ってきたんだ。体験してしまったら、もう前には戻れない。
サメのニュースは、実物を観ずにいたものには、
ただの一つのよくわからないニュースとして、忘れ去られていき、
実際に観たものも、徐々に忘れていった。でも思考と身体に爪痕は残る。
記憶にはのぼらない、穏やかで永続的な爪痕が。
この年を境に、人間は少しづつ意味のないことをするのをやめた。
好きなことを自然と選択できるようになった。
サメと関係あるのかわからない。彼らが何だったのかもわからない。
分かっているのは、深海の咬ませ犬と泥棒髭のアダージョという言葉を
知らない人は、今、いない。
あいさつと同じくらい。世界のどの国でも、毎日使われている言葉となった。
そして、その年、全世界の人々が、同じ夢を見た日があった。
自分のコト
じゃあ行ってくるねとあなたは言う
わたしは 心臓の音を数え始める
あなたにまた会うまでの心臓の音を
あたなにまた会うために心臓の音を
なるべくあなたの姿を見ながら
心臓の音を意識しないでいたい
二人で居るときは何故か気にもならない心臓の音。
一人でいる時間 私は心臓の音ばかりを数えてる
次会う時まで止まらないように。
1.2.3.4.5.6.7.
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プロフィール
久世孝臣・・・詩人・演出家、創作集団ナズ・ラヴィ・エ主催。
http://kuzetakaomi.weebly.com/
主に詩作と舞台作品の演出・脚本を手がける。
近年は言葉を使った立体作品の発表も行うなど活動の幅を広げる。
10代のころより、串田和美、佐藤信の作品に参加。同時期に詩作も始める。
場所や参加する人間の表現ジャンルを問わない境界線を超えた共同制作を得意とし、それぞれの良さを活かしつつ確固たる一つの世界を構築する。
詩人として、現代音楽家、市川ロ数とのユニット「言音(ことね)」を結成。言葉と音楽の新しい到達点、融解点を提示する作品を発表している他、自身の幻想連作短編詩「謎夜」を音楽家の演奏とともに朗読するLIVEを不定期に開催。
舞台作品においても詩作においても、自身が掲げる「身体性を持つ言葉」を駆使し、表現における言葉の可能性、言葉が提示出来る意味の領域の拡張を目指し、名前のない感情がたくさん見つかる作品を創作している。
その他の主な活動として2015年より、ニコニコ動画にて放送中の漫画家山田玲司氏がホストを務める人気番組「山田玲司のヤングサンデー」レギュラー出演中。
https://ch.nicovideo.jp/yamadareiji
シルク・ドゥ・ソレイユで活躍したダンサー、熊谷拓明が主宰する「踊る熊谷拓明カンパニー」の演出助手・脚本補佐を務めている。
◆お問い合わせ先
takaomiomi@gmail.com
◆Twitter
@waraukuze
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最後にお願い
以上が5月31日の朗読会で読む予定の詩、全文になります。
冒頭でも言いましたが、この配信LIVEは投げ銭制です。
で、ライブでやる詩もここに全文無料公開している。
このnoteはこのあと一つの詩をボーナストラックとして掲載し、体裁として、投げ銭用に販売しています。
詩の全文を読んで、または、ライブを観て感心してくれた人。チケット代代わりに購入ください。
金額は1000円〜。noteは追加で支援もできるので、いくらでも自分が価値を感じた分だけ存分に。
よろしくお願いいたします。
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