毛皮を履いた椅子の話し

また気持ち良いやつ描けました。


ゾッとするような不思議な手触り。

   
 
新年二つ目は

「毛皮を履いた椅子の話し」

毛皮を履いた椅子が部屋の中に居た。
 
  

大きな部屋に一人で住んでいる。
 
 

その椅子は毛皮に覆われたひとつの足を持ち上げて窓を開けた。
 
 

人間たちをみているようにみえた。
 
 

なんでわかるの?占いで私やっぱり言われたことがあって
 
 
 

駅から遠いけど広い方がいいんだよね
 
 

 

最悪
 
 

さまざまな人間の声に合わせて

毛皮を履いた椅子は、足を器用に動かして音を立て続けに鳴らしこちらをみた。
 

話しているのか思っているのかそれとも両方か。
 
 

毛皮を履いた椅子は背もたれをそりかえして後ろに傾き、円を描くように足を後ろから順に右回りで落としていった。
 
 

回転の速度は一定ではない。
 
 

歌っているのか踊っているのかそれともそれの両方か。
 
 

もしその椅子が知能も何もかも人間と何も変わらなかったら
 
 

私は椅子をどう呼ぶだろう。
 
 

目の前に毛皮が一枚ずり落ちた
 
 

それを手に取るべきか足がすくんで動けない
 
 

答えがまだ見えないままに身体をねじると名前のない動きになった。
 
 

彼からみると、これも話しているのか、思っているのか、泣いているのか、笑っているのか、怒っているのか、楽しいなのか、それともそれの全部か。
 
 

わからないだろう。
 
 

私が混沌のまま立ち上がると毛皮を履いた椅子は、一歩こちらに近づいた。
 
 

決断が始まる。
 
 
(終わり)

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久世孝臣(詩人・演出家)
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