幼児の吃音の話④DCMとリッカムプログラムって何?(中編)
前編ではDCMの話をしましたが、今回はリッカムプログラムの紹介です。
このリッカムプログラム、吃音の世界においてかなり異色なプログラムになっています。といいますのも、今まで紹介した環境調整法やDCMは「吃音が出ていることをお子さんには敢えて伝える必要はない」というスタンスでした。誤解のないように伝えますと、これは「吃音があることを本人に気づかせるべきではない」ということではありません。吃音に関してオープンに話し合ってもちろんいいのですが、大人が敢えて吃音の指摘をしてコミュニケーションを遮るのはやめましょう、ということです。
ところがこのリッカムプログラムは一転、子どもに吃音が出たことを指摘して気づかせる内容になっています。
もちろん、闇雲に伝えるのではなく、きちんとしたルールに則って行います。
リッカムプログラムの実施方法
リッカムプログラムは、ざっくり説明しますと以下のようなものです。
①毎日15分のおうちトレーニングを親子で行う
②週に1回の言語聴覚士との面談を行う
③おうちトレーニングの最中、子どもに吃音が出ているかどうかを親が観察し、それを子どもに伝える(言語的随伴刺激)
④1日を通しての吃音の出方を観察し、評価する(重症度評価)
①について、リッカムプログラムはDCMと同じく、おうちトレーニングを軸とした指導法です。言語聴覚士がお子さんに直接指導するのでなく、毎日の指導は親が行います。DCMは週に5日以上でしたが、リッカムでは毎日となっています。
②について、海外版のプログラムでは週に1回の言語聴覚士との面談が義務付けられています。そこで行うのは、親御さんへの指導がメインです。おうちトレーニングの方法は適切か、内容はどうか、子どもの吃音症状はどう変化しているかなどなど、言語聴覚士からフィードバックをもらいます。なお週に1回の指導は、吃音の改善に合わせ、徐々に頻度が少なくなっていきます。
③について、ここが今までの吃音指導と大きく違うところです。子どもがトレーニングの最中、吃音がなく綺麗に話せた瞬間に「今スラスラお話できたね」「上手に話せたね」などと、吃音が出なかったことを褒める言葉がけをします。また吃音が出たときには「今ちょっとでこぼこした話し方だったね」「今ちょっとつっかえたね」といった風に、ネガティブな言葉をフィードバックとして与えます。このポジティブ・ネガティブな声かけフィードバックのことを「言語的随伴刺激」といいます。
リッカム以外の指導法では、子どもの吃音について敢えての指摘はしないという考え方が主流でした。それが、リッカムプログラムでは敢えて指摘していこうという内容になっています。
この言語的随伴刺激ですが、闇雲に与えていいものではありません。厳格なルールがあり、ある一定の条件の元にポジティブ・ネガティブの刺激を与えることになっています。ですので、ただ吃音の有無を知らせてあげたらいい、という単純なやり方にはなりません。そのため言語聴覚士に頻回に面会しながら学んでいくことになります。
④について、毎日のお子さんの吃音症状を観察し、その日1日の吃音の重症度を親が記録していきます。0−9の10段階の数字で評価するのですが、「これくらいの吃音だと重症度3」といったふうに、評価の仕方を言語聴覚士から学びます。
リッカムプログラムの注意点
今回はリッカムプログラムについてご紹介しました。このプログラムは「行動療法」という心理学をベースに作られています。そのため、言語聴覚士の指導を受けながら、二人三脚で行っていくことが強く推奨されます。指導を受けずに、インターネットなどで調べた知識だけで勝手に行ってしまうと、吃音の悪化につながる恐れもありますため、注意が必要です。
2回にわけてDCMとリッカムプログラムを紹介してきました。次回はこれらの指導法の長所・短所についてご案内します。
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