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次の世代へのバトンパスの一助になれたら。

関係の良くなかった父を看取った際の後悔がきっかけとなって、大切な人へ気持ちを伝える冊子“ハート・ハグ”製作を始めたのですが、1件1件がとても尊く、ライフワークとして続ける意義を感じています。

メッセージギフト、ハート・ハグは、自分の心と相手の心を、優しくしっかり抱きしめて欲しい、という気持ちで名づけたのですが、雑談インタビューを通して大切な人への想いを聞き取り、書きまとめて冊子にするサービスです。


ハート・ハグ製作趣旨

“いつでも言える”と思っていたことが、突然言えなくなった、という経験から、後々の憂いを断つために、グリーフ・ケア(大切な人を失った後の喪失感のケア)の事前版とでもいう位置づけが最初の趣旨だったんですが。

子育てを振り返り、お子さんへの気持ちを伝えることにも大きな意義があるのではと思い、こちらのサービスも始めてみることにしました。

妊娠、出産、これまでの育児を振り返るインタビュー

雑談インタビューでざっくばらんに、まずは妊娠から出産までを振り返ってもらったところ、まさに衝撃……、の一言でした。許可をいただいているので、実際の文面から当時の緊張も伝えられたらと思います。

まずは、素敵な名前の由来から。

妊娠が分かったものの、目に見えないお腹の中のこと。いつも通りに仕事をされていたら、知らずに無理が重なり、危険な状態に陥ってしまったそうで。

ただただ安静に、という入院生活。病室内の独特の沈黙と空気感に息が詰まるうえ、目に見えない自分の胎内の状態に不安が募る。

プロを含め誰にも予測できない今後の動向にさらに不安が増し、我慢できずにスマホで検索を始めてしまう……。

悪い結果がいろいろと目に入り、ネガティブな気持ちに常時支配され極限状態。ただただ祈る気持ちで、お腹の中の小さな命を育て続けた。

分娩室の空きやスタッフの勤務状況など、大人の事情で出産日時を決め、それが誕生日となることに抵抗があった、というお話は、その場で決断を迫られて初めて思い至ることだなぁ、と深く考えさせられました。

まさに科学と、それでは解き明かせない生命の神秘のぶつかり合いが感じられるというか。

その決定の締め切り間際に陣痛がスタートし、ノンストップで出産に至り、息子の意思を感じたというお母さまの感想は、科学偏重の世の中で、希望を感じるお話でした。

この他にも、何とか出産した時の、無事に生まれた安堵感。たくさんのチューブに繋がれた痛々しい息子を見ながら、何もできないもどかしさややるせなさ。締め付けられるような胸の苦しさ。

そして、退院までの、さらに続く不安と葛藤の日々を語ってくださいました。壮大なストーリーでした。

育児を通しての発見、喜び

文章を書くのが苦手と言う私の母が、昔、自分が投稿して掲載されたという新聞記事を見せてくれたことがありまして。

それは、私が小さい頃に発した純粋無垢な一言や、可愛らしい勘違い、ハッとさせられるような疑問などでした。

感受性豊かで独特な発想ができる期間というのは、未知から既知の世界へ移るまでのほんの短い間だけなんだよなぁ、と考えさせられました。

大人も心打たれるその美しい世界や不思議な感覚が、ただ流れていってしまってはもったいない!と思うようになりました。

こちらのお母さまも、普段の息子さんを見ていてハッとすることがあると教えてくださいました。

自分(母親)の行動をしっかり観察されていることに気付いたり、成長を実感したり、という毎日だそうです。

子育てを通してこんな発見があった、こんな出来事から自らの行動を振り返るようになった、子供の別個人としての人格に驚いた……など、本当に生き生きと語られるのを見て、目が回るほど忙しく、いろんなことを同時進行、ジャグリング状態の毎日の中で、実にいろいろな刺激を息子さんからもらっているんだなぁ、と感じました。

冊子完成後の感想

どういう反応があったのか気になったので、冊子を読んだ感想を伺ってみたところ。

まずは“家族間で泣いた”とのことでした。

当時はいろんな情報に振り回され、また目まぐるしく変わる状況に、立ち止まっている余裕がなかった。

改めて一連の流れを追ったら、それぞれの立場で息子・孫の命に係わる状況を思い悩んだ当時の日々が思い出され、グッとくるものがあったと。

ご主人やご両親の気持ちが、揺さぶられたようです。考えてみれば、長く一緒に戦った同志みたいなものですもんね。

お母さんと子供など親子向けに製作したものが、親と子だけでなく、横の関係(家族)からも反響があったことに驚きました。

将来のためになるのでは、と思うこと

父の葬儀の際、父方の伯父が、慎重で心配性だった父のあるエピソードを笑いながら話していました。

それは、私が母のお腹にいると分かった時のこと。父は「俺は2人の親になるのか。大変だ。どうしよう」と頭を抱えていたそうです。

父が、私達兄妹2人の命の重さを真剣に受け止め、守り育てる必死な覚悟をした瞬間なんだろうと感じ、涙が出そうになりました。

こういう話を聞くことで、自分の命を大切にする気持ち、また他の人の命の重さへの想像力も育まれるのではないか。

子供さんが男児の場合、母親の妊娠、出産のプロセスや当時の状況を知ることは、身体面、精神面、女性の人生に与えるインパクトの大きさの理解にも繋がるんじゃないか。

同時に、自分の人生に与える影響についての想像にも繋がるんじゃないか。

科学偏重についてこの記事にも書きましたが、人間はロボットのようにパーツを組み立てて作られる訳ではない。

全てにおいて人の受け止め方が機械的・体系的になって、硬直化してしまっている、そしてその状況で社会のいろいろなシステムが設計・運営されている世の中に、何とも言えない恐さを感じるんです。

生命を含めて、目に見えない掴みどころがない、でもとても大切なもの。そういうものに対して改めてよく考え、畏敬の念を持つ姿勢が大切だと思っています。

こちらのケースは、これまでの育児を振り返ってみたい、という内容で製作させていただいたのですが、18歳から結婚が認められるようになりましたし、例えば成人式に贈るなどすれば、思い出話をしつつ、将来設計について意見交換するきっかけになったりするのでは、と思っています。

男女どちらが大変か、とかそういった問題ではなく、性差と個々の違いについて認識し協力しあい、幸せな家庭を築くためにはどうすればいいか?を考える機会の提供になったら嬉しい。

私には子供はいませんが、いろんな条件の中、子供を持つ機会に恵まれた方々には、是非幸せな関係を次の世代へ繋いで欲しいと思います。

そのバトンパスの一助になれたら、こんな喜びはないなぁと思っています。

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