サマンサのような母が
【サマンサ】と書きましたが、私の記憶する母の姿は、奥様は魔女という昔の海外ドラマに出てくる、サマンサかと思うほど陰影がある、外国人風の顔をしていました。もちろん、家の中での様子も知っているので、その顔においてのON/OFFのギャップといったら・・・
陰影、まるでデーモン閣下のような厚化粧だったのです。聞けば、ノーズシャドーまでしっかりしていたらしい。
確かにクローゼット前には、色々な種類の筆、様々なコンパクトがあったよな。
その母が、ちょうど今の私の年齢だったころ、ある日を境にピタリと止めたのが【お化粧】。
どこまでを化粧と呼ぶのか談義はあるとして、ベースメイクの類を一切やめてしまいました。あの、懐かしのグラデーションが無いほどにくっきり分かれていた赤い頬も。
やはり、彼女がそう決意したのも、今は亡きお客様の姿だったようです。ご高齢でありながらも、透き通るような透明な肌、そのお肌の艶やかさに心から憧れをもったそうです。
お客様に尋ねました。その美肌の秘訣は?
お客様はにこやかに、『何もせんことよ』とおっしゃったとか。
もちろん、保湿をしたり、お肌を大切にする、年相応のお手入れはするのでしょうが、お化粧を一切されていないそのご婦人の素肌が、なんとも美しかったようです。
当時、シミだらけだった母は、その日を境に、あれほどまで塗りたくっていたファンデーションや色物の類を、一切やめてしまいました。
唯一、眉を書いてマスカラを塗る程度。本人曰く、ぼーっとした顔だからと。
顔にあった大きなシミはいつの間にか消え、今では黒い服で頬をこすって見せながら、お客様や取引先の若い衆に素肌自慢をしております。
かの五木寛之さんや、タモリさん、福山雅治さんなども【洗わない】健康法的な事を実践していると聞いたことがありますが、うちの母も、洗わないぐらいが丁度いい、といわんばかりに、シンプルに最低限だけのお肌メンテナンスを継続中です。
確かにあの年齢にしては、きめ細やかな肌であり、みずみずしい。美しさを積み重ねていくにはどうやら『意図して』、潔く『やめること』を決め、そしてそれを『継続し続ける事』、さらには年月を重ねる必要もあるみたいですね。私のように、3週間で痩せる本などを穴が開くほど読むだけではダメらしい・・
最後に、祭りの帰り道、サマンサ時代の母の写真とともに。