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会話スキルを育てたい! ②役割交代と情報統合

こんにちは!ことばのしごと さとうです。
言語聴覚士の私が、ことば・コミュニケーション・伝えかたなど
日常で使えるヒントをお伝えしています。

「会話力を育てたい」と言うテーマで
前回は、会話スキルの基礎となる力 4つのうち2つ。
ひとつは三角形の関係、共同注意
ふたつめに相手への興味と話したい・伝えたいという意欲
これが大事だよというお話をしました。

https://note.com/kotoba_suger/n/n6bf32cdb7043


今回は、後半の3つ目と4つ目のお話になります。
前回、大脳は大脳皮質とその奥の大脳辺縁系の
2層構造になっていると解説しました。

コミュニケーション意欲については
人間の本能的な部分、感情とか記憶については
大脳の奥(大脳辺縁系)と関連深いというお話をしましたが
本日お伝えする、後半の2つの要素に関しては
どちらかというと大脳の表面の部分、大脳皮質。
そこが、いわゆる認知機能と呼ばれる働き
発達障害のお子さんでいう発達特性を司る部分に
大いに関わってきます。

会話スキルの基礎③ 役割交代

3つ目は役割交代というチカラです。
これが難しいと
自分が話したいことだけをずっと話している
独演会のような状態になってしまいます。
会話というのは、よくキャッチボールに例えられます。
具体的に言うと「私が話します」「今度はあなたが話す番です」と
話し手と聞き手を交代することで会話は成り立っています。

ですが、実際にはそんなに簡単な構造ではなく
会話って2人だけじゃなくて、もっとたくさんの人と
複数の方々で話す場合もありますので
私からあなたあなたからAさん、
AさんからCさん、BさんからCさんみたいに
どんどん話す人が移り変わっていきますよね。
発達障害のお子さんはこのように
複数人が同時にワーッと、喋る場面が
苦手というパターンが多いようです。

例えば「昨日のサッカーの試合楽しかったね」とか
「テレビのあのアニメが楽しかったね」とか
みんなで喋ってるんだけど
あの人も、この人も、その人も喋っていて
俺はいつ話せるんだ?と
どこで話をしたらいいかわからないとか。
逆に、“このアニメのこのキャラクターがこう最高なんだよね!
っていうのはさ、あのセリフがさ…”のように
自分がワーッと話したいことばかりを話してしまい
他の人がしらけちゃう。ポカンとしちゃう。
ていうような状況や悩みが多いようです。

会話のキャッチボールを練習するには?

例えば
  お父さん「ただいま」      お母さん「◯◯ちゃんおかえりー」
  こども「パパ、ただいまー」    こども「おかえりー」
と言われた挨拶をそのまま返す、という悩みや相談もよくお聞きします。
帰ってきたら「ただいま」/ 家にいた人は「おかえり」
“立場が違うと役割が代わり、使う言葉も変わる“ということを
認識することが難しい場合にこのようなことが起こって
会話が噛み合わない、やりとりが円滑に進まない印象になります。

このように「会話の役割交代」が苦手な
神経発達症(発達障害)のお子さんは少なくありません。
このような「会話のやり取りが苦手」な場合には
最初は一対一の会話から、役割交代の練習をしていきます。
「話す」という役割の時に、相手は「聞く」という役割になります。
では次はそれがひっくり返って「話す」と「聞く」の役割を交代しますよね。
会話はよくキャッチボールで例えられますが
「投げる」役割と「受け取る」役割に似ていると思うんですね。

「私が今話してるから、あなたちょっと聞いてて」と
子どもの話を遮って制止するというのは、やや強引です。
というよりも最初は
役割を交代する遊びっていうのを
会話ではなく、遊びの中で「役割交代」の経験を積んでいきましょう。
積み木積みでも、危機一髪でも、トランプでもなんでもいいのですが
順番を交代して遊べるようになることから始めています。
「遊ぶ」「待つ」の役割を交代していく、ということですね。

会話の時に一方的に話し続けてしまうお子さんの場合
遊びの場面でも一方的になってしまって
相手の順番を待つのが苦手なパターンが多いんです。
必ずしも、ことばの課題ではない
遊びの場面(非言語課題 動作性課題)から
練習をスタートしていくことは大切です。

会話スキルの基礎④ 情報統合とイメージ力

四つ目は情報の統合とイメージ力です。
これが、会話の難しさを生み出す要素の最たるものです。

これは、ADHDのお子さんによく見られる話し方の特徴ですが
話題が次々変わって、話がまとまらないとか
会話の途中で他のことに気を取られ、話が中途半端になるとか
最後まで相手の話を聞くことも十分にできなかったりする。

会話の時には
相手の人が「今、何を伝えたいのか」ということを想像し
話の流れを情報統合して“今、こういう話の流れなんだな“ということを
つぶさに内容を追っていく。常に頭を使っているんです。
なので、情報を集め整理整頓するということを
常に会話の中ではやらないといけない、ということなんです。

情報をまとめながら会話支援

そういうときには「話の内容を整理する」
ということをしながら会話を進めていく支援をします。
例えば
「今 こういう話をして」「今 こうなってるよね」
「今 この話をしています」ということを
絵に書いたり、文字で書き記したりして
フローチャートや箇条書きなど、目に見える形にしながら
話のポイントをわかりやすく示すということをします。

放課後デイで行っていた
情報統合を目的とした会話練習の一例をいくつかご紹介します。
「ポケモンのキャラクターについてお話しよう」など
今日はこれについて話す、というテーマを設定します。
どのポケモンについて話すのか、を決めたら

“このポケモンは何タイプのポケモン?“
“どういうところが好きなの?“
“弱点はどこだろうね“    
“大きさはどれぐらいだろうね“とか
お子さんが、この話が好きだなっていうことを想像しながら
「ポケモン辞典」を2人でまとめていくんです。
だんだん、情報をまとめて内容を深めていく話し方に慣れてくると
今この話してたな、っていうふうに
話が脱線しても自力で戻すことが出来るなど、成長が感じられました。

3ヒントクイズという課題も、よく療育で使用されます。
選択肢の動物のカードが四つあって
「鼻が長いです」「リンゴが大好きです」「足が四つあります」
私は誰でしょう?と3つの言葉の情報を基にその答えを導き出す。
これは想像力が必要な課題です。

今、必要な力は何だろうということを
そのお子さんに合わせた必要な段階、必要な力を見極めて
どこを伸ばしていったらいいかということを考えていく。
そして、それを日常に活かせるようにしていけたらいいな
と思って日頃、お子さんたちと向き合っているのが私の日常です。

会話って複雑で難しい

さりげなく、私たちが日常行っている【会話】
これには、基礎となる様々な力が必要ですし
随時、情報を頭にインプットして
そして話をしながら、次の展開を想像し
あの人が言った、この人が言ったことをもとに
今度、自分の考えとや意見を述べていくことを繰り返す。
会話の多くには筋書きが無く
先が読めない場面というのも、非常に多いかなと思います。

会話が楽しめるというのは人間ならではの嗜みですし
人間関係を作る上でも、非常に大切だと思います。
会話力を育てる支援に、私はやりがいを感じております。
まだまだ勉強していきたいと思います。

ということで、また次回お会いしましょう。ありがとうございました。

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