見出し画像

31.17 ベクトルの初歩(数ベクトルの成分計算)

幾何ベクトルには和と実数倍が定義されていました。数ベクトルの場合はそれがどのようになるかという話をします。


ベクトルの成分計算

理屈を後回しにして、成分表示されたベクトルについての計算方法から始めます。否、先に理屈が知りたいという人は、上の目次の「数ベクトルの性質について」をクリックして飛んでください。


数ベクトルの性質
$${\vec{a}=(a_1, a_2), \: \vec{b}=(b_1, b_2)}$$について次が成り立つ:
  (1)  $${\vec{a}=\vec{b} \iff a_1=b_1, \: a_2=b_2}$$
  (2)  $${\vec{a}+\vec{b}=(a_1+b_1, \: a_2+b_2)}$$
    $${\vec{a}-\vec{b}=(a_1-b_1, \: a_2-b_2)}$$
  (3)  $${k\vec{a}=(ka_1, ka_2) \:\: (k\in \mathbb{R})}$$ ▮

これらに共通しているのは、第1成分は第1成分、第2成分は第2成分で考えるということです。計算ができるようになったら、理屈を知りましょう。そうすることで理解が深くなります。

では具体的に見てみます。

例1(ベクトルの相当)$${\vec{a}=(x, -3), \: \vec{b}=(1, y)}$$のとき、
  $${\vec{a}=\vec{b}}$$ ならば $${x=1, \: y=-3}$$です。


例2(ベクトルの和と実数倍)
$${\vec{a}=(2, -3), \: \vec{b}=(-1, 2)}$$のとき

 (1)  $${\vec{a}+\vec{b}=\dbinom{2}{-3}+\dbinom{-1}{2}=\dbinom{2+(-1)}{(-3)+2}=\dbinom{1}{-1}.}$$

  よって、$${\vec{a}+\vec{b}=(1, -1).}$$

数の対応を見やすくするために、ベクトルを縦に並べました(※1)。
この場合は答えを書き直す必要がありますが、間違えるよりは良いかと思います。もちろん
       $${\vec{a}+\vec{b}=(2, -3)+(-1, 2)=(1, -1)}$$
でも構いません。


 (2)  $${2\vec{a}-3\vec{b}=2\dbinom{2}{-3}-3\dbinom{-1}{2}=\dbinom{4}{-6}+\dbinom{3}{-6}=\dbinom{7}{-12}.}$$

  よって、$${\vec{a}+\vec{b}=(7, -12).}$$

注:上では (-3)倍しましたが、そうではなく、次のようにも計算できます。

 (2)’  $${2\vec{a}-3\vec{b}=2\dbinom{2}{-3}-3\dbinom{-1}{2}=\dbinom{4}{-6}-\dbinom{-3}{6}=\dbinom{7}{-12}.}$$

(2) と (2)' のどちらを採用するかは好みです。 正しく導ければいいのです。


 (3)  $${3(\vec{a}-\vec{b})=3\big(\dbinom{2}{-3}-\dbinom{-1}{2}\big)=3\dbinom{3}{-5}=\dbinom{9}{-15}.}$$

  よって、$${\vec{a}+\vec{b}=(9, -15).}$$


ついでに、前回の復習もしましょう。

 (4)  $${|\vec{a}+3\vec{b}|=\Big|\dbinom{2}{-3}+3\dbinom{-1}{2}\Big|=\Big|\dbinom{-1}{3}\Big|=\sqrt{(-1)^2+3^2}=\sqrt{10}.}$$

  よって、$${|\vec{a}+3\vec{b}|=\sqrt{10}.}$$ ▮


計算練習

$${\vec{a}=(1, \: 5), \: \vec{b}=(3, -4)}$$のとき、次を計算せよ。
(1)  $${\vec{a}+\vec{b}}$$   (2)  $${3\vec{a}-3\vec{b}}$$   (3)  $${|3\vec{a}+2\vec{b}|}$$





ここから先は

1,576字
この記事のみ ¥ 100

安心して創作活動が続けられるよう応援してくださると助かります。いただいたチップは書籍もしくは文具の購入に当てたいと思います。