31.24 ベクトルの初歩(空間内の数ベクトル 応用例)
空間内の数ベクトルの代表的な応用例を紹介します。説明をしなくても解けなくはないので、解説を読む前に、解き方を考えてみてください。
当初は演習にしようと思っていたのですが、初見で解くのはかなり大変かと思うので、例題を設けることにしました。代表的なものを選んだので理解を深めるのにも良いかと思います。
どのように考えているのかをつかむようにしてください。そうすることで、いろいろな問題が自力で解けるようになれます。
例題1(内分点と重心)
原点Oと3点$${\text{A}(-2,5,2), \: \text{B}(0,-1,3), \: \text{C}(5,-1,1)}$$がある.このとき次の点の座標を求めよ.
(1) 線分OAの中点M
(2) 三角形△ABCの重心G
(3) GMを3:2に内分する点P
解説 座標を求めたいので、始点を原点としたベクトルで考えます。これによって、点Aの座標が$${\text{A}(-2,5,2)}$$だったら、$${\overrightarrow{OA}=(-2,\:5,\:2)}$$と書けるからです。
(1) $${\overrightarrow{OM}=\dfrac{1}{\:2\:}\overrightarrow{OA}}$$より
$${\overrightarrow{OM}=\dfrac{1}{\:2\:}\overrightarrow{OA}=\dfrac{1}{\:2\:}(-2,\:5,\:2)=(-1,\:\dfrac{5}{\:2\:},\:1).}$$
よって $${\text{M}(-1,\:\dfrac{5}{\:2\:},\:1).}$$
(2) △ABCに着目します。BCの中点をLとしたとき、重心は中線ALを2:1に内分した点なので
$${\overrightarrow{AG}=\dfrac{2}{\:3\:}\overrightarrow{AL}=\dfrac{2}{\:3\:}(\dfrac{1}{\:2\:}\overrightarrow{AB}+\dfrac{1}{\:2\:}\overrightarrow{AC})=\dfrac{1}{\:3\:}(\overrightarrow{AB}+\overrightarrow{AC})}$$
と書けます。$${\overrightarrow{AB}=(2,-6,\:1),\: \overrightarrow{AC}=(7,-6,-1)}$$から
$${\overrightarrow{AG}=\dfrac{1}{\:3\:}(9, -12, \:0)=(3,-4,\:0).}$$
したがって
$${\overrightarrow{OG}=\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{AG}=(1,\:1,\:2)}$$
なので、$${\text{G}(1,1,2).}$$ (別解は下の注にて)
(3) PがGMを3:2に内分する点なので
$${\overrightarrow{GP}=\dfrac{3}{\:5\:}\overrightarrow{GM}.}$$
したがって
$${\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{OG}+\overrightarrow{GP}=\overrightarrow{OG}+\dfrac{3}{\:5\:}\overrightarrow{GM}.}$$
(1), (2) より
$${\overrightarrow{GM}=(-2, \dfrac{\:3\:}{2}, -1)}$$
であるから
$${\overrightarrow{OP}=\begin{bmatrix} 1 \\ 1\\ 2 \end{bmatrix}+\dfrac{3}{\:5\:}\begin{bmatrix} -2 \\ 3/2 \\-1 \end{bmatrix}=\begin{bmatrix} -1/5 \\ 19/10\\ 7/5 \end{bmatrix}.}$$
よって$${\text{P}(-\dfrac{1}{\:5\:},\: \dfrac{19}{\:10\:}, \:\dfrac{7}{\:5\:}).}$$ ▮
注: 解き方・考え方は1つとは限りません。
例えば (2) の重心の問題は、重心の公式
$${\overrightarrow{OG}=\dfrac{1}{\:3\:}\overrightarrow{OA}+\dfrac{1}{\:3\:}\overrightarrow{OB}+\dfrac{1}{\:3\:}\overrightarrow{OC}}$$
を覚えているなら、これを使うことができます。
ただ、この数学事始めでは触れていません。触れているのは、内分・外分・中点です。であっても暗記は求めていません。(1), (3) はそれぞれ中点, 内分点 の公式を利用して解くこともできます。
暗記を求めていないのは、幾何ベクトルが使えるようになれば、時間は掛かりますが、確実に求められるからです。公式は使わないと忘れてしまうものです。
例題2(同一直線上)
3点$${\text{A}(1,2,-1), \: \text{B}(3,1,2), \: \text{C}(x,-1,y)}$$が同一直線上にあるように$${x,y}$$の値を定めよ.
解説 座標平面なら直線の方程式を考えることができますが、与えられている点は座標空間内の点です。直線の方程式についてはまだ話をしていませんが、ベクトルの知識を使えば "同一直線上にある" は表現できます。
3点A,B,Cが同一直線上にある $${\iff \overrightarrow{AC}=k\overrightarrow{AB} \:\: (k\in\mathbb{R})}$$
$${\overrightarrow{AB}=(2,-1,\:3), \: \overrightarrow{AC}=(x-1, -3, y+1)}$$ より
$${\begin{bmatrix} x-1 \\ -3\\ y+1 \end{bmatrix}=k\begin{bmatrix} 2 \\ -1\\ 3\end{bmatrix}=\begin{bmatrix} 2k \\ -k\\ 3k\end{bmatrix}.}$$
したがって
$${x-1=2k, \: -3=-k, \: y+1=3k,}$$
$${k=3, \: x=1+2k=7, \: y=-1+3k=8.}$$ ▮
最後はベクトルの成分計算ですが、考える基本は幾何ベクトルです。
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