趣味でBAR経営は甘い考えか
上手くいくかどうかは経営のやり方次第
「会社員として働きながら、副業でBARを経営することは難しいですか?」
飲食業に携わっていると、会社員の方からたまにこのような質問をされます。
BARで飲むのが大好きなサラリーマンなら、「小さい店なら自分にもできるかもしれない」と一度は考えたことがあると思います。
自分のお店を持てば、内装やメニュー内容は自分の好きなものを置き、スタッフは自分と気が合う人を雇えるので、楽しく経営できるのではないか、と。
本業でバーテンダーをされている方なら、「そんな甘い世界ではない」「絶対に無理だ」と怒る方も多いと思いますが、
私としては、やり方次第では可能 だと言えます。
そもそもBARと言っても、いろんな形態があります。
例えば、メニューにはスタンダードなカクテルしか載せず、お客さんの要望や気分に合わせてカクテルを作るような本格的なBAR(いわゆるオーセンティックバー)は、会社員が副業として簡単に手を出せるものではありません。
バーテンダーとして高い能力が求められるため、オーナー自身が猛勉強するか、ベテランのバーテンダーを雇わないと難しいでしょう。
また、カジュアルなBARだとしても、店内が広く、客席がたくさんあり、スタッフを2〜3人雇わないと回せないような中規模店も、会社員が片手間で運営することは難しいです。
なぜなら、お店の規模が大きいとオーナーには経営者としての能力(マネジメントスキル)が必要になるからです。
さらに、アルバイトスタッフのシフト管理や急な欠勤、退職の相談、入退社手続きなどの労務対応にも苦労することになるでしょう。
小さく始めれば手間はあまりかからない
ということで、会社員が副業としてBARを経営するなら、まず小規模であることが第一条件です。
具体的には、お店の広さは5坪〜7坪程度でカウンター席と二人がけテーブルが1つだけ置けるようなお店です。
要はスタッフが一人だけ(ワンオペ)でも十分に営業できるくらいの規模感であれば、会社員が副業や趣味として無理なくBAR経営をすることが可能です。
アルバイトスタッフも、週2〜4日勤務可能で真面目に働いてくれるフリーターや大学生を3人程雇えれば、不定休で営業ができるようになるはずです。
もちろん中規模でも運営できる自信があるなら挑戦してみるのも良いと思いますが、日中忙しく働くサラリーマンが夜も働くとなると、体力的にかなりハードな日々になることを覚悟しなければならないでしょう。
しかも、BAR営業をスタートしたら毎月の家賃や水道光熱費、スタッフ人件費などの出費が必ず発生します。
開業資金や運転資金が全て自費なら、売上が伸びないと精神的にもきつくなってくるはずです。
私も経験ありですが、家賃と人件費以下の売上が続くと、焦りと不安で精神的に辛くなります。
オーナーが現場に立たないならメニューはシンプルに
次にメニュー内容について。
会社員が副業として運営することを考えると、やはり難易度の高いメニューは提供しないことです。
例えば、少し複雑な調理が必要なフードメニューや、何種類も材料を使用するカクテルなど。
小規模店であることを前提に考えると、やはり厨房設備のレベルはどうしても低くなるため、提供できるメニューには限界があります。
また、日々の来店客数も多くて10名〜15名程度だと想定すると、フードメニューを注文される機会が少なく、冷蔵保存の柑橘類や野菜、肉類は賞味期限を切らし、無駄になるリスクも十分にありえます。
さらにメニュー数が多い、または複雑にするデメリットとして、提供できるようにするためのスタッフ教育が必要になることです。
「それは当たり前だろ」と思うかもしれませんが、今回のテーマである会社員が副業でBAR経営することを考えると、スタッフ教育は難しい課題の一つです。
なぜなら、週2〜3日しか出勤できないような学生アルバイトの場合、一度教えたところで、次回の出勤日にはだいたい忘れている可能性は高く、また本当に真面目なスタッフじゃない限り、複雑な作業になると手を抜く人もいます。
作り方は複雑でもオーナーがどうしても提供したいこだわりの一品があるなら、それはそれで良いと思いますが、そういう特別な事情がないなら、メニュー内容はなるべくシンプルなものにするべきです。
優秀な人材を雇えれば成功しやすくなる
そして、副業BAR経営で一番重要なのは、現場責任者の採用です。
もし営業中はオーナー自身が店長として現場にずっといるのであれば、店舗運営は問題ないと思いますが、会社員として働いている以上、業務時間外でも時間的に拘束されることはよくあるでしょう。
本業が忙しくなり毎晩残業が続けば、経営するBARにも影響が出てくるでしょう。
「副業だから営業時間も休業日も全部自分の都合でいいよ」と考えるなら、それもいいと思います。
個人店で多いのですが、ホームページなどで「不定休」と公開しているのに臨時休業が多かったり、オープン時刻が過ぎているのにお店が閉まったままだったり、こういうお店はよくあります。
ただ、このようなお店には当然リピーター客は付きづらく、一般客から信用されないため、オーナー自ら宣伝を頑張らないと利益を出すのは難しくなります。
そのため、しっかり決めた営業時間通りにお店を営業するには、やはりしっかりした現場責任者(店長・マネージャー)が必ず必要になります。
もちろん、その現場責任者はアルバイトだとしても、週4〜5日・フルタイムで働けるようなスタッフじゃないといけません。
できれば正社員として雇用したいところですが、会社員が副業でそこまで公的な手続きをすることは難しいでしょう。
それでも時給を高く設定したり、売上高に応じて歩合を付けたりして、現場を任せられるスタッフは確保しておきたいところです。
はっきり言って、この現場責任者の能力次第で日々の売上高が大きく左右されると思った方がいいです。
責任感ある優秀な店長なら、オーナーが現場にいなくても、そのスタッフは勝手に集客してファンを付けて売上を伸ばしていきます。
逆に危険なのは、責任感など全くない不真面目なスタッフを店長にしてしまった場合、余計な出費が発生する恐れもあります。
飲食業で大切なのは全て『人』です。
飲食業で成功するか失敗するかは、お店で働いているスタッフに全て掛かっていると考えておくべきです。
もちろん、オーナー自身がお店に立つなら、売上はオーナーの能力にも掛かってくることになります。
会社員が副業や趣味でBARを始めたいなら、この3つの条件は覚えておきましょう。
店舗は小規模であること
メニュー内容はなるべくシンプルにこと
優秀な店長になれそうな人を見つけること
これは私自身が過去に副業としてBARを開業した時に学んだことです。
「いきなり大きく始めずに、小さく始めて本当に良かった」
「メニューはシンプルにしないと、食材ロスは増えるし、一人ではメニューを作れないスタッフもいるからクレームに繋がるな」
「お店を任せられるスタッフがいないと、忙しくなり過ぎて本業も副業も中途半端になってきたかも」
などなど。
色々と日々試行錯誤して学んできたことなので、ぜひ参考にしてみてください。
これより先のコンテンツは、会社員として働きながらBAR経営をした私の実体験を紹介します。
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