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読書日記(20240329)〜「きのう何食べた?(よしながふみ)」からみる家事分担の気づき

よしながふみさんを尊敬している。
10代の頃、「ボーイズ・ラブ」というジャンルを知り、同人誌の世界ものぞき見た20年以上前のこと。よしながさんはすでに地元・九州でも、同人業界で一歩、すすんだ心理描写の作品を描く「やおい(主に男性同性愛を題材にした漫画・小説の総称)」作家として、知られていた。

その後、私は上京・遠回りしながらも就職、結婚して子どもを持つ。
よしながさんは気がつくと、あっという間に「大奥」などでメジャー作家になっていた。「やっとよしながさんの魅力が世の中に・・・」なぞ、1人勝手にほこらしい気持ちになっていた(お前は何様だ)。

先日、「家事分担の気づき」のお題をみて、自分なりの反省を書いた。

あいかわらず、14時くらいから「今日のご飯どうしよう」「冷蔵庫に何があったっけ。できれば主婦(!)としては買い足しするのは嫌だわ」なぞソワソワしていた。一方で、所用で出かけていたこともあり、夕飯作りの稼働は16時。

だるいなあ。今日も、冷凍食品でいいかな。
と思っていたときのこと。「きのう何食べた?」のワンシーンが急によぎったのだ。今、本棚を探ったら、125話(16巻)。

※以下、ネタバレすみません

主人公シロさん(弁護士)が勤務する法律事務所に、山田さんという秘書さんがいる。山田さんは、子育てによるブランクがあり、多少おっちょこちょいなところがあるものの、秘書経験ありの仕事ができる優秀な女性だ。

ちなみに私は山田さんがとっても好きだ。

料理好きのシロさんと、ますます旺盛な食欲をほこる2人の小学生を育てる山田さんは、節約・時短なお料理話で盛り上がる。
山田さんは夫(パパ)の給与減少にともない、働きに出るのだが、パパはとても炊事担当を言い出すなど、とても協力的な様子。(この辺りのライフシフトも、ちょいちょい素敵だなと思う)

ところが、小学生になると、夏休みが始まる。そこで、給食(!)に頼っていた山田一家を悲劇が襲う。学童にお弁当を持っていかなければならない。
昨年、パパはお弁当作りを頑張り続けるのだが、「夏休みが終わったら灰になっていた」(山田さん)というのだ。これは他人事ではない。

疲れ切ったパパと、ママ(山田さん)は慰め合い、抱き合う。

「パパ!!もっと冷食使おう冷食!!(中略)冷凍食品を1品まで可というルールを緩和して2品まで良いことにしましょう…!!」(ママ)
「でもっ…でもそれではおかずの半分が冷食に…!!お金もかかるしあいつら冷凍庫の中でけっこうかさばるっ…!!」(パパ)
「(略)でも毎週、休日返上で作り置きのお料理を何品も作って疲れ切ってるパパを見ると私っ……!」(ママ)

よしながふみ「きのう何食べた?」(16)より

この2人をポカーン、とみている子ども2人もまたいい感じだ。
私も面倒くさくなって、冷凍食品に頼っている。
メイン、味噌汁 に、冷凍食品を1品つける夕飯なんてザラになった(すいません)。でも、そのくらいご飯作り「続ける」のって、好きな人だとしても、大変なのよ!!

この回のクライマックスは、パパ早帰り、ママお仕事で、パパが夕飯当番だった日のことだ。ママが仕事から帰宅すると、テーブルに突っ伏したパパと、リビングに転がった2人の子ども。床にはおもちゃやポテトチップスが散乱。

ママ:「あの…これは一体…」
パパ:「ごめん…まだ夕飯全然できてない…」
(中略)「俺が料理を担当するっていった手前、手抜きはできない
今日だって焼き餃子にトマトサラダをつけようって思っていたのに 思って稲野に…!!」

よしながふみ「きのう何食べた?」16巻

そんなパパにママは涙がほろり。
ママ:「パパ…全てが…全てがくたびれて面倒くさくなってしまったのね…」
パパ:「ごめんママ〜〜〜〜っ!!」

ママ:「何言ってるのすごくよく分かる!!」

よしながふみ「きのう何食べた?」16巻

このシーン。発売時、我が家の夫は、このママ(山田さん)の「全てがくたびれて面倒くさくなってしまったのね」というセリフに、激しい共感を覚えていた。

よくある漫画のシーンだけど、日々、ご飯作りに追われる夫婦からすると、100万回の共感があるのではないか。

私も全く同じものを辿ったのだ。夕飯作りの沼の渦中にいたとき、私はこのシーンを思い出せなかった。
しかし、救ってくれたのは、「冷食、どんどん使おうよ」と言った夫(パパ)だったし、しんどくなったときに救ってくれたのも、予定変更したのに、イライラもせず「俺作るね」と生姜焼きを作ってくれた夫(パパ)だった。

妊娠が分かると、自治体からさまざまな支援のご案内がくる。
何気なく話していたところ、「家事代行もいいけど、冷凍食品、1か月分もありがたいなあ」とぽそっと言った夫。私はとってもその言葉が嬉しかった。

二人でその大変さを理解している、ということだから。

ご飯作りは楽しい。確かに、数回なら楽しい。
でも、毎日だったら別だ!
時間とお金の制約があったらもっと大変だし、そこに子どもが加わったらもはやカオスで、仕事の疲れまでのしかかったら、もう無理ゲー。

いつ休めばいいのじゃ。

でもそこを吹き飛ばしてくれるのは、やっぱり身近な人の共感なのではなかろうか。「家事分担の気づき」は、この間読んだ「フェミニズム」の話にもつながる。(家事は女性が担う、とされがちな「私的領域」の最たるものだ)

https://note.com/kotetsu0731/n/n5f619c5e6284

そこをあっさりとたった数コマで、ある種の救いと、味わい深い世界を教えてくれる。よしながさん、BLの世界(きのう、何食べた? の主人公もゲイカップルではあるが)で描かれていた社会・制度への違和感、すべての作品に貫かれる。

もう一生ついていく、と決めている大好きな作家さんなのだ。
これからも末長く、作品をお待ちしております。

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