見出し画像

第二子誕生つれづれ:「上の子かわいくない症候群」

長女が大好きだった。訂正、大好きで、今も世界一のたからものだ。
2週間、長女と離れた次女の出産。長女とこんなに離れたことはなく、会えなくて寂しくて、入院先で泣いていたダメ母だ。かつては「もともと、子ども好きじゃない」と自覚していた。自分にとって、長女が特別なんだと思っていた。

ところが、まさかまさか。
生まれた次女を連れて帰って数日後。ほんのちょっとの期間だったけどわたしを襲ってきた「上の子可愛くない症候群」。これは、想定外だった。
つらすぎる。でも、案外あるみたい。

「二人目が生まれました。上の子がかわいくないんです」。
そんな相談もちらほら、インターネットで見かけた。わたしが保育士さんに相談しながら、気づくとそんな気持ちに折り合いをつけられたことを書いてみます。


1.「上の子ファースト」と決めていたけれど

産休に入るまでの間、わたしはほぼ、お腹にいる子どものことをそっちのけで過ごした。心配していたのはいつも、上のお姉ちゃんのメンタルと、その間、ワンイペになる夫のこと。
目の前にいる娘がかわいくて仕方ない、というのもあるし、ずっと一人っ子状態で、泊まりがけで母親と離れたことは一度もなくて心配だった。

「上の子ファーストだよ!」
先輩パパママたちに言われていたことだ。下の子のお世話がある。だけど、上の子の「赤ちゃん返り」なるもので手を焼いている、という先輩ママたちの声を聞いていた。

長女はもう5歳。いろいろ理解している。「赤ちゃん」までは返らないかもしれないが、心が不安定にならないわけがない。
実際、わたしが出産のため入院、となることを話していたら、しくしく泣く。「ママは病気になっちゃったの?」と心配しながら泣く娘を見ると、こっちまで泣きそうだ(こっそり泣いた)。出産だから、割と多くの子ども、この状況は経験すると思う。でもしんどかった。

実際、迎えた二回目の出産は、自分が想定した以上に大変だった。
妊娠経過は決して順調とは言えなかったし、妊娠高血圧に加えて出産時は大量出血。入院は長引いた。

入院先の病院は、中学生以下の面会を禁止していた。本来帰るはずの日がすぎてもなかなか帰ってこない母親に、毎晩やっていたLINE電話で大泣きするわけでもなく、必死で笑顔を見せながらおしゃべりしていた(一度だけこらえきれずに涙をこぼした)。だから、さまざまな数字が安定して、ようやく退院のゴーサインが出て、やっと長女に会えた時。もうたまらなくうれしかった。

小さな赤ちゃんとだけ過ごしていた日々、赤子はかわいいけど、夫と長女と4人で新生活をスタートできるのが何より、楽しみだった。

退院の日、やっと長女が妹と会えて泣いた。
なのに。退院後数日して、小さな新生児との生活で、長女にイライラするとは。

2.とにかくかよわい赤ちゃんと、しっかりしたキッズ(物理的に)

長女へのイライラ。
その気持ちが湧き上がったとき、自分で「えっ」と思った。

その気持ちは、あとで思うと抱っこしたときの感触の違いからあった気がする。「か弱すぎる赤ちゃん」と「出来上がったキッズ」のあきらかな「体つき」の違いだ。

首もすわらず、ふにゃふにゃで温かい。守らないと生きていけない、目を離したら危ないか弱さ。赤ちゃん特有の匂い。
一方で、体重は20キロ、もうすぐ小学生を目前にし、骨格も筋肉もしっかり、抱きしめたら安定感バッチリな子ども。

出産前までは確かに、体重20キロ、身長110センチ超(我が子は割と大きい)の娘を膝の上に乗せたり、ぎゅうぎゅう抱きしめたりしていた。だって抱っこしたいんだもん。寝る前に抱きしめることををルーチンにしてたくらい。

なのに、「おっぱいほしい」「抱っこしろ」と高頻度でとにかく泣く(といっても声は小さい)赤ちゃんのお世話をしていると、乱入してきて「⚪︎⚪︎ちゃんがうるさくて眠れないよ」とか、あるのかないのかわからないかすり傷を見せながら「お母さん、わたしね、ここ怪我しちゃったの」など、要するに「構って!」とせがんでくることに、

(今、忙しいのに…お姉ちゃんでしょ!わかってよ!まだこんなにふにゃふにゃなの! あなたもそうだったんだから!

と心の声が出そうになった。ああ、この気持ちだけは絶対にダメだと思っていたのに。上の子ファーストだと、ずっと言い聞かせているのに。

新生児が持つ「カワイイ」破壊力は凄まじかった。
赤子は何かを持っている。

守られないと生きられないので、神様が赤子に何かのフェロモンだかを赤子に配っているのかもしれない。このフェロモンだかなんだかは、長女の通う保育園の先生、ママ、通りがかりのおばあさんまで、大半の大人たちをとりこにした。

今まで一人っ子で、私たちといるときは絶対的に「自分が一番かわいい」で生きてきた娘からすると、複雑すぎる気持ちのはず。

3.長女の変化、気持ちと対処

わたしはお姉ちゃんである。
という自覚もあってか、直接、赤ちゃんにいじわるはしない。

だけど、「わたし、こんなに頑張っているんだよ」とやたらアピールしてきたり、「これを買って欲しい」といった後、レジで持っていった後になって
「やっぱりアレが良かったのに」
「(アイス買ったけど)お腹痛くなっちゃった」
など、不思議な「試し行動」みたいなものだったりが増えた。

まいった。
そこで、保育園の先生にも、園での様子を尋ねたり、上の子のケアについてアドバイスをもらったりした。
プロ(保育士さんなど)に聞いてやったのは、主に下記の4つだ。

短くてもいいから2人きりの時間を作る
あなたが一番だと、大げさなくらい伝える
モノを買うというより、本人の希望をできるだけ叶える
一緒に赤ちゃんのお世話を手伝ってほしい と伝える

結論は、非常に功を奏した。
特に、2人きりの時間を意識的に作った。これがすごく良かった。
何が? というと、わたしの気持ちが落ち着いたのだ。

体力的には退院後で、決して良くないが、赤ちゃんを夫に預けて、30分くらいの散歩をした。保育園から帰宅した娘とブラブラ歩きながら、今日あったことを聞く。たまに、コンビニでお菓子を買う。

娘とふたりっきりだ。
そうしているうちに、娘は思いっきり笑顔を見せて、走ってきてママ、ママと飛んできたり、夢中で話してきたりする。お菓子を買うときも変に困らせることはしない。パパにも買わなきゃ、と気配りまでする。

次女が生まれてくる前のように。
ああ、うちの娘、(わたしにとって)世界一かわいすぎる!!
その瞬間、わたしから「上の子可愛くない症候群」が霧散した。

娘と1対1で話す時間を作り、物理的に家から離れて、次女からも距離をとったことで、わたしからは長女しか見えない環境を作った。物理的に、長女の笑顔だけに集中した。そうすると、次女という対象者と比べることはない。

満足したのか、わたしの微妙な感情の変化を感じ取ったのか。
自分から次女のそばで寝転がったり、お風呂に入れようとしてくれたり。
何より、変な「試し行動」はなくなった。

シンプルに「お母さーん、⚪︎⚪︎ちゃんのウンチが臭いよお」など、申告してくるだけになった。娘の変化は、こちらも何より楽になった。

4.全面解決ではないが、気持ちは楽になった

とはいえ、イライラが消えたわけではない。
ふたり育児は、体力を使う。

今は細切れ睡眠で早く目が覚めるので、ほんのちょっと、次女が寝た30分で何かをしようとすると、長女が起きてきて「イラ」としたり。やっぱり「ママ、遊ぼ」と笑顔で言われると「本読みたかったのにー」と思わなくもない。

それでも、ガルガル期とも言えるような長女への変な感情が霧散して自分の苦しさもかなり楽になった。相変わらず、長女はかわいくて、繊細で、やっかいな、世界一のわたしの女の子だ。

本来目指していた「上の子ファースト」を、無理やりやらずに済んだこと。
ふたりの姉妹育ての関門を一つ、超えたような気がする。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集