【伊勢物語】108 袖がビショビショの伝統/ビショビショ歌を作ってみよう
1,本文と現代語訳
女性から歌を送っています。順調な恋愛ではあり得ません。男の不実を感じたからでしょう。
そんな歌を「つねのことぐさに」、すなわちいっつも口ずさんでいたわけです。怨恨をポエム化して常に口に。
闇が深え。
2,コブンノセカイ
百人一首に
なんて歌があります。今段の女の歌と同趣旨でしょう。衣服の濡れ具合を比喩で示すのは平安人のたしなみなんです。
恋人を恨む涙が流れ袖が濡れることを歌う歌は、恨みの歌として定番中の定番です。「泣き濡れて袖がビショビショになったことをどれだけ大げさにたとえますか選手権」が始まっているのかと思うほどです。いくつか見てみましょう。
こちらは袖が雨に濡れたようにビッショリだとたとえる歌。まだ当たり前の比喩らしい気がします。
こちらも同じ『拾遺集』から。岩が波に打たれてやがて形を失います。自分の袖が岩だったとしても、波のように打ち寄せる涙のせいでボロボロになってしまうでしょうと歌います。だいぶビショビショが大げさになってきている気がします。
五月雨は袖じゃなくて袖にかかる涙だろう、と突っ込みたくなりますが、千年前には届かないので放置です。
五月雨は梅雨の雨のこと。『古今集』の貫之歌のような単なる雨では飽き足らなくなってきているんでしょう。
あまり数をあげても飽きますので、これくらいにしておきます。袖×涙=
ビッショビショの世界、多少なりとも伝わりましたら幸いです。
3,ビッショビショにしてみよう
では最後に、現代風のビショビショを考えてみましょう。和歌創作です。
『伊勢物語』の「風吹けばとはに浪こす岩なれやわが衣手のかわく時なき」は形式が整っている歌ですので、この下句を使います。「わが衣手のかわく時なき」に繋がるように、上句を考えましょう。上句は「○○なれや」の形にして、五句末の「なき」と係り結びの関係を結ばせましょう。
ステップ1 ビショビショなものを考える
複数人で試すなら、ブレストでガンガンあげていきましょう。
1人でするなら、とりあえずグーグルで「びしょびしょ」の画像検索をして見つけた画像から。
・水遊びする園児
・ラフティング
・雨後の男子小学生の靴
・梅雨時の学校の廊下
ステップ2 フレーズにし、最後に「なれや」をつける
ステップ1であげたモノをちゃんと説明します。
・水遊び中の園児の服なれや
・ラフティング終了後の上着なれや
・雨後に水たまりでバシャンとやった小学生の靴なれや
・梅雨時に湿気で濡れる学校の廊下なれや
ステップ3 575のリズムを整える
がんばりましょう。
・水遊び中の園児の服なれや(このままいけた)
・ラフティング終わった後の服なれや(上着→服)
・水たまりバシャンとした子の靴なれや(だいぶ削った)
・梅雨時に濡れる廊下の床なれや(「廊下」で伝わるかな)
こんな感じで。最後に「わが衣手のかわく時なき」をつけて一枚の紙に書いて提出!
①と④は濡れ続けている感じが「かわく時なき」とリンクして良いですね。②と③は濡れた後を歌材にしていますので、ちょっと違和感が出ます。
まあ堅いことを言わずに楽しみましょう。
今回はこれで終わりにします。最後までお読みくださりありがとうございました。