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公式SNSにおける「中の人」の苦悩

ここ数年、僕達の生活に切っても切れないものとして入り込んできた物は何だろう。

技術の進歩によって僕達の生活はどんどん便利になり、遠く離れた人とも手元で繋がれるようになった。

かく言う僕も、今まさにソファで横になりながら、右手を動かし、毒にも薬にもならない文章を世間に垂れ流している。
自分の生活や考えを切り崩しているだけなので、まさに徒然なるままに筆を走らせ…もとい、指を走らせればそれで良い。
人として最低限のルールだけ押さえておけば、僕が何を書こうがここでは自由だ。
僕が小学校の頃カ●ビアンドットコムを見て、それが親にバレて泣きながらデパートに行ったことを書いても許される。


さて、SNSが僕達の生活に浸透し、感度の高い企業は公式アカウントを活用するようになった。

僕自身もTwitterで、キングジムやSHARPの公式アカウントのやり取りなどをたまに見ている。
企業のアカウントであるのに個人が見える、親しみやすいアカウントの運用が功を奏し、それを見た他の企業もこぞってSNSの世界に進出。
すっかり企業がSNSを活用するのは当たり前となった。

公式アカウントの運用は、傍から見ていると花形の仕事のように見える。
まあその組織の謂わば“顔”になるのだから間違っていない。
“顔”と言ったが、実際には顔出しするわけじゃなく、商品達が“顔”なことが多いんだけども。

ただ、実際に公式アカウントの運用をすることになる人は、そんなに多く無いだろう。
やってみたい?本当に?結構辛いぜ?


実は少し前から公式アカウントの『(ほぼ)中の人』をやっている。
ほぼ、と書いたのは、文章は他の人にも見てもらったり、動画編集には意見をもらったりと、自分1人で運用しているわけではないからだ。

しかし、アカウントの開設から方向性の提示をし、素材を集め、編集して世に出す部分の殆どを自分が担ってきたし、これからも担う。
組織の“顔”として生み出す言葉は、たかが3行ほどの文章でも責任が伴う。

特に僕が運用しているSNSはInstagramだ。
文章だけでなく、必ず画像や動画が投稿について回り、それらにはクオリティが求められる。

発信頻度も組織として決めたスケジュールに沿って行っているので、やりたい時にやれるわけでもない。
最近は常に隙間時間を見つけては動画を編集し、アカウントを運用しているというよりアカウントに運用されているような毎日だ。

自分が創ったものに“スキ”が集まり、順調にフォロワーが増えていくのは嬉しいし、概ね戦略は上手く行っているが、何かを生み出すことには苦悩も付き纏う。

また、僕も組織では若いと言われるが今年30になる。
本当に若い子たちから見ればおっさんだということも、十分わかるほどには大人だ。
小~中学生の頃、芸能人の千秋さんが「み・そ・じ、です☆」と言ってたあの年に自分がなっている。

千秋さんのような強烈な個性があれば面白い大人になるが、僕が「み・そ・じ、です☆」と言っても「そうだね」となるだけだ。
こうやって冷静に自分を見ることができるくらいには、僕はおっさんになってしまった。


徐々にだが、油断すると時代に置いていかれていると思うことも増えてきた。
僕の妻はAboの『うっせぇわ』を知らなかった。
着実に僕達は年をとり、年をとるにつれ最新の情報が入ってこなくなる。

SNSを運用するには、最新の情報を知らなければ古い・ダサい物を発信してしまうことになりかねない。
個人のアカウントで、見たくもないTikTokの動画を勉強だと思って見ている。
日々勉強しなきゃいけないこともまぁまぁしんどい。

僕はSNSに詳しいと思われているし、実際詳しい方ではあるが、実のところSNSを使いこなしているとは言い難い。
どちらかといえば時代の流れに置いてかれないよう必死にしがみつき、SNSをなんとか使ってる状態だ。

しかし、恐らく多くの職場では、SNSはできる人がやれば良いという風潮があるし、できる人にとっては難しくないと思われているんじゃないだろうか。

少なくとも僕は公式アカウントの運用を片手間ではこなせていない。
どんな内容であれ、何かを生み出すことには労力がかかる。

SNSの運用は、そういった労力がわかりづらい。
出てきた成果物もそれが当然のように映るし、失態だけはわかりやすく担当者の失態として映ってしまう。
(幸運にも今のところ失態は無い。)

公式アカウントの『中の人』は、多くの人(フォロワー)に囲まれているようで、実際は“孤独”なんじゃないだろうか。

僕の場合は、まだ身近に一緒に盛りたてようとしてくれる同僚がいるからやっていけるが、そうじゃなかったら続けていけないだろうな。


こうやって書きながら、僕が『中の人』をしているアカウントを紹介するわけにはいかない。
組織用に築いているブランドイメージを崩すわけにはいかないからだ。

僕はこれからも、こうやって毒にも薬にもならない話を垂れ流すしかないのだ。

ただ、組織としてやってるアカウントについては、できれば薬になるような発信ができればと思っている。
もし偶然にもそのアカウントを見る機会がある人がいたら、その人の何かに響くと嬉しい。

そしてSNSを利用する上でもし気が向いたときは、どんなアカウントにせよ、公式アカウントを裏で運用している『中の人』のこともたまには思ってほしい。

もしかしたらその『中の人』は、インターネットの履歴の消し方すらわからず親に怒られた経験があるかもしれない。

公式アカウントの裏には、同じように血の通った人がいるのだ。


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msd
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