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JASRAC非会員の作曲家がシンポジウムに登壇して得た「音楽グローバル戦略」①

はじめに。記事の概要。
①Spotifyバイラル1位を受けた、2019年の目標
②目標達成のための「原盤収入」「著作権使用料」の観点
③CM音楽制作業務とのバランス
④海外へ配信する、ということ

みなさん、ご無沙汰しています。作曲家の齊藤耕太郎です。

Spotifyバイラルトップ50(日本)1位になって以来、制作案件や次回作など、おかげさまで仕事の波に飲まれながら年を越し、ようやくひと段落しました。2019年も自身の作品のこと、音楽産業に関わることなどを発信していこうと思います。よろしくお願いいたします。

さて。実はこのような面白い場に参加させていただきました。

JASRACが毎年開催しているシンポジウム。今年のテーマは、「音楽コンテンツを輸出して、いかにして外貨を獲得するか」と言うもの。

JASRAC非会員の僕が登壇。
浅石理事長をはじめ、皆さんにイジられました 笑

なぜ今回お招きいただいたかというと、ここでも書かせていただいたSpotify活用による自身の楽曲展開の模様を評価していただいたから、だそうです。それらについては是非、下記をご覧ください。

これらの事象で大切だと感じたこと、そして2019年以降、僕が何を目指していくかを簡単にまとめた10分強(モデレーターの谷口さんへ。はみ出してごめんなさい 笑)のプレゼンを行いました。

僕のお話は上記の記事を読んでいただければ十分かと思いますので、今回はシンポジウム参加を通じて僕自身が学んだこと、今後の具体的な活動計画(こちらは戦略を細かく書くので初めて有料記事にします。)を2回にわたり書き進めていきます。

ちなみに、全編に興味ある方は、ニコ生のタイムシフトで1週間以内は見られます。是非下記をご覧ください。


2019年の総目標:「市場創造」

2018年の出来事は、たとえ運に恵まれたのだとしても、僕の音楽人生、そして僕が本当にやりたかった音楽を目覚めさせてくれた出来事でした。改めて、この場を借りて可能性を見出してくれたSpotifyにお礼申し上げます。

アルバムが世に出たことで、これまでCM音楽中心に活動していた僕の音楽活動は、僕自身のクレジットともに多面展開を果たしました。

こちらは、2018年11月から八景島シーパラダイスにて毎夜開催されているイルカ達とプロジェクションマッピング、僕がプロデュース、作曲した音楽で構成される新感覚ナイトショー「LIGHTIA(ライティア)」です。

メインテーマにアルバム楽曲「Love Song」を起用いただき、毎晩ここでイルカ達の華麗なる舞を彩っています。一切オフィシャルプレイリストに入っていないにも関わらず、Spotifyだけでも再生回数は2,000回を超え始め、着々とリスニングの機会をいただいています。

そして実は!本舗初公開、初めてテレビタイアップが決定しました!25日(金)からBSスカパーでスタートする「PARA SPORTS NEWS アスリートプライド」のエンディングテーマとして、月に一回「Love Song」が流れます。ノンレーベルの僕の楽曲が、テレビ番組のエンディングに決まること、とても嬉しく思います。関係者の皆様、本当にありがとうございました。

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これまでクライアントの課題解決のために音楽制作業務を受託するのが中心であった僕の音楽活動。この業務をより発展させるべく、そして僕自身が自らすすんで作りたい音楽を世に打ち出していくべく、僕は僕自身の関心あるサウンドをそのまま、世の中にとっての価値にしていきたい。誰かが望む僕の音と、僕がやりたい音の一致を行いたい。

それを叶えるべく、2019年はより意識的に、「Kotaro Saitoブランドの市場創造」をグローバルに考えて展開していこうと考えています。


勘違いしていた、原盤収入と著作権収入

Spotifyで本日現在、述べ221,471回再生いただいている僕の楽曲。再生回数に応じるように、僕には一定の売上がアグリゲーター(今回はTuneCore)を経由して入金されています。

今年以降、とにかく積極的にオリジナル作品を世に出していくつもりで年末年始も作曲を進めており、目指すは海外のプレイリストで沢山聴いていただくこと。それぞれの国のマーケットを意識した楽曲をつくるのではなく、各国にいる僕と音楽の趣味が通じるリスナーのみなさんに、楽曲優先で出来上がった作品を、どんなムードで、景色を思い浮かべて聴いてもらいたいかを伝えていくことを強化していくつもりです。面ではなく、点を集合させる。その鍵は、グローバルクラスのプレイリストです。

その時に一番大事なのは、その音楽を聴いてもらえたことで、僕ら作り手・アーティストにどれだけの収入が入ってくるかをきちんと知ることです。

僕は今回のシンポジウムまで、Spotifyから得られる収益は、アグリゲーター側に還元される金額のみであるとばかり思い込んでいました。しかし、それは違うということが分かりました。日本を含む世界各国の著作権管理団体が各国での再生に対してストリーミングサービス側と包括契約していることで得られる、著作権使用料が存在するのです。

僕が今まで入金されていたものは、単純にレコードを制作して販売、再生されたことに対する収入、つまり原盤収入と呼ばれるものです。もともと、そもそもこんなに再生いただく目処もなかったこのプロジェクト。見切り発車もいいところで、収入形態も充分に理解しないまま進めてきたこと、とてもお恥ずかしく思います・・・笑(JASRACの方に聞いたところ、この22万再生の使用料は回収できないとのこと。残念。もったいない。)

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海外展開を考える際、著作権使用料を適切な形で得て、自身の作品を軍資金として更なる作品制作を行いたい。現状はクライアントワークでいただいているギャラを投資として作っている状況ですが、それを続けていくのはまさに持久力との戦い。きちんとマネタイズできるところでしていく、とれるものはきちんと刈り取るのは制作だろうとビジネスだろうと基本中の基本です。正しい方法で著作権管理団体と向き合い、自身の状況に合わせて最良の選択を行いたいと思います。


CM音楽制作業務上のストレスとのバランス

JASRACに今まで著作権管理を信託してこなかったのは、僕が今までの業務上著作権管理をビジネス上そこまで必要としてこなかったからです。

僕の作品群をご覧いただければわかる通り、僕の主業務はCM音楽の制作です。CM音楽の報酬システムというのはざっくり言えば

①課題に対する楽曲制作依頼
②期間と使用媒体による音源使用料(制作委嘱)の決定
③期間や範囲を超える場合は都度更新・相談

というのが一般的です。近年バイアウト(期間や範囲にかかわらず買取られてしまうこと)の相談があることもありますが、基本的にはこの形態で業界のビジネスは動いていると僕は認識しています。

重要なのは、この時のキャッシュフローはあくまで、クライアント→音楽家(間に広告代理店・制作プロダクション・音楽プロダクションを挟むことが一般的ですがあえて割愛)というもので、ビジネス自体は非常に明快な「受発注業務」に限りなく近いです。

著作権管理団体に権利を信託している作曲家がこの業務を行う際には、作曲家または音楽出版社、音楽プロダクションのどなたかが、納品時にクライアントがCMなどを放映する際に著作権使用料を二重請求されないよう申請が必要となる、とのことをJASRACの方からも伺っています。これが毎回発生するとなると、単に書類提出自体が煩雑となり、お仕事を引き受けにくくなるのではないか・・・というのがこれまでの天秤上の悩みの種でした。

昨日JASRACの方々と懇親会でお話した際、僕が以前に当時の悩みを余すことなく聞いていただいたのがキッカケ?で、CM音楽などの受託業務に関する柔軟な対応が可能な状況を作ってくださっているようです。そのお話を近々に伺おうと思っていますので、伺ったお話は改めて今後のためにこのnoteに残していこうと思っています。


海外ストリーミング・配信こそ著作権管理が非常に重要

世界は広い。自分の手の届かないどこかで自分の作品が使用されている可能性はゼロではなくなってきたこの状況で、音楽におけるパスポートもなしに海外渡航しようとするクリエイターは、著作権の観点でみるとあまりに無策。JASRACシンポジウムに登壇して素直に思ったのはそれでした。

非会員(音楽出版社への間接委託含む)だと、海外の著作権団体から送金されたきたお金を受け取れる仕組みが世界的にないそうで、国内での既存の活動とのバランスを議論するのは一旦置いておいて、海外だけは早急に信託したい。それが今の本音です。

グローバルプレイリストに楽曲が入ったら、フォロワーもストリーミング数も、これまでとゼロが2桁、もしかしたら3桁変わる可能性があります。

これから大海原に出ていくための体制を磐石にしなければいけない、というタイミングで、僕が僕の音楽で新しい価値軸を作っていくためにも、一部世間の評判などを聞いたとしてもJASRACにお力添えいただく必要は充分にある、というのが冷静な判断かと思っています。

昨日のお話によると、アジア諸国からのJASRACへの入金も年を追うごとに伸びているそう。日本の音楽コンテンツが海外で再生されている事例がとても目立ち、もはや国内にいても、活動はグローバルに展開できる時代となったことを数字でも証明いただきました。


そして。昨日発表しましたが、その第一弾として、2/1(金)に新曲をリリースします!!ピアノソロの2曲入りのEP「Poem, Poetry Or Not」です。

前作「BRAINSTORM」が隅から隅まで計算し尽くして作った「アイデア起爆剤アルバム」だったのに対し、今回の楽曲は「詩でなければ、これはただの無意味なもの」という意味のとおり、ラフスケッチのごとく自分の感情がその場に出てきたものをただただ記録した2曲です。

丸裸の感情を、質感、弾いた瞬間の想いを真空パックしたような「Right」「Jasmine」という2曲で構成されています。その場の感情任せ、なりゆきのサウンドですが、落ち着いたトーンになりましたので、是非就寝時、集中したい時、チルアウト時に聴いてみてください。

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ひとまず前半はこれにて終了。後半は有料記事で、ではそのために僕が今考えているアイデアは何か。について具体的に書いていこうと思います。

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leift / KOTARO SAITO
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