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【無料】悲観的な僕が、ポジティブな言葉を吟味する 1

 ポジティブな言葉といっても、「がんばれ、やればできる」「きみらしく進め」のような、体育会系の応援フレーズは扱わない。理由もなしに、それらしいことを言葉にするだけで元気になるほど、人間は能天気ではない。前向きに生きるためには、人間を突き動かすだけの理由や理屈が必要だ。
 ニュースや周囲の人間を観察しているかぎり、いまの日本では、将来に希望をもたず多くを望まないほうが、生きる上ではラクなのかもしれない。自然災害、企業の不祥事、長時間労働と過労死、白々しい政治家、口撃し合うSNS上のやりとり。経済や政治について疎くても、人生に漠然とした不安や物足りなさを感じている人は多いだろう。そんな人間にとって、ただ明るくポジティブな言葉は気持ちを滅入らせる。
 極端なまでに気持ちが落ち込んだ状態では、どんな言葉にも耳を傾ける気にならない。この文章を読むだけの余裕があるうちに、ポジティブな言葉に触れてみてはいかがだろうか。こんな世の中でも、みんな毎日を生きているのだから、少しは良いところがあるはずだ。世間で使われている勇気づける言葉を参考に、ネガティブな僕でも前向きになれそうな言葉を探してみる。

為せば成る

 「何事も行動を起こさなければ、結果に結びつかないこと」を意味する。関西人の僕は、思わず「そりゃ、そやで(訳:それは当たり前だ)」と言いたくなるが、ここはぐっとこらえよう。
 この言葉は、当たり前のことを言っている。家でぼーっとしていてもお金を稼ぐことはできない。宝くじで1億円を当てた人も、宝くじを買うという行動を起こしているから当選するわけで、何もしていないわけではない。

 この言葉は、あれこれと悩み考え込んでしまう人に役立つ。休みの日に、時間があるので本屋に行ってみようかと思う。頭の中で本屋に行く自分を想像するが、気になる本もなくお店を出る自分の姿が想像できてしまい、結局のところ家から出ずに、引きこもってしまう。もしかしたら、本屋で自分が思っていなかったものに出会えるかもしれない。行く道中で何か楽しいことを見つけるかもしれない。友人や知り合いに会うかもしれない。やってみないとわからないことがあるのに、未来のことをわかったつもりになってしまう。
 本屋に行くかどうかであれば笑って済ませる話だが、学業、部活、仕事で行動を起こさずに、チャンスを逃してしまえば笑えない(チャンスを逃したことに気づかず、笑わないのがほとんどかもしれない)。色々な可能性を頭の中でシミュレーションしてあれこれ悩むよりも、「為せば成る」と自分に言い聞かせ、行動に移すほうがよい。

努力は必ず報われる

 率直に言って、この言葉は嘘だ。必死に勉強をして受験しても、不合格になる人はいる。「不合格になるのは、合格した人よりも努力していないからだ」と考える人もいるが、努力は簡単に数値で測れるものでもないし、かりに同程度の努力を尽くしても、努力の仕方で結果が変わることは往々にしてある。

 けれども、この言葉は全くのデタラメともいえない。「努力は必ず報われる」とはいえないが、「報われるには努力が必要だ」とは言える。入試に合格するためには、受験勉強という努力をする必要がある。ぜんぜん勉強しなくても合格できたという人は、受験勉強をするよりも前にすでに努力をしていただけだ。もしかしたら、入試の倍率が低くて努力する必要がなかっただけかもしれないが、その場合でも「自分が努力しなくても合格できるかもしれない」と考えるだけの努力はしている。つまり、努力すれば報われるわけではないが、報われるためには努力は必要だといえる。努力は、報われるための1つの条件だ。

 では、報われるためには努力以外に何の条件があるか。身も蓋もないことだが「才能」と「運」だと思う。スポーツであれば、基本的には体が大きい方が有利だ。学力もそれぞれの人間がもつ生まれつきの能力とは、無関係ではない。病気になりにくい、先天的な病気がないというのも「才能」に含めることができる。そういう才能があること自体を「運」と表現してもよい。その人を取り巻く家庭環境や社会環境が整っているのかどうかは、本人がどうにかできる範囲を超えているので「運」だといえる。
 結局は「才能」と「運」だから何をしてもダメと言いたいわけではない。人生で何かを達成したいときに、「努力」「才能」「運」のそれぞれが、どの程度のウェイトを占めているかは誰にもわからない。ただ言えるのは、一人の人間がすぐに実行できるのは、「努力」しかない。とりあえず「努力」をしてみよう。「才能」「運」を言い訳にしがちな人間も、少しは前を向けるようになるかもしれない。

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