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オレは女が嫌いだが 9

 二日酔いの朝、そしてなぜか朱里が我が家にいる朝。

 コイツ、無防備すぎる。

 例によって、オレの方が早く酔い潰れたのだろう。朱里に運び込まれて、寝ていたらしい。朱里はオレの部屋着を勝手に着ている。もう慣れたものだ。

 ゴールデンウィークが明けて、平凡な日々を過ごしていた。

 オレはちょくちょく、ゴールデンウィークの間も天に顔を出していたが、朱里は大阪に帰っているとかなんとかで一切現れなかった。

 少し、寂しいなと感じていたところに当たり前のように帰ってきたので驚いた。

 床で敷いた布団の上、もぞもぞと尻が動く。おい、えろいな。

 オレは目のやり場に困って、目をこすって洗面所に行った。洗面所から戻ると朱里が起きていた。

「おはよー、京平」

 お前は彼女か、というツッコみはおいておいた。コイツには何を言っても糠に釘だ。

「おはよー」

「早速やけど、神戸行くで」

「え?」

 オレは目が点になったことと思う。

 今日は、土曜日だ。だから、行けないことはない。朱里はスマホをおぞましい速度で操っている。

「依頼があってな。出向くんや。これから。ほいっと! 新幹線指定席、二枚。ほれ、行くで」

 そう言うとオレが目の前にいるのに、部屋着を脱ぎ捨てようとしている。オレは慌てて、洗面所に移動した。全く、心臓に悪い。

 オレと朱里は新幹線の乗っていた。朱里は隣で天ぷらむすび、通称てんむすとビールでくつろいでいる。しかし。

「なんでオレは飲んじゃいけないんだよ!!」

 そうオレには飲むなと言うのだ。

「今、助手が出払ってんねん。京平には、今日明日助手してもらうからな」

 と言ってオレの分のビールを取り上げたのだ。なんという女だ、全く。

 オレは不機嫌全開なのに、朱里はどこ吹く風。全くのマイペースで過ごしている。腹立たしいことこの上ない。

 やがて名古屋を過ぎ、京都を過ぎ、新大阪を過ぎ、新神戸に到着した。

「ここからは別行動や。このナンバーの車を探し。アウディやで。やっぱ神戸はちゃうな。まあ、探す必要ないと思うけど」

 そう言って朱里はオレを放ってどこかへ行ってしまった。

 オレは困って、とりあえず駐車場の方へと出てきたのだが、そこですぐクラクションが鳴った。軽快な音だ。振り向くと女優がかけるような大きな、カマキリの目のようなサングラスをした女がこちらを向いていた。

 車の窓から顔を覗かせている。え? オレ? オレを呼んだのか?

 女がこちらに振る左手の薬指には指輪がハマっていた。

続く

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