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オレは女が嫌いだが 12

青年、京平はひょんなことからアロハシャツの探偵の朱里の助手になる。神戸で仕事と連れられた先で朱里とは別行動。なぜか神戸美人妻と合流してラブホテルへ。何かの工作のために神戸美人妻がダシにされているのではないかと勘ぐった京平は神戸美人妻に気持ちを開こうとするが……。

「お話、聞かせてもらえませんか?」

「え?」

 神戸美人妻、いや、香奈枝さんの目が潤んで見えた。

 一人の女性だと思わないようにしていた。自分から遠く離れた、別の世界の人と思おうとしていた。でも、無理だ。こんな素敵な女性に、こんな目をさせる男、オレは許せない。

 香奈枝さんがベッドの隣のスペースを空けたので、オレはかなり躊躇したがそこに滑り込んで二人で身を寄せ合った。香奈枝さんは口を開いた。

「カモが釣れた」

 その瞬間、部屋のドアが乱暴に開かれた。入ってきたのは、丸坊主の目つきの悪い男。ギン、とこちらをにらむとズカズカと近づいてくる。

「お前……!!」

 そう言って香奈枝さんの腕を取り、強引に自分の側へ引き寄せた男は、そのままの勢いで香奈枝さんを抱き寄せた。

「ようやった、香奈枝。こいつからいくらぶんどるかな」

 ニヤニヤと嫌な笑みを男は浮かべている。抱き寄せられた下着姿の香奈枝さんもだ。

「ふふ、可愛かったで、この子。私がシャワー浴びてる間に私のブラ触って……そんな私としたかったんかな?」

 クスクス、と笑ったあと、香奈枝さんは高笑いをし始めた。そんな、これは……美人局?

 だって、さっきの香奈枝さんの目、本当に哀しそうで苦しそうで。オレだけでも助けになれればと思った。思ったのに。

 怒りが沸いてきた。コイツら、オレを騙したのか……!

「さ、おおごとにしたくなければ金出せ、兄ちゃん。オレの嫁さんに手、出したんや。ただで帰れる思うなよ」

 悔しくて、情けなくて、一瞬でも本気で香奈枝さんを好きになってしまいそうになった自分のバカさに打ちひしがれていた。その時。

 場違いなホイッスルの音が響いた。ピピーッ! と。

「はい、そこまで~」

 そう言って入り口で笑っていたのは朱里だった。

 いつもの赤いアロハシャツ、布地には派手な黄色のハイビスカスが咲いている。妙な場違い感のあるその姿に、オレはほっとするのを感じた。

「今、ここで行われた一部始終はそこにあるカメラで収めさせてもらったで」

 朱里が指さしたのは、オレが朱里に持たされた大きなボストンバッグだった。な、あれはそのために……!

「実は私のクライアントは三か月前、アンタらに騙された可愛い子羊ちゃんでな。こういうのに詳しいのが東京におると知って、わざわざ来てくれたんや」

 一度言葉を切った朱里は、あくまでこの場を支配したまま、続ける。

「そこの人妻さん、言うかアンタホンマは独身なんやけど三森香奈枝32歳、加藤雄一43歳。アンタらが共謀して、男を騙して金を奪っているということをその純な青年は教えてくれた」

続く

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