【注意】Happy Hypoxia(幸せな低酸素血症)
昨日は、東京で新型コロナウイルスの感染者が多くなった結果、入院が必要な患者さんが自宅療養を余儀なくされている現状を、在宅医療を行っている医師の立場からご紹介させて頂きました。記事はこちらです。
記事の中で紹介させて頂いたように、新型コロナウイルス、特に今流行中のデルタ株は、基礎疾患のない40~50代の患者さんが容易に肺炎を起こし、著しい低酸素状態におちいるのですが、
非常に高度な低酸素状態に関わらず、患者さんの呼吸苦が少ない傾向にあり、これが新型コロナウイルスの特徴として一時期盛んにマスコミに報道されていました。今日はこのHappy Hypoxia(ハッピーハイポキシア=幸せな低酸素血症)についてお話します。
この記事は4~5分程度で読めます
気づかずに進行する病状
Happy Hypoxiaについては、コロナウイルスの流行初期から何度か話を聞いたり記事を読んだりして知っていましたが、実際に目の当たりにするとやはり恐怖を感じました。SpO2という酸素の数値(詳しくは昨日の記事をご覧ください)からは強い呼吸困難で会話も出来ないであろう患者さんが呼吸苦を否定したり、普通に話して来るのです。
ある患者さんは「熱がしんどいが呼吸は苦しくない」と言いますが呼吸は荒く、SpO2を測定すると83%という、命が危険と判断しなければならない数字でした。このような方がレントゲンやCTを撮ると肺の大部分が真っ白になっていることでしょう。
初めの頃は、電話で流暢にしゃべる相手がSpO2が92%とか、90%などと聞くと、「パルスオキシメーターがうまく使えてないんじゃないの?」と思っていたのですが、実際に診察に行くと確かにとても低い数字なのです。逆に言うと、パルスオキシメーターがなければ異常に気付きにくいと言えるでしょう。
突然の重症化
新型コロナウイルスの感染症では、7~10日インフルエンザのような症状が続き、その後治る方と、そこから低酸素化が進み呼吸機能が落ちていく患者さんがいます。そしてよく言われるように、重症化のスピードが速く、「あっという間に」状態が悪くなってしまうことが少なくありません。
色々な理由が考えられていますが、このHappy Hypoxiaも無関係ではないように思います。呼吸困難がないので「Happy」なのですが、本当は状態は悪いので全然Happyではないのです(ですので、HappyではなくSilent Hypoxiaと呼ぶべき、とも言われています)。気付いた時には重い肺炎になっているということなのです。
※ちなみにこのHappy Hypoxiaですが、同じく肺の間質という部分が侵される間質性肺炎などでも経験する症状であり、新型コロナウイルスだけに特徴的というわけではありません。
呼吸困難はずっと起こらないのか?
どんなに悪くなっても、息苦しくないのかというと、そんなことはありません。肺の状態が更に悪くなって状態が変化してくると強い呼吸苦を感じるようになることが多いです。
また、Happy Hypoxiaが絶対に起こるかというとそうでもありません。呼吸苦には色々な要素が関係すると言われており、同じ数字でも感じ方が人それぞれです。ただ、新型コロナウイルス感染症では、数字の割に呼吸苦を感じていない人が多い「傾向」にあるということです。
パルスオキシメーター
さて、ここからが今日一番大切なお話です。では、どうすれば低酸素状態に早めに気付くことが出来るのか。一つは、今日の記事の中で何度か登場した、「パルスオキシメーター」を持っておくことです。保健所で借りれることもありますが、借りられないこともあります。後述するように誤差があるので、二つあっても損はないです。パルスオキシメーターはAmazonや楽天でも買えますが、ポイントは、どうせ買うなら「家庭用」ではなく医療機器認証を取っているものを選びましょう。
Amazonを見ると結構在庫ないようで、注文しても到着まで時間がかかるようです。病気になってから注文しても届かないかもですね…。おじいちゃん、おばあちゃんの介護にも使えますから、この際持っておくのが良いように思います。
測定の注意
酸素飽和度は、とても便利ですが、ちゃんとした機器を使ってもいくらか誤差が生じます。±2~3%は仕方ないかと。安物だとこれがますます大きくなり、合っているのかと不安になると思います。
若くて心臓や肺に病気のない方では98~99%くらいが普通です。94~95%というと結構良くないです(コロナウイルスでは中等度Ⅰに相当)。90%を切ると「呼吸不全」と言います。
指が冷たい、指先の血流が悪い、マニキュアをしている等で低く出ます。脈が実際の数字とだいたい合っているかは確認しましょう。いずれにしても普段から測っていれば、「あれ?おかしいな」と気付き、保健所やかかりつけの先生に電話する切っ掛けにはなります。
まとめ
新型コロナウイルスでは低酸素状態の割に症状に乏しく重症化しつつあることに気付きにくいという問題があります。こういった知識は命を守るために大切です。また、パルスオキシメーターという機械についても説明させて頂きました。このほかには息切れの自覚はなくとも、特に動いた後に肩で息をしていたり、明らかに呼吸が増えているようなこともありますので、周囲で注意して頂ければと思います。
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