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スポーツを高付加価値にする哲学
1.はじめに
とあるプレゼン用に、スポーツを高付加価値にするための哲学をまとめたので、noteにも掲載しておきます。
これまでのnoteでも度々書いているので新しい内容ではないですが、「スポーツを高付加価値にするための哲学」という切り口で整理をしてみます。
2.スポーツビジネスの顧客と提供価値
通常のビジネスにおいて、企業は顧客に価値を提供し、顧客からは対価が支払われます。
![](https://assets.st-note.com/img/1689085986692-fC2Cuv2D1n.png?width=1200)
スポーツビジネスにおける顧客は誰になるでしょうか?
また、提供する価値は何でしょうか?
普通に考えると、
顧客:ファン、スポンサー
提供価値:面白さ、広告価値、課題解決
などが考えられるのではないでしょうか。
しかし、この設定ではそれぞれ下表のような課題があります。
![](https://assets.st-note.com/img/1689086913737-wNSpuxQWxk.png?width=1200)
このままでは、スポーツという商品の競争力が低く低付加価値しか生み出せません。
3.高付加価値ビジネスになるために
高付加価値ビジネスになるためには、「スポーツだけ」「その競技だけ」「そのクラブだけ」が提供できる価値を磨く必要があります。
では、そのような差別化された価値を作り上げることのできる、スポーツの強みはどのように発揮できるのでしょうか?
個人的にこの問いに唯一答えていると感じている論文があります。
私のnoteでは何度も紹介していますが、町田光氏の『日本のスポーツ経営の現状と取り組むべき優先的課題 ―スポーツ経営における「ブランド」の重要性―』です。
2008年と15年前の論文ですが、現在でも最も本質を取り扱っていると思っています。
この論文では以下の指摘がされています。
ビジネスやマーケティングという観点からは一つの「商品」であるスポーツを多くの人々が公共的なものである,と感じているということは,スポーツという商品の特徴であり,他の商品との競合上,優れた優位性を持っているということができるのである。
スポーツの強みを「公共性」と捉えると、その顧客は「(競技に関係のない人も含めた)社会全体」であるべきです。
それでは顧客である「社会全体」に提供する価値は何になるでしょうか?
町田氏は以下のように指摘しています。
スポーツ組織は人や社会がそこに抱えている様々な問題に対し,なんらかの前向きな解決策を提示してくれる特別な存在として,常に見られる対象でなければならない。
スポーツ経営を行うものは,その優先課題として,スポーツと社会,それぞれに対する認識と哲学を持ちその社会的価値を明らかにし,それを人々と共有し,問題の解決を図るプログラムを示さねばならない。(中略)スポーツの経営はそのコアに「公共性」「世界観」「哲学」「感動」などの要素が混在し,それが人々を魅了する根源なのである。(中略)この継続がスポーツの価値を高め,他のビジネスとの強い差別化をさらに進めてゆくのである。
スポーツ経営とは「選手」「チーム」「ファン」「メディア」「スポンサー」「広告代理店」「自治体」そして「一般市民」などの幅広いステークホルダーの間に「スポーツは社会を幸福にする」という物語を構築,共有し,それぞれが持つ機能や意志に対応する役割と権限を与え,互いの調整を行いながら,その物語の実現を通じて,すべてのステークホルダーがそれぞれの価値を獲得し,自己実現を果たしてゆく運動体である。
スポーツ経営におけるブランドマネージメントとは「スポーツは社会を幸福にする」という共同幻想の物語を社会の中に構築し定着させることなのである。(中略)スポーツの商品価値である「深い感動体験」を作り出すのはスポーツと人々の間の共同幻想の存在なのである。それをブランドとして社会の中に確立することがスポーツ経営を他に例のない高付加価値ビジネスとするのではないだろうか。
以上をまとめると、スポーツを高付加価値ビジネスにするために必要な哲学は下表のようにまとめられます。
![](https://assets.st-note.com/img/1689087974169-ElHB5umve2.png?width=1200)
4.事例
上記哲学に基づいてスポンサーシップを結んでいると私が勝手に思っている事例を2つご紹介します。
①日本ブラインドサッカー協会 × 参天製薬
日本ブラインドサッカー協会も参天製薬も、お互い、視覚障害者も健常者も共生できる社会の実現を理念に活動しています。
そこで
「”見える”と”見えない”の壁を溶かし、社会を誰もが活躍できる舞台にする。」
という共通ビジョンを掲げ、10年間のパートナーシップを結んでいます。
詳細はこちら。
この事例は正に
「スポーツは社会を幸福にする」という物語を構築・共有し、一緒に実現する
の代表例と言えるのではないでしょうか。
![](https://assets.st-note.com/img/1689088132870-mie4VHBK1n.png?width=1200)
②日本陸上競技連盟 × デンカ
日本陸上競技連盟は事業計画である「JAAF VISION 2017」とその具体化計画である「JAAF REFORM」で「ウェルネス陸上の実現」を掲げ、すべての人がすべてのライフステージにおいて陸上競技を楽しめる環境をつくることを目指しています。
デンカは化学メーカーで、インフルエンザワクチンなど、健康に関する事業行っている企業です。「デンカグループ社会貢献方針」では「健康福祉の増進とスポーツ振興」を定め、医療と生活環境に関連する事業を企業経営の柱とする企業として、人々のQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の向上のため、健康福祉の増進とスポーツの振興に貢献することを目指しています。
この両者の目指すところが一致していることで、パートナーシップが実現しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1689088842915-jZxk3SafYe.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1689089655478-YJ9FphzbXw.png?width=1200)
5.さいごに
さらにスポーツを高付加価値にするために、「複数競技がコラボレーションすることでしか実現できない幸福な未来」の物語をつくって行きたいと思っているので、アメフトやフラッグフットボールとの連携で価値を創ろうと思って頂けると嬉しいです。
アメフトやフラッグの競技的特性はこんな感じです。
![](https://assets.st-note.com/img/1689089899926-NfHTuSiTnN.png?width=1200)
(複数競技のコラボレーションで価値を作っている最たる例はオリンピック・パラリンピックですね。)
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