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【映画感想】お前たちはビーキーパーでステイサムの最前線を味わえ


 明けましておめでとうございます。俺だ、コセン・ニンジャだ。
 お前たちはアクションに飢えているか?
 鋭い動きと強烈な破壊力を両立させたマーシャルアーツ。
 性格無比で容赦ない射撃。
 主人公が暴れれば暴れるほどスカッとするプロット。
 そして、爆発。
 俺は見た。かの『コマンド―』や『暴走特急』に匹敵する、高濃度かつ最先端のアクションを。
 今日は、ステイサムの最新アクション映画『ビーキーパー』の話をしよう。
 なお、今回はネタバレが多く含まれているから、ネタバレされたから俺をビーキーパーしたいとか言い出す奴は、これを見る前にさっさと劇場に行け。絶賛公開中だ。
 だが、これを読んだとしても、ステイサムのアクションの動きが遅くなったり、容赦が出てきたりすることはないので、どういう映画か知りたければ読んでもいい。好きにしろ。

あらすじ


アメリカの片田舎で静かな隠遁生活を送る養蜂家。
ある日、彼の恩人である善良な老婦人がフィッシング詐欺にかかり、
全財産をだまし取られた末に自ら命を絶ってしまう。

詐欺組織への復讐を誓った養蜂家は、
かつて所属していた世界最強の秘密組織“ビーキーパー”の力を借り、
怒涛の勢いで事件の黒幕へと迫っていく。

その先に立ちはだかるのは、
この国では絶対に誰も手が出せない最高権力の影。
それでも養蜂家は何も恐れず前進し、
社会の秩序を破壊する害虫どもを完膚なきまでに駆除し続ける。

そしてついに、彼が辿り着いた最大の“悪の巣”とは――?

https://klockworx-v.com/bkp/  「ビーキーパー」公式サイトより

 容赦なき復讐の物語ということが伝わってくる。

ステイサムとは

 たとえば、あなたが会社に出勤したら、会社の建物からスーツ姿の長身でガタイの良い、元飛び込み選手のハゲの男が出て来るのを見つける。
 その男はステイサムだ。ステイサムはスーツの襟を直しながらこう言う。「この建物は爆発する」と。
 すると、建物は爆発する。何があっても、誰が止めても、爆発する。
 それがステイサムだ。
 ステイサムの敵は、マフィアだろうが、傭兵だろうが、巨大サメだろうが、だいたい死んでいる。死んでいないのはロック様くらいだ。
 ステイサムの拳のスピードは、ハイスピードカメラで撮影してもブレるくらい早いし、ステイサムが殺意を持って動けば間違いなく3人は地面に転がっている。
 かといって、アクション一辺倒というわけでもなく、時には『ハミングバード』の時みたいな感傷的な演技もこなせるすごい役者だ。
 頭がハゲていて、スーツを着ていて、目力があり、めちゃくちゃ強く、時にはセンチメンタルになる。
 それがステイサムだ。


登場人物


アダム・クレイ

 ステイサムだ。アダムなんてどうせ偽名なのでステイサムでいい。
 暗い過去を纏った、無口で無愛想な養蜂家だ。
 しかし、その正体はステイサムなので、正月のなまはげすら漏らすレベルで悪人を容赦なく狩っていくキリングマシーンだ。
 今回のステイサムの仕上がりっぷりは半端ではない。
 人生で唯一自分に優しくしてくれたとまで言っていた恩人を殺され、卑劣な手口で悪行を繰り返す悪人共にブチぎれており、善良な心を持ちながら真の怒りに目覚めたスーパーステイサムと言ってよいほどに戦闘力が極まっている。
 気配を遮断してからの不意打ちは当たり前のように行い、天井からロープを垂らして敵を釣り上げて攫うゼノモーフみたいな殺し方も行い、警察の特殊部隊約10人を不殺で無力化し、シークレットサービスや歴戦の傭兵をなぎ倒しながら螺旋階段を駆け上がる『ジョン・ウィック コンセクエンス』(ただしコンセクエンスを受けるのは敵)みたいなことまでやる。
 さらに、『メカニック』の時のような用意周到な計画で敵地に侵入したり、電話の逆探知で敵の居場所を突き止めたりと、頭脳と戦闘力の両方において高いスペックを発揮しており、彼を止められる者はこの映画には存在しないと言ってもよい。
 デスノートは相手の名前を書けば殺せるが、ステイサムは名前が分からなくても相手に「殺す」と宣言すれば殺せるのだ。

エロイーズ・パーカー
 
 ステイサムの隣人の、心優しい老婦人。
 ステイサムに優しく、過去も身分も一切不明な彼に土地を貸して養蜂業ができるようにしている。
 慈善団体を経営しており、作中屈指の善人である。ステイサムお墨付き。
 彼女を手にかけたので、敵はもうおしまいです。

ヴェローナ・パーカー

 エロイーズの娘で、FBI捜査官。第二の主人公であり、災厄と化したステイサムの観測者。
 法律と復讐心の間で揺れる、法の番人。
 なのだが、ステイサムが全てを殺戮していくので、そんな葛藤を抱く暇はなく、ステイサムという災害が何もかもをめちゃくちゃにしていくのを、何とか追いかけることしかできない。
 基本的に、ステイサムというイレギュラーにビビりまくる上司を見て困惑するという役割なのだが、ステイサムを止めるために身体を張って突入したりと、熱い心を持っている。
 これが普通の映画なら、もっと職務と復讐の間で葛藤とかあるのだが、スーパーステイサムに付いて行くのは誰にもできないので仕方ない。
 全てステイサムが悪いのだ。

ミッキー・ガーネット

 青いジャケットと軽快なトークでフィッシング詐欺を指揮する伊達男。
 エロイーズの全財産を騙し取った実行犯。
 お得意のフィッシング詐欺でエロイーズを自殺に追い込んだために、ステイサムに惨いことをされることに。
 さらに、こいつのせいで芋づる式に上層部もステイサムのターゲットにされるわ、こいつのスマホでステイサムが大ボスに「お前は殺す」(ステイサムは必ず殺す)宣言するわで、今回の事件の全ての発端と言っても過言ではない。
 この役者さんがめちゃくちゃ上手く、小物感あふれる演技をしてくれるおかげで、どんなみじめな死に方をしても納得できる演出がされているので、ステイサムに惨いことをされても安心して楽しめるようになっているのはすごいと思った。

デレク・ダンフォース

 フィッシング詐欺組織の大ボス。
 若い成り上がり感バリバリのオフィスで、フィッシング詐欺のお金を使って、毎日マッサージと寿司と仏壇の鳴らす奴の音を楽しむクソ野郎だが、ステイサムに「お前は殺す」と宣言されたことで人生の転機を迎えることに。
 こいつの親は、誰もが知るあの役職であり、そのせいで誰も手出しできないみたいな雰囲気があるが、スーパーステイサムには関係ないので、送った刺客が誰も生還して帰ってこないことに内心怯えながら、生意気な口を吐く事しかできない腰抜けだ。
 さらに、親のつてで手に入れたCIAの極秘ソフトを使ってフィッシング詐欺したり、政治で裏金使いまくってたとかなんとか、後半になるにつれて余罪が追加されていくが、ステイサムに狙われた時点で死罪確定なのであまり気にしなくていい。
 ステイサム恢恢疎にして漏らさず、である。

ウォレス・ウエストワイルド

 デレクが経営してる会社の警備主任で、なんと元CIA長官。すごい。
 けど今は、権力を使ってバカのデレクがやらかしたことをもみ消したりする小物である。ひどい。
 ステイサムがかつて所属していた特殊組織のことを知っているし、なんならステイサムのことも知っているので、デレクが誰を怒らせたか理解していない横でめっちゃビビりまくってる。可哀そう。
 彼にも事情があるので、ステイサムを殺すために刺客を送りまくるが、ことごとく返り討ちにされてデレクに嫌味を言われる。可哀そう。
 最終的に彼自身がステイサムを説得しようとするが、やっぱり返り討ちにあう。可哀そう。
 中間管理職の悲哀こもごもである。

ラザラス

 今回の映画のMVPにして、ステイサムに手傷を加えた唯一の人間。
 ウォレスが召喚した最強の傭兵であり、ビーキーパーハンターだ。
 昔ビーキーパーを一人殺したがその際に片足を失っており、ビーキーパーに対する油断は無かったが、ステイサムを唯一殺せるチャンスを上司からの許可待ちで逃すという致命的なミスを犯す。
 色とか見るとスズメバチがモチーフなのかもしれない。
 スーパーステイサムと正面から渡り合える唯一の人類であったが、スーパーステイサムと正面対決するのは、ハリケーンを一人で止めるようなものだと理解するべきだった。

ステイサムに立ち向かう正義の特殊部隊と正義のビーキーパーと正義の傭兵団の皆さま

 彼らに安息あらんことを。


最後に

 ここまで書けばどういう映画か分かったと思うので、個人的に思ったことを書く。
 そもそもステイサムはなぜ、徹底的に戦い抜いたのか。
 エロイーズの復讐のためだけならミッキーを殺した時点で終わっているし、その時点ならまだ身を隠して、ただの養蜂家に戻れたのではないか。
 劇中では、蜂の社会システムとかが解説されて、ミツバチは時に女王を殺すとか説明されるが、ステイサムはあくまで養蜂家だ。
 なぜステイサムは戦ったのか。
 俺が思うに、彼が善を信じていたからだと思う。
 ステイサムはかつて、ビーキーパーという組織に属していた。
 自分の身分を捨て、国のために尽くしたはずだ。
 彼が守りたかった人たちのために。エロイーズのような善性を持つ人々のために。
 それでも、善を食い物にする奴らが、その人たちを貶めた。
 さらに言うなら、その悪行には国に属する人間が深く関わっていた。
 ステイサムは裏切られた気持ちだっただろう。
 かつて善なる者たちを守るために入った組織、所属した国が、善なる者たちを害していたとは。
 だからこそ、ステイサムは信念に基づいて、群れを守るビーキーパーとして、世を調律するイコライザーとして、ステイサムは国を裏切ることになったとしても、デレクを殺す決意をしたのだ。
 俺はそう思う。
 今作のステイサムが徹頭徹尾、ドゥームスレイヤーめいたタフで孤高な雰囲気を纏っていたのも、彼の信念が身体から溢れていたからではないかと思う。
 ビーキーパー、ステイサムの硬派アクション映画として、100点満点の映画だった。

 
 それと、最終決戦時にステイサムがいつものスーツ姿になった時に、壮大なBGMが一瞬流れるのが卑怯だと思った。


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