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ダークファンタジーのネタバレなし読書感想『コララインとボタンの魔女』ニール・ゲイマン
登場人物の少ない、不思議の国のアリスのようなお話です。
アリスの夢の国の探索をよりアットホームにして、悪役との対決を中心に描いたような。
思春期の少女のもどかしい、大人たちとの関係がよく描かれています。
悪役もまた、悪い部類に入る大人です。
主人公のコララインは賢い女の子です。
空想も好きな彼女の視点で、児童文学的なストーリーが描かれていきます。
裏表紙の内側にも書かれていますが、作者のニール・ゲイマンさんは、人気コミックの原作をしたり、海外の著名な文学賞を受賞されている、超売れっ子作家のようです。
詩的な文章でつづられる作品は、どこか残酷さをはらんでいますが、賢いコララインは決して諦めずに、家族と自分のために悪役と戦っていきます。
それも知恵をしぼって、気持ちいいくらいにウィットに富んで。
映像化もされたストップモーションアニメも視聴しましたが、そちらはより華やかで、楽しい音楽が流れています(2024年12月現在、ネットフリックスなどで観れます)
クリエイターの想像力で、原作の世界観をより魅力的に表現した作品といえるでしょう。
今作がダークファンタジーであるところは、人生が危険な世界である、と暗に子供たちに示しているようでもあります。
子供たちが、大人との関係のなかで感じる、ギクシャクとした不協和音。
コララインは快活なよい子ですが、そんな魅力あふれる彼女を大人たちは放っておきません。
家族と引っ越してきた、古い家にシェアハウスしている住民たちも、可愛いコララインと懐かしい思い出を語りあいます。
孫のようなコララインと親しげに話す彼らは、サーカスで働いていたようで、彼女の夢にも登場します。
女性が男性よりも、心が強いのはひょっとすると、それだけ血を見ている回数が多いからかもしれません。
やがて訪れる体の変化を予知してか、コララインの夢にもホラー的な要素が現れます。
悪役は、アメとムチを使いこなせる、成熟した悪い大人です。
力で勝てない彼女が戦うためには、知恵を駆使するしかありません。
夢の秘密を解き明かそうと、知恵と勇気を振りしぼって奮闘する彼女を見ていると、思わず励ましたくなります。
最後まで、嫌いになることなく、逆にコララインのことを好きになること請けあいです。
子供たちは早い時期から、死というものを身近に感じながら、一人の大人として、この残酷な世界に向きあっていくのでしょうね。
ニール・ゲイマンさんの詩的な美しさを感じる文章で、日を分けながらの読み聴かせにも、適した教材となっております。
今作のような、良質な物語を通じて、子供たちの内面世界が広がっていくのが目に浮かぶようです。