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ミステリー小説のネタバレなし読書感想『変な絵』雨穴

パズルのように、各章のお話と登場人物たちが組み合わさって、最後に全体としての絵が見えてくるお話です。

テーマは「絵の謎」なんですが、それを描かれたのはなんと、作者の雨穴さんだそうで。

他人が見てわかる絵を描くのは難しいんですよ、お上手ですね。

それぞれの章で、登場人物たちが変わっていって、視点も様変わりします。

最後まで読んで、はあ〜納得!、といった感じのより集まったピースが、一枚絵になる痛快さがありました。

また、今作は「絵」というアートを扱った作品なので、前作の「変な家」に比べたら、こっちのほうがずっと楽しい作品です。

ひとつのアートに十人十色の解釈の仕方があるように、今作の「絵」にも、多面的な見方があります。

そこに作者の雨穴さんは、物語の主要な「謎」を隠しているんですね。

怖いシーンもしっかり出てきますが、そこまでグロテスクではありませんでした。

お話を描くうえでの、必要な残酷描写といったところでしょうか。

また、救いもありますが、そこには同時に逃れられない「業」のようなものも感じさせられました。

読みながら、「人間というものについて」考えさせてくれる、読み物です。

推理小説が好きなかたも、今までサスペンスをあまり読まなかった自分でも、楽しめる優しい内容のお話になっています。

オススメです。




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