「牧阿佐美先生逝く」
バレエの牧阿佐美先生逝く。
この人の業績は色々あるけど、
最大の業績は
新国立劇場でのバレエ本公演を
「主役も含め、原則日本人ダンサーで全て行う」
というスタイルで貫き通し
「ナショナルバレエ」としての
伝統への道を作ったこと。
これははっきりと、
「偉業」と称えて良いと思う。
なぜオペラにそれができなかったのか?
バレエ部門以上に
潤沢な資金を投入されていながら、
なぜオペラ部門の本公演では
あくまで外タレがメインを張り、
日本人歌手達は
常にサブの地位に留め置かれているのか。
新国立劇場が建てられて
今年はちょうど四半世紀にあたる。
「ナショナルバレエ」は
牧阿佐美先生を筆頭に
バレエ界が総力を挙げて築き上げ
今、私たちはそれを見ることができる。
「ナショナルオペラ」は
残念ながら未だ、
確立しているとは
とても呼べない状況にある。
おそらくは
新国立劇場の本公演の舞台で
実際に歌っている日本人歌手たち自身が
口には出さねども
心の底の嘘偽りのないところで
一番感じているのではなかろうか。
「ナショナルオペラの確立」
それは夢でしかないのか?
否。
断じて「否」である!
そしてそれは
「日本人歌手にそれだけの力があるのか」
という問題では、全くない。
ひとえに
「それを行う断固たる意志はあるのか」
という問題なのだ。
バレエの牧阿佐美先生が行ってきたこと、
オペラ界の先生たちが避けてきたこと、
私達はそれを直視しなければならない。
日本のオペラ歌手達よ、
日本のオペラ界で
指導的な立場に立つ者達よ、
この日本のクラシック界、オペラ界において
大であれ小であれ
出演する側であれ聴く側であれ
オピニオンリーダーとしての
自覚を持つ者達よ、
今一度、考えてみて欲しい。
そして
意志を示して欲しい。
もう、このことから
目を逸らして良い時代ではない。
最後に
謹んで牧阿佐美先生のご冥福をお祈りいたします。
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