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ここ掘れワンワン

今年も11月がやってきた。
そう。白トリュフの季節だ。

コロナのとき以外ずっと同じ村の白トリュフ祭りを訪ねているけれど、今まで参加したことがなかったトリュフ狩りツアーにいってきた。
去年、トリュフ生産者ブースでおしゃべりしたお店のおねえさんが「うちだったらそんなに値段高くないから、来年はトリュフハントも来なさいよ」と誘ってくれたから。

晴天に恵まれた、ぜっこうのトリュフハント日和。

ハンターさんのお供は3歳と1歳の犬二匹。
小径沿いには小川が流れる。
土がしっとり湿っているのが大事なんだとか。
歩き始めてすぐ。小径わきの木の根元を熟練3歳ワンコがガシガシ堀り始めた。
え、こんなところに?と思うあいだにさっそく1個目の黒トリュフ発見。
掘るところを撮るゆとりすら与えない瞬殺の職人芸。
匂いを嗅ぎつけ犬たちが走る。
ほおっておくと食べてしまうので、ザッザッザッと掘り始めたところで「待て!」がかかる。
「よくやったわね」のご褒美はビスケット。
忠実にいうことをきく犬たちのかわいさに感動。
なんというか、このバディシップにぐっときてしまう。

1時間半あまりのツアーで、黒トリュフが4個、白トリュフが1個。
この女性ハンターさんの犬たちは優秀で、黒トリュフも白トリュフも嗅ぎつけることができるのだ。
でも、どの犬もというわけではないらしい。

ちなみにすれ違った別のハンターさんは、朝から4時間林にいたけれど、見つかったのはビー玉ほどの小さな黒トリュフひとつだけだといっていた。

今年はあまり出来がよくないのだとか。
今年の村での取引価格は黒トリュフは1kgが100ユーロ、白トリュフは1kgが400ユーロだそう。
もちろん都会に行く頃にはものすごい値上がりしているわけで。
黒は冷凍や加工しても香りがある程度維持できるが、白は人工栽培できないだけでなく冷蔵庫ですら1週間くらいしか持たず腐ってしまう。ゆえに貴重さが段ちがい。

林から戻って来たところで、サラミやチーズの前菜と地元のプロセッコで乾杯。
そのあとはお待ちかねの白トリュフがかかったパスタが供される。

部屋中がほわーっと暖かい魅惑の匂いで充ちる。
ああ、なんという幸せ。

バターとトリュフとパスタだけ。
でも、トリュフはフレッシュだし、バターもおいしいから、
香りがひきたってめちゃくちゃご馳走感。

ちなみに、プロのハンターとして林に入るためには毎年ライセンス料を払わねばならない。
そしてそのお金をもとに、村で植林をし、村民たちも地質を維持できるよう環境管理につとめているのだそうだ。

トリュフってこんな風に地中深く生えているものなのか、というのがまず学びだった。

もちろん他のキノコと同じように、どの種類の木の根に黒トリュフがあるいは白トリュフが生えるものなのか、というのは分かっている。
とはいえ、実際そこにあるのかは地表にまったくヒントがない。
キノコだったら、正しい木が生える場所を見つけて、あとはひたすら足元をみればよいのだが、なにしろ土の中なのだもの。
だからって無差別に掘るわけにもいかない。

今回、一個だけ見つけられた白トリュフなど、めちゃめちゃ急な斜面なところに、ぼうぼうと下草が深く生い茂る土の奥深くに眠っていた。
犬たちの鼻がなかったら、見つけることなんて不可能だろう。
だからこそ優秀な犬たちこそが財産なのだ。

犬のトレーニング、そして、実際の狩の大変さ。
また見つかったあとに傷つけることなく掘り出す労力。
それらを知って、自然への、そして犬たちへの感謝の気持ちがさらにうまれた。

温暖化や気候の変化の影響がいちじるしいと村の人はいっていたけれど。

どうかこの先も、秋の味覚を楽しむことができますように。

嗅覚を鍛え、めざせ世界初のトリュフハンター猫!
どうですか。覚えられますか?この香り。

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ころのすけ
いただいたサポートは、ロンドンの保護猫活動に寄付させていただきます。 ときどき我が家の猫にマグロを食べさせます。