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犬のいる小説 「少年と犬」を読む
私は犬の絡む小説が好きで、目についたモノは取りあえず買う。
犬の小説はパターンとして大きく三つある。
1. 犬の視点で書かれたもの。犬を擬人化している場合もある
2. 犬を見る人側から書かれたもの。
3. 犬も人も三人称視点で書かれたもの。
私は文学的な教養がないので、間違っているかもしれないが、自分的には三つあるとしている。
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「少年と犬」馳 星周 2020年5月 直木賞受賞している
これは、犬を見る人側から書かれているパターンだ。
男と出会い、泥棒と出会い、夫婦と出会い、娼婦と出会い、老人と出会い、最後に少年と出会う。
出会うときは何時も痩せていてボロボロ状態だ。どうしてそんな事になったのか分からない。全て憶測が書かれている。
一番気になった点、読んでいて、犬に感情移入出来なかったことだ。理由として何となく、この作者は犬を飼ったことはないのではと思った。犬種の特徴がない、性格も分からない。空想の犬となっている。
後、私みたいな年配には違和感がある点がさらにもう一つ。人が直ぐに死ぬ。ミステリー小説でもないのに、名前のついた人達が10人以上死んでいる。
犬物語
折角なので、犬の絡む小説を紹介したい。まずは、戸川幸夫さん、私くらいの年齢では児童文学で、学校の図書館などで読んでいる作家だ。
有名な「高安犬物語」絶滅する日本の犬(高安犬)と人の関わりを描いた物語だ。
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「いぬ馬鹿」も滅び行く日本犬と人との関わりを描く。
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ここに色々紹介している。
海外の小説では犬の視点から描かれているものが多い。
古典として「野性の呼び声」ロンドン。
飼い犬が野生化する冒険物語 ハリソン・フォード主演で映画化された。犬はCGだった。
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あらすじ:
ゴールド・ラッシュ時代、セント・バーナードとシェパードの血をうけた飼犬バックは、ある日、邸から盗み出され、アラスカ氷原へと連れてゆかれた。そこには、橇犬(そりいぬ)としての苛酷な日々が待っていた。きびしい自然と、人間の容赦ないむちの響きに、バックの野性はめざめてゆく。数年後、広い峡谷を駆けてゆく狼の一群のなかに、毛並みのふさふさとしたたくましいバックの姿が見られた。
「野良犬トビーの愛すべき転生」 W・ブルース・キャメロン 2012年
「僕のワンダフル・ライフ」で映画化された。前世の記憶を持ったまま転生し、色々な犬として生きる。最近観たドラマ「ブラッシュアップライフ」の犬版みたいだ。こちらの方が先だけど、まだ「僕のワンダフル・ライフ」はNetflixで見られる。
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これは小説でも泣けるけど、映画が特に良かった。犬好きで観てない人は是非観て欲しい。
セント・メリーのリボン 稲見一良 1996年
犬の描写がいい、動物を知っている人が書くハードボイルド。
人も犬も誇り高く描かれている。
稲見さんの数少ない小説を全て読んでいるが、もう逝ってしまった人なので、それが悲しい。
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あらすじ
失踪した猟犬探しを生業とする探偵・竜門卓の事務所に、盲導犬の行方を突き止めてほしいという仕事が舞い込んだ。依頼者は資産家の令嬢。相棒の猟犬ジョーとともに調査を進めるうちに、薄幸な、ひとりの目の不自由な少女のもとに行きつくが……。胸を打つラストシーンが待つ。限りなく優しく誇り高い男たちの人間模様を描き出す永遠の感動作
最後は横綱、これが今の所一番面白く、感動的だった。
「その犬の歩むところ」 ボストン・テラン 2017年6月
理不尽な人間の暴力と自然災害を相手とした犬の物語。最後は希望の光が見えて読後感が最高の本だ。読み終わった後、表紙を撫でている自分がいた。
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犬の名はギヴという。
ある事件で迷い犬となるギヴ、偶然優しい少女に拾われる。
運命の定めか、ハリケーンカトリーナによって悲劇が起こる。
少女と別れた後、囚われの身となるが、その檻を食い破り、傷だらけとなり山道をさ迷う。そこで傷ついた帰還兵と出会う。
犬と出会い別れる男と女たちと、そこに静かに寄り添う気高い犬の物語。
私みたいな単純なおっさんは、本の良いところしか見ないが、それを差し引いても感動的な物語だった。
ボストン・テラン 作家としても好きだ。