ご期待に沿えず、本当に申し訳ない。
内田百閒を読んだことのない方へ、物語の一片を!
初めて読んだ内田百閒の作品は、「件(くだん)」と「花火」。いずれも、「ラストはわかったかも」、と思っていたのに、心地よい語り口に気持ちよくなった頃、意外なラストに不意を衝かれました。
まず、「件」から。主人公の「私」は、自分が、からだが牛で顔だけ人間の「件(くだん)」という化け物であることを自覚し、これから件に生まれて初めての日が来ると思いました。
そして、うっかりと忘れていた「件は生まれて三日で死ぬが、その間に人の言葉で、未来を予言する」という怖ろしい話を思い出すのです。
「私」は、自分が何かを予言できるとは思えなかったのですが、人のいない広野では、その必要もないだろうと、のんきに構えていました。しかし、突然、集まって来た人に囲まれて、大いに焦り出す、という物語。
予言への期待の高まりに、重圧感で押しつぶされそうな「私」。いったいどうなる、と読み進めたラストは、その力の抜け加減が、とても心地よく感じられました。
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もう一作の「花火」は、文庫版で約6頁という短い作品です。読み始めてすぐに、ラストを予想したたつもりだったのに・・・・・。驚かされました。
「私」が、港に向かう長い土手を歩いると、向こうから近づいて来る女がいた。その顔が見えたとき、「私」は、見たこともある気がしたが、思い出せなかった。
お話しできるのはここまで。不穏な感じの高まりで、いきなり飛び込んできた女の言葉。ギョっとさせられて、すぐに、「男も大変」、と苦笑い。そんな作品でした。
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よろしかったら、内田百閒作「件」と「花火」、お楽しみください。
物語の一片。 No.26 内田百閒作「件」「花火」大正10年(1921年)発表
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