僕と猫のリリーは、屁まで嗅ぎ合うた仲や!
生き物に癒されたい、でも、今はちょっと無理・・・。そんな方へ、小説の一片を!
ご紹介するのは、谷崎潤一郎作「猫と庄造と二人のおんな」から。
主人公の庄造は、リリーと名付けた猫を可愛がっています。猫に嫉妬した新妻の福子は、前妻の品子が「引き取りたい」と言ってきたのを幸いに、夫に猫を手放すことを迫ります。抗えず、愛猫を手放した庄造は、猫との十年間を思い出します。そして、大切な友達を、むざむざ他人に手渡した自分の弱さと不甲斐なさを悔やむのです。
次の場面は、庄造の思い出の一つ。このことがあり、庄造は、猫のことで前妻と喧嘩すると、「リリーとは屁まで嗅ぎおうた仲や」と嫌みを言うようになりました。
たしかその時は食事の後で、今ご馳走を食べたばかりの、ハチ切れそうにふくらんだリリーのお腹を、偶然庄造が両手でギュッと押さえたのである。そして運悪くも、ちょうど彼女の肛門が彼の顔の真下にあったので、腸から出る息が一直線に吹き上げたのだが、その臭かったことと云ったら、いかな猫好きもその時ばかりは、「うわッ」と云って彼女を床へ放り出した。
「猫と庄造と二人のおんな」は、一匹と三人の愛の階層の物語です。
新妻の福子は、素行不良のため、金持ちの父親が結婚を急がせました。一方、前妻の品子は、勝気で姑と合わず、追い出されています。この二人に愛される庄造は、未だに母親に甘え、泣きつく男。そして、彼の愛は、一筋にリリーに捧げられます。
お立ち寄り頂き、ありがとうございました。
物語の一片 No.2 谷崎潤一郎作「猫と庄作と二人のおんな」
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