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「偶然性」のあるモノ作りを目指して。(柿渋染め作家・冨沢恭子)

わたしは、わたしらしく。
ウェルネスプロテイン『KOREDAKEは、
人の健康と地球環境にやさしいブランドを目指しています。

このジャーナルでは、
私たちのプロテインに関わる生産者の方々をはじめ
ウェルネスやサステナビリティなどの領域で活動されている方へのインタビューを通して、
健康や環境について知るきっかけ、心と身体の「わたしらしさ」を取り戻すきっかけをお届けしていきます。

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ゲスト:冨沢恭子(柿渋染め作家/『sunui』)
武蔵野美術大学工芸工業デザイン・同大学院卒業。在学中より柿渋染めの魅力に惹かれ、かばんを中心に制作開始。卒業後も柿渋染め作家として活動する傍ら、2004年には大学時代の仲間と『sunui(素縫い)』を結成。雑貨制作、グラフィック、空間演出など幅広く手掛ける。作品は、各地にて定期的に展示、販売中。

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インタビュアー:鈴木沙季( KOREDAKE アートディレクター)
ブランドや yomDAKE のアートディレクションを務める。レシピ撮影が生きがい。

現在の活動ときっかけ

──今月のテーマは「プロテインとアート」なので、特別インタビュアーとしてKOREDAKEアートディレクターの私が、柿渋染め作家として活躍する冨沢恭子さんからお話を伺います。

冨沢:こんにちは、冨沢です。普段は、柿渋染め作家としてかばんを制作したり、アーティストユニット『sunui』のメンバーとしてもモノ作りに携わっています。今日はよろしくお願いします。

──まずはじめに、冨沢さんの活動のルーツについて教えていただけないでしょうか?

冨沢:私の活動のルーツは、親の転勤でメキシコに暮らし始めた中学生時代です。お洒落に目覚め始めていた当時、メキシコでは自分の着たい服が全然見つからなかった。そこで母親に教わりながら生地を調達し、家のミシンで洋服を作るようになりました。高校2年生で帰国すると、先生から美術系の大学を勧めてもらいました。大学受験の末に入学してからは、意外と早く「柿渋染め」に出会ってしまったので、洋服は一切作りませんでしたが(笑)

──冨沢さんと柿渋染めの出会いについて教えてください。

冨沢:元々、古いものが好きだったんです。それこそメキシコにあった古い遺跡と極彩色の民芸品という不思議な組み合わせは刺激的で、今でも目に焼き付いています。日本でも、アンティーク調の古いものが集まるところにばかり足を運んでいましたね。そんな中、大学時代に訪れた古道具屋さんで「酒袋」と呼ばれる、お酒を作るときに出るもろみを絞る柿渋染めの袋に出会い、グッときたんです。

──偶然の出会いで素敵です。そもそも「柿渋染め」とはどんな染め物なのでしょうか?

冨沢:「渋柿」の果汁を発酵させた染料を使う、本来の繊維を強くする染め物です。果汁を発酵させたものなので臭いがきつい。在学中は教室内で染めていたのですが、臭いに耐えかねた教授から「外でやって欲しい」とまで言われてしまいました。そこで自転車置き場の近くに移動してみると、今度は学生たちから「ここ通ると、いつも臭いね」と(笑)「ごめんね」と思いながら、それでも辞めずに染め続けていました。

ちなみに今は無臭の柿渋があるため、都内のアトリエでも制作を続けていられます。当初は「あの臭いこそ柿渋だ」と思っていましたが、実際に染めてみたら普通の柿渋と変わりがなくて驚きました。臭い自体も、薬剤の力を借りずに分解して消しているとのことで、自然本来の力で染める柿渋染めの良さは生きているんです。

──技術の進歩はすごいですね。実際にはどのようにして生地を染めるのでしょうか?

冨沢:染める際は、別名「太陽染め」とも呼ばれる位、とにかく日光に当てます。1回1回重ねて当てるごとに色だけではなく質感もゴワゴワになり繊維が丈夫になっていくんです。作家としては日光に当てた回数によって色味が変化するのも楽しみの1つになっています。

以前、場所によって染まり方が変化するかを試したことがあります。高知県では、川の水を使って染めた布に、河原で石を乗せて太陽に当てていたので、石のあとが残った面白い模様もできました。季節的な太陽の違いと同様に、水や湿度なども出来上がりに大きく関係するんです。

──奥が深い...!「太陽染め」って響きも魅力的です。冨沢さんにとって柿渋染めの魅力とは何でしょうか?

冨沢:私は柿渋染めによる色味の美しさ、質感ごと変えていく染料としての逞しさに魅力を感じます。だから最初は、壁にかけるタペストリーのような大きなものばかり作って、その魅力を伝えようとしていました。さすがにそれだけでは食べていけないので、布を丈夫にする柿渋染めの良さが生きる「かばん」の制作を開始。当初は、ステッチで刺繍模様をあしらったり、違う布と合わせたりして、女性が使いやすいことを意識していました。でもある時、年配の男性が一番大きいかばんを買ってくれたんです。「まさか!」と驚きましたが、彼がかばんを持ったときの雰囲気がとてもかっこよくて。そこで自分が、本来「柿渋染め」をやりたかったはずのに、装飾的なことばかりに力を入れてしまっていると気づきました。だから今では、染めた布自体のかっこよさを生かすため、装飾などを削ぎ落として、年齢性別関係なく使えるようにしています。

──冨沢さんのかばんは色々な形がありどれも特徴的です。

冨沢:染まり上がった布の質感から形を決めていきます。強めのゴワゴワした質感だとたくましい感じがするので「君は大きなかばんになりたいんだね」と思って大きくしたり。基本的にはパターンを使わずフリーハンドで形を決めているから作るかばんはほとんどが一点物。偶然性を大切にモノ作りをしているんです。

世の中にはすでに便利なバッグが沢山あるので、私のかばんは布を楽しんでもらえればいいかなと思って制作しています。ポケットはつけているものの、機能としては最小限。たしかに、サイズが大きいほど物が探しにくくなってしまいます。でも私は、機能を第一に考えているというよりも、使うことで育っていく柿渋染めの布を身近に感じてもらうことを優先して制作しているんです。

昔は「ファスナーをつけて欲しい」などの要望に応える加工もしていたのですが、決まった形にするのが楽しくなくてやめてしまいました(笑)今は販売する際に「可能な限り色々な形を作りますが、オーダーメイドはできません」とお伝えしています。私はかばん作家ではなく柿渋染め作家なんです、

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二足の草鞋(わらじ)とワクワク

──デザインも一緒で「これをやって」という指示のみで動くのは、ワクワクがなくなって楽しくありません。仕事に愛を持てないのは辛いですよね。

冨沢:うんうん。だから私は、作家としての18年間、個人の仕事と同様に『sunui』の仕事を続けてきました。個人の仕事では、ある程度自分で完成形が描けるのですが、『sunui』は全くわからない。『sunui』のモノ作りは、着地点を決めて進めるのではなく、4人の感性が出会い、それを縫いつなぐことによって生まれます。どこの国のものでもないようなものを面白がりながら出来上がった世界観こそが『sunui』なんです。

例えば、誰かが作って気に入らなかった素材を、違う誰かが拾い上げてブローチにしたり。かばんも、複数人で制作すると、個人では生み出せない面白さのあるかばんが生まれます。自分の頭の中では持っていけない完成形にまで到達できた瞬間は最高に楽しいですね。

──アトリエでの偶然の出会いがワクワクに繋がるんですね。

冨沢:個性の強い各メンバーだからこそ、同じ素材を使っても全然違うモノができる。名前の由来も最後は縫い合わせるから、素材の「素」に縫い合わせるで『素縫い(sunui)』。創作活動は、得意不得意で大まかな担当が決まっているだけで、成り行きに任せることがほとんどです。一人でアトリエを開いて、一人で活動していたらなかなかこうはならない。2つの仕事がいい影響を及ぼし合っていると思っています。

──バランスが良いんですね。モノ作りのポイントを教えて下さい。

冨沢:途中段階に潜む「未完成の面白さ」には気づけるようにありたいです。未完成が面白いのは、作為がないから。例えば民族衣装の刺繍された表面より、裏のごちゃごちゃした糸や縫い目が見えてしまっている面の方が無作為で好きなんです。作った人はおそらく見られるとは思っていないけど(笑)

一人で作業をしていると、そんな面白さになかなか気づかないで完成まで到達してしまいます。でも『sunui』のメンバーと同じアトリエにいると、誰かの「いいじゃん」という一言で、私だけではわからなかった新しい良さを発見できたりします。あえて仕事を途中で中断して帰宅したりもしますね。翌日に見ると別の角度で見えたりするので。

──「未完成の面白さ」って面白いですね。デザインでも、一日寝かせると見え方が変わることが沢山あります。

冨沢:クリエイティブな活動はどれも一緒ではないでしょうか。特に手仕事の場合は、パソコンの「コマンド+z」(「戻る」のショートカットキー)ができないので自ら止まるしかありません。グラフィックの仕事だと、初期状態のパソコンが、自分の意図していない配置をしてくれると、あえてスクリーンショットを撮影して残しておいたりします。偶然を見逃さないようにしようという点で『sunui』の仕事と直結しているのかもしれません。

──同じクリエイターとしてとても共感します。自分の範囲外の素敵な発見ができた時って楽しいですよね。冨沢さんは作品を通して何を伝えたいですか?

冨沢:まずは、柿渋染めを楽しんでもらいたい。だからこそお客様にも「体に寄り添う布の袋としてしっくりきたら使ってみてください。」とお伝えしています。もちろん「使っていて気持ちがいい」とか「身体の一部です」などのお声は私の大きな原動力です。正直なところ使い勝手は良くはないのに、クタクタになるまで使っていただいたかばんを見るととても嬉しくなります。

──育っていく過程を見れるのも楽しいですね。

冨沢:うんうん。同じ3年前に買ったかばんでも、持ち主によって状態が全然違うんです。例えば、洗濯を繰り返していると、デニムと一緒でいい意味の「淡い色」のかばんになっていたり。

──同じ時期に買ったかばんだけを集めて展示会をしても面白そうですね。ファストファッションの「買って捨てる」とは真逆な感じがします。

冨沢:たしかに。柿渋染めは染め直すことで、さらに強くもなります。買って捨てると真逆、という流れでは、すべて一点もののかばんの中から選んでもらって、日々を共に過ごしてクタクタになるまで大切に使いつづけてもらうことを意識しています。

──なるほど。

冨沢:私が今のスタイルを続けていられるのは、大学時代に出会った教授の影響かもしれません。その教授は、デザイン学科で教えながらもアーティストとしても活動されていました。その教授が応援してくれたので、私もデザイン学科に在籍していながらアート作品ばかりを作ることに没頭できていました。大学院でも修了制作は、柿渋染めで染めた和紙で巨大な舞台装置のような作品でした。卒業後こそ就職しようと思っていましたが、その教授に後押しされたので、作家として活動する道を選びました。

──素敵な教授。私も大学時代に「デザインとは、誰でも同じものが作れる設計図を作ること」と教えてくれた教授のことをよく覚えています。例えば、どこにでもある椅子だってデザインの技術が進んで設計図が広まったから普及しているんだって。

冨沢:機能が大事なものはデザインのおかげですね。だからこそ、今でもふと「デザイン科でよく柿渋染めが許されていたな」と思います。

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言われてみれば、地球に優しい

──『sunui』では、旅をして見つけた身近な素材をつなぎ合わせバッチやバッグなどのアクセサリーを制作していると伺いました。具体的にはどのような活動なのでしょうか?

冨沢:『sunnui』を結成してから18年も経ちますが、いまだにどんな団体かという質問に対する明確な答えに出会えていません。プロフィールを提出する際は毎回「モノ作り集団?デザイナーチーム?」となってしまいます。あるインタビュー記事では「あえて言葉にするなら『sunui』が仕事。『sunui』をやって生きている。」と書いていただいたことも。簡単なようでとても難しい質問なんです。

『sunui』のモノ作りの多くは、偶然から生まれます。メンバー同士で事前の相談をすることはありません。例えば、中国の金物屋さんで見つけたワッシャーをピアスにするなど、旅をした異国での素材との出会いこそが『sunui』のモノ作りのベースにあります。

──本来の目的ではない別の使い方を考え再生させることは、環境に優しい手法なのもしれません

冨沢:正直なところ、環境問題を根っこにおいて活動しているわけではないんです。『sunui』の活動は、異国で気になる質感を拾い上げること。活動を始めた当初は、今ほど環境問題が深刻化してもいませんでした。だから人からサステナブルですねと言われるまで、自分たちの活動が環境配慮に貢献しているとは気づかなかったんです。作品にリサイクルアルミを使うのも、環境にいいからというよりは、リサイクルによって偶然できた色味が可愛くて好きだからです。

──「楽しい」から作品を制作する。すると結果的に、環境に優しくなっていただけなんですね。実は『KOREDAKE』も、サステナブルや環境配慮を全面に押し出すプロテインにはしたくないんです。なんかいいなと思って使ってみたら、実は「植物性100%」で環境によかったとわかるくらいがちょうどいい。特に今は、他ブランドの同じような取り組みを沢山見聞きします。少し言い過ぎな部分もあるかもしれません。環境問題は大切なことだけど、ユーザーさんが気疲れしてしまったら『KOREDAKE』の目指すウェルネスにはつながりませんから。

冨沢:言葉って難しいですよね。私はやっぱり言葉よりはモノを作って表現したい。作品を見た人が「これはどこの国のいつの時代のモノなのだろう?」と思ってもらう方が面白いんです。作品に言葉を添えると説明的になってしまうし、情報が添えられた途端、手にしてくれた方が想像をする余白がなくなってしまう気がして。

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ウェルネスとは「余白」を作ること

─最後になりますが冨沢さんにとって、ウェルネスとはなんでしょうか?

冨沢:「できないものはできない」と言える自分でいる事かもしれません。これまでは無理して予定を詰め込むタイプでしたが、最近ではしんどくなって良いモノが作れなければ元も子もないなと思い始めたんです。ある意味コロナのおかげで、気づけた部分もあります。何事もゆとりあるペースが大切なんです。

──たしかに。

冨沢:あと私は、どんなに忙しくても、ご飯を抜くことはありません。中でも、一人で食べるのではなく誰かと食べることを意識しています。一人だとどうしても食べながら次のスケジュールを頭の中で組んでしまって、その時間が「余白」にならないんです。だから今の私にとってのウェルネスは「余白」を作ることなのかな。

──なるほど。「余白」は新しいですね。

冨沢:たしかに「徹夜すれば、残り2つのかばんが作れる」と思う時もあります。でも今のアトリエでは隣に人が住んでいるので、そもそも夜中に作業をすることができなくなりました。ミシンの音って意外と大きいんです。これはある意味よかったなと思います。

──すごくわかります。。私はコロナ禍でオンラインの仕事が増え、移動時間がなくなり、効率がよくなった気がしていました。でも実はこれまで、移動時間で無意識に沢山の人やモノを見て、インプットをしていたんです。電車から見える風景とか、歩く人の服装からわかる季節感とか。

冨沢:わかります。パソコンからのインプットだけだとやっぱり足りないですよね。「余白」を作るという意味で、私はよく展示を見に行きます。ある程度のテーマが決められている美術館よりは、良くも悪くも雑多なイメージがある博物館がおすすめ。あとは興味分野以外の本に囲まれることができる図書館にも足を運んでみると予期せぬインスピレーションに出会えるかもしれません。意識的に「余白」を作ってウェルネスな生活を送りたいですね。

──本日は貴重なお話をありがとうございました。

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『KOREDAKE』は、女性が1食に必要な31種類の栄養素をたっぷり配合した完全栄養プロテインです。

動物由来の原材料を含まない"100%プラントベース"で、大豆由来のタンパク質をはじめ、日々の食事で不足しがちな、たんぱく質・食物繊維・26種のビタミン&ミネラルなどの栄養素を配合。環境配慮のパッケージとスプーンへと改良し、サステナビリティを追求していきます。

心と身体の健康の先の自分らしさの実現をサポートする “ウェルネスプロテイン” として、安心安全な商品開発を追求し続けてまいります。
【ウェルネス】とは
身体の健康だけではなく、 「前向きに生きようとする心」や
「自分に適したライフスタイルの確立」など
健康を広義的にとらえた概念です。
『KOREDAKE』は、誰もが自分らしく、
無理をせずに、心身健康でいられることが大切であると考え
"がんばらないウェルネスを、あたりまえにする" 日々を目指しています。

『KOREDAKE』WEBはこちら▶️ https://koredake.co.jp/

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