「理性の目覚め」という話
まえがき:メランコリックな世界
欲望にまみれた資本家たちによる労働者への搾取に抗ったはずの共産主義が、ソ連の崩壊とともに非現実的なものと思われるようになっていきました。左翼たちは共産主義という資本主義に代わる制度を失い、現代でも資本主義に代わる制度を打ち出せないままでいます。こうした状況を見て、哲学者のスラヴォイ・ジジェクは「左翼の敗北」だと語っています。
ジジェクと思想家フレドリック・ジェイムソンの語った言葉を引き合いに出しながら哲学者のマーク・フィッシャーは次のように述べています。
私たちは資本主義のオルタナティブを想像することすらできないままでいます。グローバル化する資本主義に抵抗できず、貧富の差は拡大し続け、トランプ元大統領の誕生に象徴されるように、社会の分断は深まる一方です。
このメランコリックな世界に対して、左翼は過去の敗北を認め、自らの思想を再構築すべきでしょう。歴史学者のエンツォ・トラヴェルソは次のように述べています。
左翼は資本主義に抵抗しきれなかった。その敗北は認めざるを得ません。私たちは、その左翼の敗北から学び、何が駄目だったのか改めて考え、このメランコリックな世界から抜け出るための思想を再構築していかなければならない。本稿では、かつての左翼の敗北の原因を指摘しながら、このメランコリックな世界の出口を探していこうと思います。
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