給与は交渉しよう
日本には「給与交渉をせず、自分が納得できる働き方をしているエンジニアが少ない」という問題提起があります。
人事評価に絶対的に正しいものはないので、最終的に一番大事なのは、「関係者それぞれが納得感の高い判断をする」ということだと思います。
論理的で整合性のある人事評価のルールは、必ずしも納得感が高いものになるわけではないと実感する出来事が数年前から増えてきました。悪いケースだとどうなるかというと、「説明している内容は正しいと思いますので反論はありません。ですが、辞めます」となるわけです。
2020年にノーレイティングを導入
弊社では、基本給(等級)の変動をいわゆるノーレイティングに2020年から切り替えました。社内でノーレイティングという言葉は使っていないので、あまり意識している人はいないかもしれませんが。
レイティングとは、年次などで業績によって従業員をランク付けすることです。ノーレイティングとは、それをしないということで、人事評価をしないことではありません。
どうしているかというと、3ヶ月1回、等級改定の機会があります。原則として、自分で申請(基本給の変更申請)を行ってもらいます。回数の制限もなければ、必ずしなければならないものでもありません。申請された内容は審議され、その評価結果がフィードバックされます。
つまり、給与交渉する仕組みはありますが、自動的に評価はされません。
第三者評価も仕組みとして取り入れた
また、市場や上司評価とギャップを感じた際に活用する再査定の仕組みとしてTPC制度(Third Party Check & Challenge) をつくりました。
本制度では、スキルシート、変化の内容、希望年収を添えて申請を通年で行うことができます。申請書類をもって第三者委員会(社外人事・採用担当者)より市場評価情報を収集し、申請者へフィードバックが行われます。
利用者インタビューなどは、弊社のブログで紹介しています。
3年間実行した上での課題
今のところ、この仕組みにして、よかったと思っています。
他社の人事の方に説明すると、「3ヶ月単位で人事評価があると運営がものすごく大変になりますよね?」「TPC制度をかなり多い人数が使うことになったら大変なことになりますよね?」と聞かれることもありますが、そんなことはありません。
ただ、課題としては、全員が自己主張をできる性格ではないので、実際にはマネージャがかなりフォローをしているチームもありますし、人事で3ヶ月単位で申請状況をモニタリングして、少ない部署にはヒアリングをかけたりしています。
なので、放置しておいても運営できるような単純なものではありませんし、年間を通して何かをし続けることにはなります。交渉できる仕組みができることは、交渉やコミュニケーションについて苦手意識を持っている人にとってはネガティブな意味合いになることだってあります。
今後の課題としては、社員の一人ひとりが「自分の意見をしっかりと他者に伝えられる」ようになることが大事だと思っています。これは、「しっかり自己主張しましょう」と言うだけで全員の行動が変わることはなく、トレーニングを提供していく必要もあると思っています。
「自分の意見を安易に言うべきではない」というアンコンシャス・バイアスを持っている人もいます。そういう人には、アンコンシャス・バイアス研修が有効になるでしょう。また、「相手の気持ちを尊重しつつ、自分の意見を率直に主張できる」ようになるためには、アサーティブ・コミュニケーションを身に着けたほうがよいでしょう。
アンコンシャス・バイアス研修は既に実施しましたが、近いうちにアサーティブ・コミュニケーションの研修も社内で実施する予定です。仕組みだけではなく、コミュニケーションのトレーニングを提供し続けることが重要なのではないかと考えています。