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【ピーターの法則】なぜ能力主義の階層組織では各階層が無能な人間で埋め尽くされるのか
半世紀以上も読み継がれる「無能」についての論文
1969年に刊行された「ピーターの法則(The Peter Principle)」は、今でも世界中で読み継がれています。「マーフィーの法則」ではありません。
なぜあの人は、昇進した途端にダメになったのか?
会社に無能があふれる理由を長年にわたって無能の研究に打ち込んできたピーター博士が「階層社会学」で暴きます。
ピーター博士は研究を続けていくうちに、こんなことに気がつきました。
そのうち私は、こうした事例のすべてに共通点があることに気づきました。つまり、彼らはいずれも、有能さを発揮できていた地位から無能ぶりを露呈することになる地位へと昇進させられていたのです。この事態は、遅かれ早かれ、あらゆる階級社会の、あらゆる人々に起こりうることだと私は悟りました。
ピーターの法則とは
ピーターの法則をまとめると、以下の3つになります。
能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。したがって、有能な平(ひら)構成員は、無能な中間管理職になる。
時が経つにつれて、人間はみな出世していく。無能な平構成員は、そのまま平構成員の地位に落ち着く。また、有能な平構成員は無能な中間管理職の地位に落ち着く。その結果、各階層は、無能な人間で埋め尽くされる。
その組織の仕事は、まだ出世の余地のある人間によって遂行される。
この法則は階層社会においてであるので、終身雇用・年功序列・階層型組織であると当てはまりやすくなります。
しかし、人材の流動性が高いジョブ型の雇用をしている企業においては当てはまりづらくなります。人材の流動性が高い会社はネガティブな文脈で語られることもありますが、適度であれば組織の健全さを保つ働きにもなります。
つまり、無能な人に悩まされる可能性が高いのは、ジョブ型雇用でもなく長年同じ企業に勤め続けている人が多い会社です。もちろん、全社員が変革と成長を続けている組織であれば話は別です。
ピーターの法則にどう抗うのか
では、自分の場合はどうなのか。自己評価を適切にするのは難しいですが、先日に勤続20年を迎えました。おめでたいような話でもありますが、役職が上がる度に強い危機感を覚えます。
20年も同じ会社に勤めていて、ありがたいことに何度も役職が上がってきました。今は副社長をしています。毎回のことですが、ここを能力の限界にしてはいけない、と強く思っています。
ピーターの法則は多くの組織で当てはまっているからこそ、今でも読み継がれているのだと思います。ですが、例外がないわけではないはずです。
最近思うことは、上から要求されることに期待以上に応えていくことから、「自ら未来の望ましい姿を描き、そこに向けて成果を出していくこと」に切り替えることが「能力の限界を大幅に大きくする方法」なのだと思います。
優れた経営者の人は見ていて自分のスタンスを持っていますし、あくまでも答えは自分の中にあって、その自分の想像力の大きさこそが重要な要素なのだろうと思うようになってきました。
無能にならないためにはモダンエルダーを目指す
経営層の仕事をしていなくても、ピーターの法則に抗う方法はありそうです。書籍「モダンエルダー」にそのヒントがあります。
著者のチップ・コンリーは、26〜52歳まで ブティックホテル業の起業家でした。2013年頃に急成長中のテクノロジー新興企業であるAirbnb社に入って大活躍をしたという経歴を持っています。そのチップ・コンリーが提唱したのが「モダンエルダー」です。
モダンエルダーとは、「長年培った知恵だった」を提供して、二回りも年下の若者たちに囲まれて、尊敬されながら楽しく働き成果を出すような働き方をしている人たちのことです。
Airbnb社に入社した当時は苦労もあったようですが、後に豊富な経験を持っている年長者が活躍する方法を見つけていきます。モダンエルダーとして働く方法については、以下の4つが必要と書かれています。
1 変化を恐れない
2 新人の気持ちになる
3 仲間と知恵を交換する
4 アドバイスの能力を磨く
「しなやかマインドセット」を持ちながら、若者に教える人であり、若者から学ぶ人であり続けること。これができれば、長い間、無能な人になることを避けることができるかもしれません。