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旅するコックピット④

ランチを終えた私たちはフランス西部の海岸に来ていた。日本食レストランの店員さんにおすすめの場所を聞いたら海岸線の景色は日本では見れないだろうとおすすめされたのだ。

電車で海岸近くの駅まで行き、海に向かって歩いていると、だんだんと景色が開てきた。

「フランスのお家はおしゃれね」

とサエさんがいう。

「日本の瓦とか木の家と違って、なにか明るい印象がありますね」

「いっぺんはヨーロッパの海岸線に住んでみたいものだわ」

「日本が大好きなのにですか?」

「大好きだからこそよ」

私は「こそ」の意図がよくわからなかったが、サエさんには分かるのだろう。


呑気な会話をしながら歩いていると、目の前に青くキラキラした海が広がっていた。海にはヨットが何艇かプカプカと浮いており、それを追いかけるようにカモメが海の上を漂っていた。

目を陸の方に向けると、斜面に白色を基調にした家が規則正しく並べられており、青や赤などの鮮やかな屋根が太陽の光を受け止めていた。

「綺麗ね〜。素敵だわ〜。美しい。」

サエさんは高尚なものを見た時に発する定番な言葉を繰り返していた。しかし、私にはそれは安直な言葉ではなく、人間が意識せずに自然に発してしまう言葉のように思えた。そしてそれはサエさんも含めとても素敵な情景だった。


気がつくと、パリ空港がポツリと見えていた。

到着のアナウンスがされ、機体を下降させていく。管制塔が次第に大きくなり、飛行機を出迎えるスタッフの姿がはっきりとしてきた。車輪を出し、滑走路と握手をする様に着地させる。

H26番さんのフランス観光がいいものになりますようにと願い、成田パリ間のフライトは終了した。

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