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2020年6月の記事一覧
プリンセス・クルセイド 第3部「ロイヤル・プリンセス」#3 【フローラ、華のように】 3
チャーミング・フィールドに降り立ったアンバーは、素早く周囲を見渡したのち、静かに息を吐いた。舞台のような岩場が所々に隆起するこの荒野は、彼女の勝手知ったるフィールドだ。まずは地の利を得たといったところか。近くの岩場の上を見ると、片膝を付くフローラの姿が見えた。用心深く辺りを伺う様子から、彼女がこのフィールドに慣れていないことが見てとれる。これ以上は望むべくもない優位な状況だ。
(とは言うものの
プリンセス・クルセイド 第3部「ロイヤル・プリンセス」#3 【フローラ、華のように】1
「ふう~っ、よかった。なんとか勝てた」
リビングのソファにもたれかかりながら、アンバーは天を仰いだ。
「薄氷の勝利……というよりは、ほとんどズルですわね。あのような力の使い方があったとは」
水晶に映る、牙のように歯が伸びたタンザナの姿を見て、イキシアが呆れたように呟いた。
「この女、ヴァンパイアだったのか? 実在していたとはな。面白いこともあるもんだ」
ルチルは都合5杯目のコーヒー