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一日一文まとめ

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ほぼ毎日一文ずつ更新される小説『一日一文』がまとめて読めるマガジンです。
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2017年9月の記事一覧

Take Me Out to The... 第13週

 恥ずかしいところを見られてしまった。少し変則的な行動をとったのが裏目に出てしまった。焦ってバタバタしていたせいで、昼食をまともに食べられなかったのだ。これからの予定は食事だから、お腹に空きがあるのは悪くない。腹が鳴るのもただの生理現象だ。しかし、よりにもよって結城千尋に聞かれなくてもいいではないか。これでは、なんのために準備をしたのか分からない。

つづく

Take Me Out to The... 第12週

 その音を聞き付けて、何者かの声が聞こえてきた。声のしたほうを向くと、衝撃的な光景が飛び込んできた。

「ゆ、結城さん!?」

 そこには女神が立っていた。否、ギリギリで人間だった。どちらにせよ――透にとってはどちらでも同じことだったが――目の前にいるのは間違いなく結城千尋だった。そして透は自分を少し恥じた。

続く

Take Me Out to The... 第11週

 シャワーを浴びてくるためだ。服も着替えてきた。今日という日のための準備は抜かりない。

「よ~し、やるぞ~!」

 決意を口にすると同時に、透の腹が鳴った。

「ふふっ、聞こえたよ。腹のムシ」

Take Me Out to The... 第10週

 透がその違和感の正体に気付くまで、しばらく時間がかかった。

「そうか……今日はいつもと降りる時間が違うんだ」

 いつもならば、この場所に立っているのはもっと早い朝の時間帯だ。この平日の、日が沈み始めた頃にここに立っていると、何故だか後ろ暗い気持ちになる。だが、透は今日もきっちりといつもの時間に講義に出席していた。その後一時帰宅し、またこうして舞い戻ってきたのだ。わざわざそうした理由は何か。