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競争から抜け出すポジショニングのやり方〜『ブランディングの教科書』での学びを踏まえて〜
こんばんは。コウイチです。
「自社ブランドがどうしても埋もれてしまう、、」そんなお悩みはありますでしょうか。もしかしたら今回の「ポジショニング」のやり方で自社ブランド独自の役割を設定することで解決できるかもしれません。
以前、マーケティングにおけるターゲット選定に関して「インサイトを見抜いてブレークスルーしよう」を書きました。今回はSTP分析の最後のステップ「ポジショニング(P)」について「競争から抜け出すポジショニングのやり方」というテーマで書いていきたいと思います。
今回もこちらの書籍『ブランディングの教科書(羽田康祐他著)』から学ばせていただきました。
1,ポジショニングとは
本書でポジショニングとは「ほかに替えられない独自の役割を築き、比較されずに指名買いし続けてもらえる状況を創り出すこと」と表現されています。
ここで注意したいのは、ポジショニングを考える際に、競合との違いを企業目線で可視化してしまうことです。競合との差別化を意識しすぎた軸を設定してしまうと、最も重要な視点である生活者の視点が抜けてしまうことに繋がります。
生活者の視点が抜けていると、差別化競争によってもたらされた機能や性能は生活者にとって「どうでも良いこと」となり、結局は差別化に結びつかず価格競争に陥ってしまいかねないのです。
つまりポジショニングは競争に勝つためにするのではなく「競争しないためにすること」なのです。ポジショニングと「差別化」は本質的に考え方が異なります。差別化は競争が前提の考え方だからです。
2,ポジショニングの軸を決めよう
優れたポジショニングを築き上げていくためには、以下の2つのプロセスが必要となります。
・ポジショニングの軸の設定
ここで「軸」とは「切り口」と捉えてください。実務でよく取り上げられるポジショニングマップは多くの場合、例えば「高価格・低価格軸」×「フォーマル・カジュアル軸」のように2軸で表現されます。しかし本当は軸がない、あるいは少ないほうが望ましいのです。
例えばA市場において「A」といえば「B」とあなたの製品やサービス「B」が生活者から想起されることが理想です。しかし多くの場合、それは現実的ではありません。そこで必要最低限の軸を加えることで独自の役割を明確にすることができます。
ではどのように軸を設定すればよいのでしょうか。本書では11のタイプの「軸の取り方」が書かれています。今回はその中の「使用される時間」に着目した軸の取り方を取り上げたいと思います。
本書ではアサヒ飲料の缶コーヒーブランドである「ワンダモーニングショット」の事例が紹介されています。明確に「朝専用」という役割でポジショニングすることで「気付けの一杯」というニーズに応え、「ワンダ」を業界上位に押し上げています。
「モーニングショット」は2002年に発売しました。当時、ビジネスパーソンのコーヒーを飲む習慣を調査した結果、朝の通勤途中や朝のデスクなど、朝によく飲むという飲用実態が明らかになりました。
そこで「朝」というコンセプトを徹底的に追求した商品を作ることにしました。さらに、朝にコーヒーを飲むのは「1本飲んで、さあやるぞ!」という前向きな気分になりたいからではないかと仮説をたて、そこから「気付けの一杯」というキーワードを導き出し、「朝」×「気付けの一杯」で、「モーニングショット」と名付けました。
・ポジショニングの軸の決め方
ポジショニングの軸を決めるための選択基準について本書では以下の4つが挙げられています。
細分化された市場でNo.1になれるか
新しいカテゴリーが創造できるか
競合をジレンマに追いやれるか
生活者との関係が明確か
ここでは一つ目の「細分化された市場でNo.1になれるか」について書いていきたいと思います。市場細分化といえば、STP分析の「セグメンテーション」ですね。「セグメンテーション」についてはこちらの記事で書きました。
ポジショニングとは「生活者から見て、ほかに替えられない独自の役割を築くこと」とありましたが、その認識を作り出す上で大事なのが、市場細分化です。そして「細分化された市場でNo.1になれるか」が一つの判断基準になります。なぜNo.1なのでしょうか。本書では非常に興味深い話が書かれています。
米国の例になりますが、ある調査では1923年当時にリーダーだった25ブランドのうち、20ブランドが今日でもリーダーであり続けているといいます。数十年間のうちにリーダーの位置を失ったのはわずかに5ブランドにすぎません。
それぐらい細分化された市場でNo.1になれるかどうかで、そのブランドが長く生き残れるかどうかが変わってくるということですね。
3,ポジショニングステートメントを作ろう
ポジショニングマップは「競合との違いを表現したもの」という性質上、競合との相対比較という視点しか提供してくれません。
そのため、実務ではポジショニングマップと並行してポジショニングステートメントというツールを活用することがあります。
ポジショニングステートメントとは、ターゲットに対する自社のブランドの役割を文章で記述したものを指します。ポジショニングマップでは競合との比較を通して自社ブランドの「独自性」を明確にするために作られるのに対して、ポジショニングステートメントでは「自社ブランドの役割」を明確にするために作られます。ここではディズニーを例にした、ブランドポジショニングステートメントを引用しますので参考にしてください。
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https://www.mwshop.com/blog/the-skinny-on-creating-a-brand-positioning-statement/#:~:text=Consider%20Walt%20Disney%20World's%20Brand,and%20worlds%20you%20most%20desire.
今回まででSTP分析+ペルソナデザインとインサイト(下記のステップ②にあたります)について書いてきました。今後はステップ③(価値の伝達・提供)についてマーケティング・ミックス(4P)を中心に書いていきたいと思います。
⚫︎マーケティングの3ステップ
①環境分析
・外部環境分析/内部環境分析 など
かの有名なSWOT分析もこれに含まれます。
②価値の発見・創造
・STP( Segmentation/Targeting/Positioning)
・ペルソナ設定・インサイト など
すでにお話しました通り、ここでターゲットとバリューを創り出す
ところがマーケティングの醍醐味ですね。
③価値の伝達・提供
・マーケティング・ミックス(4P※)の整備 など
※4PとはProduct/Price/Place/Promotionのこと。
まとめ
今回はSTP分析の最後のステップ「ポジショニング(P)」について「競争から抜け出すポジショニングのやり方」というテーマで書いてきました。
<ポイント>
・ポジショニングとは、本書では「ほかに替えられない独自の役割を築き、
比較されずに指名買いし続けてもらえる状況を創り出すこと」
・ポジショニングでは軸の取り方をさまざま検討し、「細分化された市場で
No.1になれるか」等、いくつかの基準で軸を決定する
・自社ブランドの役割を明確にするため、ポジショニングマップと並行して
ポジショニングステートメントを作成する
お読みいただき、ありがとうございました。