彷徨うおっさん8 隠す?隠さない? 努力の本質
一生懸命に生きているだけなのに、もがけばもがくほど、望まぬ経験をしてしまう。こんな風に生きたい、こうすれば解決するかもと、色々試しているうちに歳ばかり取る。大概の人はそうして一生を終えるのかもしれない。けれども、その歩みの全てを否定はしない。経験はすべて肥やしだ。自分にとってだけでなく、多くの人にもそうなり得るだろう。そのためにおっさんは今日も筆を執ることにする。
能ある鷹は爪を隠すとよく言われる。無用な顰蹙(ひんしゅく)や嫉妬を買わないため、或いは戦術的意味で。努力を隠す隠さないの話になると、大概この諺(ことわざ)が持ち出されるが、使い方を間違っているとおっさんは思う。努力と能力は関係あるが別物で、隠す隠さないは良し悪しではない。
今回は「努力の本質」について、おっさんの経験を交えて考察していきたい。
<努力の効用>
努力よりも結果がすべてという考えの人も中にはいる。だがおっさんは以下の理由であらゆる努力を肯定したい。
① 世の中一足飛びに叶う事ばかりではない。
② 努力しなければ自分の限界を認識できない。
③ 存分に努力すれば、結果はどうあれ後悔がなくなる。
④ 努力する姿は周囲に良い影響を与える。
以上のような因果関係や効用を無視できないだろう。
①は、スポーツや音楽、難関資格の合格などが例として分かりやすい。
全く何も積み重ねず成功する人は、テレビや物語の中でしか見たことがない。おっさんも3年、5年と費やす泥臭い努力の果てに、難関資格取得や15倍の入試合格があった。努力の賜物だ。
②は努力して挫折した人がたどり着く境地である。
自分の限界を思い知ることも大事である。分を弁えるとも言うが、それができるようになると、判断力が上がる。
また、挫折した悔しさを吹っ切れば、誰かを素直に応援できる。達成した人の尊さや優秀さも理解できる。
恋も仕事もお勉強も、おっさんはみんな挫折だらけだが、結果はどうあれ自己認識と人格的成長は沢山あったと断言する。
③は「想いの成仏」とおっさんは呼ぶ。
叶わなくても努力して挑んだ事実は満足につながる。結果が伴わなくても見えてくるものがある。満足できず後悔を引きずるより、想いを成仏させる気持ちで少しでもかじってみたら、人生後悔は少ない。
④は刺激を受けたり、危機感を感じる点である。
努力している人にコンプレックスを感じてしまう人も中にはいるが、それも含めて、自分の努力は周囲の人間を成長させる。また、努力している人の方向がより具体的であれば、努力を通じて、ぜひ関わりたい、協力したいと考える人も集まる。
例えばおっさんも、元々あまり市政に興味がなかったが、仕事を辞めて立候補した先輩を見て、政治への興味が大きく増したといった経験がある。
<努力は隠すべきか?>
結論から言うと、おっさんは隠すべきでないと考える。以下におっさんとは逆に「努力は隠すべき」との意見を持つ先輩との会話を紹介する。
おっさん「昇進試験の筆記、じっくり2か月かかりそうですね、覚えること多いですよ。」
上司「いやいや、あんなの2,3日図書館にこもって勉強すればすぐ受かっちゃうでしょう。」
おっさん「いやいや、あたしゃ先輩程頭良くないですから。こちらの同僚さんと2か月、じっくりやるつもりです。」
上司「もう一人、〇〇さんも同じ時期に試験だったよね。彼は一緒じゃないよね。やっぱり努力を見せたがらないところがあるのかな。。。」
おっさん「そうでもないですよ。彼も結構頑張っているみたいですよ。一夜漬けじゃ絶対無理とか言って焦ってましたし、一緒に勉強はしてないですが、帰って家事の合間に、割とやっているみたいですよ。」
上司「あんまりそういうこと言わない方がいいよ。努力を隠したい人もいるし。。。」
おっさん&同僚「(いや、それはあんたでしょう。。。)」
この上司が本当に2、3日の勉強で合格したかというと、絶対嘘だと思う。一緒に勉強した同僚も、上記の〇〇さんもそこは同じ意見だった。
つまりこの体験談で言いたいのは以下のとおりである。
努力を隠すことによって
① 虚勢を張ることになり、他人との間に溝ができる
② 嘘で人を惑わす可能性があり、好ましくない
③ みっともない
④ 他者理解が浅く人として成長できていない
隠すメリットも無論あるが、こういう人を見る度、隠しても分かる人には分かる、隠す方が有害、そしてみっともない、と、改めて思うのである。だからおっさんは決して努力を隠さないのである。
<隠す、隠さない、それぞれのメリット>
とはいえこの例は極端でもある、隠すも隠さないもどちらも一理あるので、自分の今の心持ちに合わせて選ぶとよい。
①隠すことのメリット
周囲の余計な揶揄や嫉妬が入り込んでこない。揶揄や嫉妬を受けるとブレてしまう人は、黙って誰にも言わずに努力を積み重ねたらいい。
また、周囲がことごとくレベルが低い場合は、浮くのを避けるためにむしろ隠すほうが戦術的にも有利である。
失敗した恥ずかしさの緩和もできる。慣れてしまえばここはなんていことはないのだが、努力経験が浅い人は、慣れるまでは一部または全部隠しながらのスタートもやむなしかもしれない。
②隠さないことのメリット
自分以外の誰かの心を動かせる。努力の価値の④でも述べたが、周囲と刺激しあったり、仲間を得ることもできる。また、あえて嫉妬や揶揄をしてくる人間を浮かび上がらせる効果もある。人を選ぶことに躊躇がない性格なら、体験談の上司のような人を、早い段階で判別して距離を取れるメリットは意外に大きい。
他にも自分を追い込むことで結果が出せる人もいる。また、努力の跡を公開することで、後に続く人の道標にもなれる。失敗を隠さずに堂々としていれば、誠実さと利他性で人格を強化でき、より上の努力も恐れずに可能になっていく。
いきなり②ではなくとも、①から徐々に成長していく考えでもいい。
隠す隠さないは人によるが、人格を高めるためにも、少なくとも努力自体には肯定的であって欲しいとおっさんは思う。